・・・・・聖三角──トライフォースが泣いている──。 新たな所持者の、手の甲で、悲しげに光っている──。 私が・・・私達が、正しい道を歩めなかったから? 仲間を傷つけたから、親友を傷つけたから? しかし、勇気のトライフォースは、もう私のものではないはず──。 なのに、新たな所持者の元で嘆いている──。 それは何故、どうして? そして、何故私は、聖三角の所持者ではなくなったのに、その事が分かる? ──それは。 私と、彼等は、仲間だから、通じ合っているから・・・? でも、今は違う。なのに、どうして。 ──そうか。 『奴』に魂を、心を奪われても、どこかで私は、彼らの事を──今でも、仲間だと考えている。 そう、信じよう。 第七話 狂乱する電気ねずみ ピカチュウ「はははァッ・・・・僕の・・・勝ちだ!任務完了、僕の勝ちだぁあッ!! あーっはっはっはっはっ!!ふふふ、はははははは!!」 「・・・ちがうっ・・・・!」 ピカチュウ「・・・・っ!?」 突如響いた、笑い続けるピカチュウの言葉を否定する声。 その声に驚いたピカチュウは笑うのを止め、辺りを見渡した。 ピカチュウ「誰だ・・・まだ・・・生きてる奴が居るって言うのか?」 「僕達スマッシュブラザーズが・・・そんな、簡単に死ぬ事はない。 兄ちゃんだって・・・それは良く分かってるはず、だよね?」 ピカチュウ「・・・くそ、しつこいな・・・・!第一、お前はもう僕とは戦えない状態にしてやったはずだろぉ・・・!?」 苛立つピカチュウの目の前に現れたのはピカチュウの弟であるピチュー。 どうやら付近に転がっている大き目の瓦礫の後に身を潜めていたようだった。 ピチュー「さっき、もう皆とこんな辛い争いをしたくないって言っていたポポ達が戦いに参加してくれた。 ファルコだって、フォックスと戦って、とても辛かったはずだし・・・他の皆もそうだ、フォックスやロイと戦って凄く辛かったと思う。 僕だって兄ちゃんと戦うのは絶対に辛い事だ。でも・・・・仲間を失う事は、何よりも辛い事。 だから、兄ちゃん達が戦うのをやめないって言うのなら、僕達は戦わなきゃいけない。 ・・・もしかしたら、僕はそうポポ達に言いたかったのかもしれない・・・ でも、そう言わなくても、二人とも戦ってくれた・・・きっと、二人とも最初から分かってたんだ。それで・・・決意してくれたんだ」 ピカチュウ「へえ、場違いな説明ご苦労さん。で?それがなんだって?何か関係でもあるって言うのかい!?」 ピチュー「僕は二人が決意したのと同じように、もうおびえないで・・・兄ちゃんと戦う。・・・そう、決めたんだ・・・!」 ピカチュウ「だからどうしたぁッ!!」 ピカチュウが苛立ちを見せながらピチュー目掛け放電する。 だが、ピチューは放たれた電撃を、こうそくいどうで避けながらピカチュウに接近してゆく。 距離を詰められたピカチュウは舌打ちしつつ、近づいてきたピチューの腹部を狙ってロケットずつきを仕掛けた! ピチュー「(・・・かかった!)」 ピカチュウ「──なッ!?」 ピカチュウの頭突きはピチューを吹っ飛ばす事なく、ピチューの四肢と身体全体で受け止められた。 そして、ピカチュウを受け止めたままの状態でピチューが後方へ勢い良く転がりだす。 ピカチュウがピチューが何をしようとしているのか気づいた時には、既に彼は全身に痛みを巡らせながら宙を舞っていた。 これで終わりではない。ピカチュウの落下地点へとピチューが潜り込み、部屋に天井があった部分に雷雲を作り出す。 ───次の瞬間、雷雲からピチューに引き寄せられるように落ちた稲妻が、ピチューの頭上に位置していたピカチュウに命中した! ピカチュウ「・・・・・やるね、流石は・・・僕の、弟だ。 だけど・・・まだまだ、弱いね」 ピチュー「くっ・・・!?」 ・・・ピカチュウに命中したはずの稲妻は、何故かピチューに直撃していた。 まだ自身の力を完全にコントロールし切れていないピチューにとっては自分で呼び寄せた電撃でさえ感電してしまう。 それより、何故──避けられた?そんな疑問がピチューの脳裏を過ぎったのを知ったかのように、 やや離れた位置にたたずむピカチュウが口を開いた。 ピカチュウ「雷が僕に当たる寸前に、でんこうせっかで落ちてきた雷から逃れたんだ。 これぐらいの事態、予想できないでこんな作戦たてるものじゃあないよ?ふふふっ・・・!」 笑みをこぼしながらピカチュウがピチューに飛び掛る。 彼はでんげきドリルでピチューの顔面を狙ってきたが、緊急回避でそれを避けたものの、ピチューの背後に 着地したピカチュウは即座に振り向き、下からえぐる様に、ギザギザに曲がった尾でピチューの背中を斬りつけてきた。 しっぽサマーソルトと言う、ピカチュウの持つスマッシュ技の一つだ。 ピチュー「う・・・ぐっ・・・!」 ピカチュウ「これで最後にしてあげるよ・・・!」 うつ伏せに倒れたピチューにピカチュウが近寄ってゆく。 やがてピチューのすぐ脇まで接近した次の瞬間、ピカチュウの両頬から電撃がほとばしった。 狭い範囲に絞って圧縮された電撃を解き放つというピカチュウの横スマッシュ技、ショートでんげき。 それをモロに喰らってしまったピチューは、悲鳴を上げながら身体を激しく痙攣させ、 力尽きたのか後は全く動きを見せず、床に横たわる。 ピカチュウ「・・・・・・・・」 改めてピカチュウが辺りを見渡す。 敵を全員排除した事を確認すると、ピカチュウが口元に笑みを浮かべ──、 アイスクライマー「「ブリザードッ!!」」 ピカチュウ「ッ──!?」 笑みをこぼそうとした表情を、驚きの表情へと変えた瞬間、ピカチュウの身体を強烈な冷気が蝕んだ。 冷気を込めた強風に吹き飛ばされたピカチュウは、勢い良く大きくひび割れた壁へと激突する。 身体全体を覆おうとする冷気を放電して身体に熱を加える事で跳ね除けながら、 ピカチュウが憎しみに満ちた眼差しでアイスクライマーの二人を睨みつける。 ナナ「私達、皆に頼ってばかりで、自分を甘やかしてばかりで・・・こんな辛い決断、出来なかったけれど・・・」 ポポ「ピチューのおかげだよ、さっき僕達が戦おうとしたのは・・・そして、今、戦えているのは」 ピカチュウ「だから・・・何だっていうのさっ!!?」 怒り狂ったピカチュウがアイスクライマー目掛け電撃を放つ。 だが、二人の取って、一直線に放たれた、単純な軌道に乗って飛び掛ってきた攻撃を避けるのは容易い事だった。 歯軋りするピカチュウがでんこうせっかで二人へ突進を仕掛けるが、アイスショットでその進行を簡単に遮る事が出来た。 頭から氷の塊に突っ込んでしまったピカチュウの頭部から血が流れるが、 彼は尚も攻撃を止めようとしない。再び二人へ放電しようとしたピカチュウだったが、その試みは失敗した。 ピカチュウ「うがっ・・・・・くぅあッ・・・!!?」 呻きながら倒れたピカチュウの背後には、大柄なゴリラの姿が。 ドンキーは、にやり、と不敵な笑みを浮かべながら倒れたピカチュウに言い放った。 ドンキー「俺達のタフさをなめるな?・・・メンバーの一員であるお前が知らないはずが無いとは思ったが」 ピカチュウ「っ・・・・ぐ・・・・」 クッパ「そうだ、その通りなのだ・・・!」 ファルコ「あんなフラッシュでやられやしねえよ」 ルイージ「ピカチュウ・・・目を、覚ましてよ・・・」 次々に『生き延びた者達』が立ち上がる。 各自の言葉を聞きながら、憎らしげにピカチュウは舌打ちした。 ピチュー「兄ちゃん・・・もう・・・やめなよ・・・」 ピカチュウ「・・・・・!」 最後に起き上がった自分の弟の姿を見やり、ピカチュウは目を見開いてぎり、と歯軋りする。 ──どいつも、こいつも・・・! 怒りと憎しみが頂点に達したピカチュウは、両頬から激しく電撃をほとばしらせながら勢い良く飛び起きた。 不意を突かれたドンキーが電撃に弾き飛ばされる。電撃を放ったピカチュウは、 吹き飛んだドンキーとは真逆の方向へ・・・ピチューの居る所へと疾走して行く。 ピカチュウ「殺してやる、殺してやる殺してやる殺してやるッ!! お前からぁあッ・・・・・殺してやるぅううッ!!!」 走りながらピカチュウが辺り一面へと放電する。それはほとんど理性の感じられないがむしゃらな攻撃だった。 見当違いに撃ち出された電撃の全ては標的を捉える事なく壁や床を次々に破壊する。 そして、そのままピカチュウは放電しながらピチューへと頭から突っ込んでいった。しかし、その試みも失敗に終わった。 暴れまわる電流の間をこうそくいどうで抜けながらピカチュウの攻撃を回避し、彼の背後へと回ったのだ。 ピカチュウ「こしゃく・・・なぁ・・・!」 ピチュー「兄ちゃん、お願い・・・思い出してよ・・・僕達の、絆を!日常をッ!」 ピカチュウ「はぁ、はぁ・・・・・・絆・・・日常・・・・?」 ピチュー「そう、僕達はスマッシュブラザーズだ・・・皆が皆、決して切れる事のない絆を持っている・・・ あの、スマッシュブラザーズなんだよ!」 ピカチュウ「し、・・・らない。知らない・・・知らないッ!そんなもの、僕は知らないッ!」 ピチューの説得も空しくピカチュウが電撃を撒き散らす。 電撃はピチューに命中し、彼を吹っ飛ばしたが、あまり威力が感じられない。 実質、ピチューにとってほとんど痛みは無かった。 ピカチュウ「くそ、知らないぞ・・・・こんな・・・こんなっ、知らない・・・! 違う・・・・違う、違う。違うッ!僕は、知らないッ!!違うんだ・・・・よぉっ!!」 自分の攻撃が相手に当たったのも目に入らないのか、ピカチュウが狂い叫ぶ。 瞬間、ピカチュウが放てる限りの威力の電撃をピチューに放った。 それがピチューを蝕もうと襲い掛かったと同時に、ピチューは再びこうそくいどうでその場を離れ、電撃を回避した。 ピカチュウ「ぐっ・・・くそ・・・ぉ、・・・ぜェっ、ゼぇ、ゼェ・・・はぁっ、はぁっ、はッ・・・! ・・・違う・・・・違う、んだ・・・くそおッ・・・!」 ルイージ「・・・・?」 ピカチュウの両頬から耐えなく放出されていた電流が不意に途切れる。 その直後、荒い息遣いと共にピカチュウがその場に崩れ落ちた。 静かにピチューが横たわる兄の元へ近づくと、ピカチュウは真上を見つめたまま、何かを繰り返し呟き始める。 ピカチュウ「・・・・っ、だ・・・・嫌だ・・・・ぐっ・・・!もう・・・・・嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ・・・・ッ」 ピチュー「・・・・兄ちゃん?」 ピカチュウ「・・・・嫌だ・・・・痛い・・・・苦しいっ・・・・嫌だ・・・う゛ぐぁあ・・・・・!! 戦いたくない・・・・嫌だ・・・・・・・違う・・・・戦わなくちゃ・・・・でも・・・嫌だッ・・・ちくしょおっ・・・!」 クッパ「──・・・?」 ファルコ「一体、どういうこった・・・?」 ピカチュウの様子がおかしい。 元々おかしくはなってしまっていたが、もしかしたら──。 ピカチュウを見つめながら他の者達が彼の周りへと集まってくる。 ピカチュウ「・・・痛い・・・・苦しい、・・・もう戦いたくない・・・殺したく・・・ない・・・ 助けてッ・・・・・苦しい・・・・よ、・・・いやだ・・・・・うぐっ・・・僕は、僕は僕は僕はぁぁ・・・!!?」 ピチュー「兄ちゃん・・・兄ちゃん?ねえ・・・?」 ピカチュウ「ボクは嫌だ・・・・もぅ・・・・・戦いたくない・・・もう・・・・もう・・・」 「──あなたには失望しました、ピカチュウさん」 壊れたおもちゃのように同じような言葉を繰り返すピカチュウは、その青年の声が聞こえた瞬間、途端に静まり返る。 ・・・気づけば、兄の横たわっていた場所は何故か赤く染まっていた。 赤く染まった床の上に転がる黄色い物体は、丁度兄の身体と同じ色をしていた。 そして、何が起こったのか分からないピチューの足元に、何かが転がっている・・・・・。 首から下が消失したピカチュウは、虚ろな眼差しのまま弟の事を見つめていた。 ピチュー「うッ・・・・うわああああああああぁあぁぁぁあぁぁぁああああ!!!!!?」 続く 音楽提供:♪般若's MIDIの里♪ 戻る