奴の目的は何なんだ?


  俺達を殺してどうするつもりだったんだ?


  俺達を殺して、俺達を操る。


  そして、俺達に生き延びた奴等を殺しに行かせる・・・


  何のために奴は俺達を操り、生き延びた奴等を殺そうとするんだ?  


  分からない。


  分からない・・・・。











  第六話 堕落











ポポ「・・・・・・・・・・」
ナナ「・・・・・・・・・・」


愕然とする二人、他の五人も立ち尽くすのみ、
彼等は競技場にたどり着いていた。
しかし、競技場は変わり果てていた。壁のあちこちに穴が、ひびが。
天井は砕け散り、筒抜けになっている・・・・ここが、本当に競技場だったのか疑いたくもなる。


ドンキー「オイオイ、こりゃ酷い有様だぜ?」
ルイージ「兄さん・・・どうなったんだろう」


絶望的な表情でドンキーが呟いた。
その後で心配そうな表情で辺りをルイージが見渡した・・・瞬間。


ルイージ「うっ、うわあああああぁ!!?」
ピチュー「な、どうしたの!?」


突然、床に尻餅をついておびえ出したルイージの元に他のメンバーが駆け寄る。
しかし、一部の者は彼が恐怖しているモノの正体に薄々感づいていた。


ファルコ「あの、死体の山だな?・・・・ルイージ」
ルイージ「う、うん・・・・そそそ、そう、そうだ・・・よぉ・・・」
ポポ「あ、あれって・・・・!?」
クッパ「ぬっ・・・これは・・・酷いな・・・」


ファルコの指差した先に存在していたのは瓦礫の山。その、瓦礫の下に転がるモノが、ルイージの恐怖の原因だった。
そこからは真っ赤に染まった腕が一本、助けを求めるように伸びているが全く動く気配はない。
そして床に染み付く赤黒い液体・・・・。染み付いた血を辿れば、床に転がるいくつもの死体に行き着いた。
どの顔も見たことの無い顔で、どうやら彼等はスマッシュブラザーズの大乱闘を観戦していた観客達の様だった。
あの手袋は、スマッシュブラザーズだけでなく一般人までも巻き込んでいた。手袋への怒りと憎しみ・・・そして怒りが、更に増す。


クッパ「・・・よし、まずは我輩達が戦った場所へ行くとしよう」
ピチュー「確かに・・・そこなら、何か手掛かりがあるかも・・・」


まさにダメもとで、という表情でクッパが呟いた言葉に不安を隠しきれない表情で返すピチュー。
そんな彼等に、にやりと笑みを浮かべながら、影で立ち尽くす者が居た。


「来ましたね」


突如として、響く言葉。
それに反応した七人が咄嗟に身構える。


ファルコ「誰だ!?何処に居る!!」
「ふふふっ・・・仲間の声も忘れてしまったのですか?」


その声は、確実に近くなっている。・・・・声の主が、近づいてきているのだ。


ポポ「仲間・・・ってことは・・・」
ナナ「さっきと同じ・・・?」
「そんな所ですね・・・はは。」


積み重ねられた瓦礫が、いくつか崩れ落ちる。
見れば瓦礫の山の頂上に、緑の衣服を纏った剣士が立っていた。


ルイージ「あっ・・・・?!」
ドンキー「・・・・・・・リンクッ!?」
リンク「ご名答」


ふっと笑みをこぼしたリンクが、左手に握る剣・・・マスターソードを振るう。
剣の切っ先がこちらに向けられ、七人全員が一瞬たじろいだ。


リンク「ロイさんにフォックスさん。
    ・・・お二人方の仇、討たせて頂きます」
ファルコ「・・・・・・・・ッ!!」


次の瞬間、リンクが高く跳躍し、舞い上がる。
そして、左手の剣を標的としたファルコに突き刺そうとするべく思い切り突き出した!


ファルコ「ッチ!!」
リンク「くっ」


舌打ちしながらファルコが床を蹴って後退。
突き出された剣は獲物を貫くことなく、床に深く突き刺さった。


ルイージ「そんなっ、リンクまで・・・・!!」
リンク「申し訳ありませんが、すぐに終わりにさせて頂きますよ・・・」


剣を床に突き刺したままリンクが懐から黒い球体を取り出した。球体から伸びる紐・・・否、導火線。その球体は爆弾だった。
投げつけられた爆弾をドンキーが掴み取る。爆発する寸前にリンクへ投げ返すが、
爆弾がリンクに接触する前に爆発し、ダメージを与えることは出来なかった。


リンク「それで終わりですか?では、もう一度行かせて貰いますよ・・・」
ポポ「ぁ・・・・!」
ナナ「何で・・・どうしてよ、ロイもフォックスも・・・リンクまでもっ!」
リンク「問答無用ですよ・・・・・はあぁああぁ!!!」


叫び声と共にリンクが駆け出し、アイスクライマーの二人を纏めて切り捨てようと剣を振るう!
諦めたようにポポは目を瞑り、ナナはその場にへたり込むが、二人に痛みが走る事は無かった。
二人の目の前には、クッパがリンクの一太刀を両腕で挟んで防いでいる姿が。


クッパ「何をしているのだッ!避けるか反撃するかせんかぁ!」
ポポ「・・・・・・」
ナナ「だって・・・・」
クッパ「割り切れッ!!奴は我輩達の知るリンクじゃないッ!!」
ポポ「でも、嫌だ!もうロイやフォックスの時みたいに、こんな辛い戦いしたくないよッ!!
   いつも皆と大乱闘で戦ってたとしても、こんな殺し合いなんかしたくないんだッ!!」


半壊した闘技場に二人の叫び声が響き渡る。
直後、クッパがリンクに蹴り飛ばされ、剣から手を離して床に転がった。
そして、戦意喪失している二人を見下したリンクが笑みを浮かべて、剣を大きく振りかぶる──


ピチュー「っだぁああぁあ!!!」
リンク「うわああぁっ!!?」


リンクがその剣を二人に振り下ろす事は無かった。
脇から突っ込んできたピチューに頭突きを喰らわされ、リンクが悲鳴と共に倒れこんだのだ。


ピチュー「気持ち・・・分かるけどさ、僕だってこんなの嫌だけどさぁ・・・!
     ここで死んじゃったら、何のためにここに戻ってきたの!?僕達を救ってくれたクッパとドンキーの心意義を無駄にするつもり!?」
ポポ「・・・・・!」
ナナ「ピチュー・・・」


ピチューの言葉に二人が我に返る。そんな二人の表情を見てか安堵するピチューだったが─、
突如、彼等の目の前にファルコが飛び込んできて、三人が一斉に驚きの声を上げる。
見れば、彼の着用した制服は所々が焼け焦げ、更に意識を失いかけていた。


ピチュー「ファルコ・・・!?」
ポポ「ど、どうしたの?!」
ナナ「一体、何があった・・・・の・・・・!!?」


ファルコが飛来した方向を振り向くと、そこには受け入れがたい現実が。・・・・特に、ピチューにとって。
部屋の奥で、先程まで姿を見せなかったドンキーとルイージが何かと戦っている。素早く動き回る、黄色い何かと。
黄色い何かは時折ドンキー目掛けて電撃をほとばしらせる。危なっかしくそれを避けたドンキーが、悲痛な声で叫んだ。


ドンキー「何で、お前までがおかしくなっちまってるんだよ!!
     ・・・・・ピカチュウッ!!!」


ピチューは一瞬、ドンキーが何を言っているのか理解できなかった。
だが、徐々にその意味を理解できてきた。否、理解してしまった。
そんな、まさか。
自分の、大切な大切な、兄が──。


「・・・ここで死んじゃったら、何のためにここに戻ってきたの」
ピチュー「・・・・・・ッ!」
ポポ「な・・・・」


おもむろに、先程自分の言った言葉を誰かが真似て、嘲るかのように言い放った。
その声の主は、いつの間にか立ち上がっていた・・・リンク。


リンク「僕達を救ってくれたクッパとドンキーの心意義を無駄にするつもり?」
ピチュー「ッ・・・・ッ・・・・・ぅ・・・・・ぁあ・・・!」
ナナ「リンクッ!や、やめっ・・・・!」
リンク「お兄さんとは戦いたくないのでしょう?殺し合いたくないのでしょう?
    そんなあなたがこんな言葉を言う資格、ありませんね?
    戦うのが嫌なら早くこの戦いから降りてくださいよ。・・・・死んでもらっても、良いでしょうかね?」
ドンキー「ぅぐがぁあッ!!」
ルイージ「わあああっ!」


リンクが剣先をピチューに向けた直後、身体中に電気を纏わせながらドンキーとルイージの二人がピチューの脇へ転がってきた。
振り返ると、そこにはやはり・・・・・ピチューの兄の姿。
ピカチュウは両頬の電気袋からかすかに青白い電気をほとばしらせながら、口元に笑みを浮かべる。


ピカチュウ「こんにちは、皆・・・。そして、僕の弟、ピチュー」
ピチュー「にい・・・・ちゃ・・・ん・・・・・・・」


本来ならば真っ先に聞きたかった声。しかし、今ピチューはその声を欲していない。
がくり、とピチューが兄を目の前にしてその場に崩れ落ちた。


リンク「ピカチュウさん、ありがとうございます。
    あなたが他の皆さんを引き付けてくれたおかげで、大した被害は被りませんでした」
ピカチュウ「礼には及ばないさ、むしろ僕がお礼を言うべきだ。
      ほんの少し見ない内に生意気に成長した、可愛い可愛い弟を追い詰めてくれたんだからねぇ・・・
      こうも精神的に壊れてくれると、殺す側としてもやりやすいよ♪」
クッパ「ッ貴様等ァァアアアア!!!!」
「「ッ!!」」


クッパの怒鳴り声と共にピカチュウが凄まじい勢いで吹っ飛ばされる。
即座に剣を構えたリンクが振り向くと、リンクの顔面にクッパの強烈な裏拳が直撃した。


クッパ「どこまで貴様等は堕ちたと言うのだ、リンク・・・ピカチュウッ!!」
ピカチュウ「ぅ・・・る、さいっ・・・・・うるさいッ!
      堕ちただって?僕達がっ!?堕落してんのはそっちだろぉ!?」
リンク「お返しですよ・・・!」


ピカチュウの怒声と共に、体制を整え直したリンクがクッパに斬りかかる。
その一太刀をクッパは鋭い爪で弾き飛ばし、口を大きく開きリンクに灼熱の炎を吐きかけた!


リンク「ぐぅぁあぁああ!!?」
ピカチュウ「くっ・・・!らええぇッ!!」
クッパ「ッ・・・・・!がはぁあッ!!」


クッパの吐いた炎によって、リンクは身体中に火を巡らせ、絶叫しながらのた打ち回る。
しかし猛火を吐き出した事で隙を曝け出していたクッパ目掛け、ピカチュウが床を蹴り頭突きを喰らわせる。
そしてそのままピカチュウはふらついていたクッパの腹に放電し、彼の巨体を思い切り瓦礫の山へと突っ込ませた!


ピカチュウ「大丈夫?リンク」
リンク「っ・・・はぁ・・・はぁっ・・・え、えぇ・・・なんとか、大丈夫・・・です。
    もう少し遅れていたら、とどめを刺されていたかも知れません・・・。ありがとうございます。ピカチュウさん」
ピカチュウ「ふふっ、お礼なんて良いって。さあ、早く・・・あいつ等を、 殺そう?」


微笑を浮かべながらピカチュウがリンクから視線を離した、その瞬間。
赤い、鋭い光線が真っ直ぐピカチュウの顔面を狙って発射された。
慌ててピカチュウが放電してその光線を弾き飛ばすと、次に彼に襲い掛かったのはファルコの風を切るような速度の蹴りだった。
避ける事も出来ずにモロにそれを腹部に喰らい、吹っ飛ばされて後方に居たリンクに激突。
しかしピカチュウも負けずに、ブラスターで追撃を試みてきたファルコに電撃を浴びせかける。
・・・・・が、ファルコを蝕もうとした電撃はファルコの身体から、
勢い良く四方八方へと弾き飛ばされ、弾かれた電撃の一つがピカチュウに直撃した。


ファルコ「リフレクター・・・だ!」
ピカチュウ「くっ、くそぉっ・・・!」
ルイージ「ィィイヤァッ!!」
アイスクライマー「「えええぇぇぇいぃっ!!」」
ドンキー「オラァァアアアッ!!!」
リンク「な、・・・・!!」


歯軋りするピカチュウとリンクの背後から響いた三人の叫び声。
振り向いたリンクが絶句した瞬間、彼の喉にルイージの強烈な突きが命中し、
自身の放った電撃を跳ね返され、身体を麻痺させ動けなかったピカチュウが
アイスクライマーの放った吹雪に包み込まれ、その上でドンキーの強烈なパンチを顔面に喰らった。
膝から崩れたリンクが剣と盾を取り落とす。思い切り殴られ仰向けに倒れこんだピカチュウは身体の所々を凍て付かせ、
震えながら上半身のみを起こし、目の前に存在する者達を睨みつける。


ピカチュウ「ちっ・・・く、しょぉぉ・・・!許さないっ・・・許さないぞッ・・・絶対に許さないっ・・・
      みんな、殺す・・・・・みんな・・・みんなみんなみんなッ!殺してやるゥゥッ!!!!」
「「「───!!」」」


狂ったように叫んだピカチュウの両頬から、凄まじい電撃がほとばしった。
─その電撃は、半壊した部屋を敵味方の見境無しに滅茶苦茶に暴れ回る。
瓦礫の山を打ち砕き、敵である『生き延びた者達』を全て吹き飛ばし、そして仲間のリンクでさえも貫いた。
・・・やがて放電が止まると、身体中に張り付いていた氷は全身に帯びた熱で溶け、
氷が溶けて流れ出来た水溜りも蒸発しつつあった。周りを見れば、部屋中黒く焦げ、床の所々に小さな炎が上がっている。
辺り一面に倒れる『生き延びた者達』の姿を確認したピカチュウは、
自分の後ろで仲間のリンクが倒れている事などお構いなしに、笑い声を上げた。


ピカチュウ「はははァッ・・・・僕の・・・勝ちだ!任務完了、僕の勝ちだぁあッ!!
      あーっはっはっはっはっ!!ふふふ、はははははは!!」












続く




音楽提供:VGMusic











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