最終話  
──存在を嘲る者──








ポポ「・・・僕が、説明するよ」


突如として、ポポがそう言うと、一歩前に出た。
一斉に全員が討論を止め、ポポに視線を向ける。
・・・確かに、彼は困惑するメンバー達の中で一人だけ様子がおかしかった。
それに、先程のピカチュウに何かを言われていたのも彼だ。
恐らく、彼がピカチュウの事について説明できる程の事を知っているのは本当の様だ。
全員が沈黙した中で、ポポはどこか口を開く事を躊躇っていたが、やがて決意した様に一呼吸置いて全員を見渡した。


ポポ「・・・・・これは・・・今、ここに居るピカチュウとは、別のピカチュウから・・・聞いた事なんだけどね・・・。
   ・・・・後で聞いて、驚かないように・・・。最初に、言っておくよ。
   ・・・僕達は、これからすぐに・・・死んでしまうらしいんだ」


ポポがそう言った瞬間、自然豊かな美しい終点の景色が、一気に闇の中へ飲み込まれた。
風の吹きつけるような音と同時にブラックホールを思わせる中へ飛び込んだ終点の上で、
彼の衝撃的な言葉に誰もが動揺を隠せずに口々に言う。


ナナ「ぽ、ポポ・・・!?何を言ってるの?!」
ドンキー「どういう事だよッ!?これからすぐに死ぬって!!」
シーク「・・・一体、先程のピカチュウに何を言われたと言うんだ・・・?」
ピカチュウ「え、え?僕は何も・・・」
プリン「そうだよ、ピカチュウは通路で僕と合流するまでずっと競技場を駆け回ってたんだから」
ポポ「待ってみんな、・・・大事な事なんだ、聞いてくれないかな」


そんな彼等に制止の言葉を上げながらポポが再び口を開く。
不思議とその一言でまとめられた全員が抗議をやめて彼に向き直る。


ポポ「・・・まず、彼の言っていた事、それとここへやってきた理由を説明するね」
ルイージ「う、うん・・・」
ピチュー「・・・・・・・・・」
ポポ「彼は未来からこの世界へやってきたって言ってた。
   ・・・どうやって来たかは言わなかったけど。
   何でこの世界・・・この時間へ来たのかと言うと、未来の世界でもスマッシュブラザーズは存在してる。
   でも、未来ではスマッシュブラザーズがかつてない危機的状況に陥ってるんだ。
   ・・・・今回の事件とは比べ物にならない程」


誰もが絶句し、目を見開いてポポの事を見つめた。
見れば、彼の握るビームソードの剣先がかすかに震えている。
口を震わせながらも、彼は続けた。


ポポ「それで、そんな状況に陥った原因がこの事件にある。
   だから、僕達にそうなる運命を変えて欲しい──、僕達にその原因を少しでも改善して欲しいらしいんだ。
   ・・・それを僕達が成し遂げられさえすれば、未来は守られる事になる」
ナナ「・・・・・でも・・・私達は死んじゃうんでしょ・・・?」
ポポ「・・・うん。それはもう、どう抗っても変えられない運命らしい。
   でも確かに、僕達は未来の世界に存在するって・・・。
   この時間の、この運命の上に居る僕達はここで終わるけれど、
   別の時間の、別の運命の上に居る僕達は生き延び、世界を守る為に戦い続けるって。
   ・・・・・ピカチュウのあの目は・・・嘘をついてる様な目じゃ、なかったよ」


言葉の後半は俯きながら話すポポ。
自分の名前が出てきて、訳の解っていないピカチュウも、いつの間にか真剣な剣幕で話に聞き入っていた。


ドンキー「だが・・・その原因ってのは、一体なんだってんだ・・・?」
ポポ「・・・・・それはね。・・・みんな、ちょっと集まってくれないかな。
   これは、奴等に聞かれたら不味い」
マルス「・・・・・奴等?」


疑問に思いながらも、ポポの言葉通りにメンバー達が彼の回りに集った。
それを確認すると、声を潜めて彼はその原因を話し始めた。


プリン「それって・・・本当、なの?」
ポポ「本当だよ。・・・奴等にはまだ、余力が残されていたんだ・・・!」


ポポが言い終えると、全員の視線が同時に『奴等』に向けられる。
数秒間の空白の後、不意に野太い笑い声が終点に響いた。


「ふははははっ・・・!まさか・・・まさか、な!
 密かに身体を自己再生させながら様子を窺ってはいたが・・・、
 貴様等の結成者がゲーム&ウォッチだったとは。我々も心底驚いたぞ!」
「ひゃぁはははッ!それでよォ、話からするとお前等みんな死ぬんだろ?
 俺ぁ運命を感じたぜ、お前等をこれから死に至らしめるのは他でもない俺等なんだからな!!」


二つの同じ様で異なる声は、それぞれの巨大な手袋から響いてきた。
瞬間、スマッシュブラザーズの誰もが身構える。
マスターハンドとクレイジーハンドは不気味に笑い声を漏らしながら宙に浮かぶ。


マスターハンド「・・・だが、いくら貴様等が弱っているとはいえ、我等も本気を出さねば勝てぬ相手だと言う事が解った。
       もはやなりふり構っていられる状況ではあるまい」
クレイジーハンド「そうだな、兄貴・・・見せてやろうぜ、こいつ等に。
        俺達の、真の姿をよ!!」
マルス「・・・・・・っ!」


ポポに予め聞かされていたとはいえ、誰もが動揺を隠せない存在。
当のポポも驚きの表情を浮かべているのだから仕方が無い。
そしてその存在は、突如不可解な言葉を吐くと、握り拳を作って震え始める。
するとどうだろう。
両手を包む手袋が、音をたてて裂け始めたのだ。


ルイージ「何だよ・・・これ・・・」
ピチュー「きか・・・い・・・?」


ただの布切れとなって今まで両手を包んでいた手袋が床に落ちる。
そして驚く事に、その中から現れた存在は、銀色に光る、複雑な造りの身体だった。


右の機械「実の所は、あまりこのような姿を晒したくは無かったのだがな。仕方がない」
左の機械「まあ、良いだろ。これから新たな世界を創って、
      その世界の機械神になるってのも」
ピチュー「・・・・・・・・」
ピカチュウ「・・・・・・・」


話しながら、宙を舞っていた両方の機械が静かに降下し始めた。
二つの機械は先程のピカチュウの一撃によって出来た穴へ入り込む。
その様を見ている間にも、両手の形を成している二つの機械が、互いに金属音を鳴り響かせながら一つへとなってゆく。


右の機械「何も知らずに散り行くのもかわいそうだから教えておいてやろう。
     ・・・我々は、創造力と破壊力の使い方を誤り、罰を受け手袋の姿にされたと言ったな?
     ・・・・・世界の調整の役目の途中で自我を取り戻した後、我々はお互いの姿に素朴な疑問を抱いた。
     『手袋の中は一体どうなっているのだろうか』・・・とな」
左の機械「好奇心にかられた俺達は互いの手袋を取り去った。
     ほんの少しの希望もその時、あったかもしれない。・・・・希望なんて、最初からありゃしなかったのさ。
     俺達は自分自身の意思を持つ、機械だった。世界を調整する為だけの、機械」
ドンキー「・・・・・・・・・・」
プリン「・・・・・・」


やがて、鳴り続けていた金属音が止んだ。
メンバー達の目の前には、巨大な銀色の塊がそびえ立っていた。
塊の中から、幾つもの機械の腕が伸びてくる。
それと同時に、機械の塊から、エコーの掛かった野太い声が木霊した。


右の機械「最後のトライフォースの所持者が解らないのならば・・・。
     一気に、貴様全員を取り込んでしまえば良い。
     見るが良い・・・我々の背に当たる部分を。神々の象徴が美しく描かれているだろう?」
ポポ「・・・・・・・・」
ナナ「・・・・・・・・」


それは明らかに、マスターハンドの声だった。
おぼろげながらに手の形を取っている彼等の手の甲には、確かに金色に輝く二つの三角形が浮かび上がっていた。


左の機械「さあ・・・俺は今から、この腐れた世界をぶち壊さなきゃいけねえ。
     その為には、お前等の誰かが持ってる勇気のトライフォースが必要なんだ・・・。
     だから・・・。大人しく、俺達の中に取り込まれるか、トライフォースを俺達に献上するんだなぁ・・・?」
シーク「・・・・・・・・」
ルイージ「・・・・・・・・・」


クレイジーハンドが言い終えると同時に、マルスの近くへ伸びていた鋼鉄の腕が、三本の指の様な形状の手先を開く。
無言で立ち尽くすマルス目掛け、容赦なくその鋼鉄の腕は槍の様に飛翔した。


マルス「・・・・・させる・・・ものか」
右の機械「・・・・・・・・何だと?」


機械仕掛けの腕の、手首に当たる部分から先が宙を舞った。
長剣を振り下ろしたまま、顔をあげると、マルスの青い眼光が機械の塊を捉える。


マルス「・・・彼等の弱点を探し出せば良いんだったね?ポポ」
ポポ「・・・・うん。その通り」
マルス「っはぁぁああぁああああ!!!」


ポポの返答を聞き届けると同時に、マルスは剣を斜めに構えて絶叫しながら駆け出した。
敵の手前で床をけり、高く跳躍すると、相手を真下から斬り上げる剣技、ドルフィンスラッシュを仕掛ける。
美しく飛び上がるイルカの様に舞ったマルスの持つ剣は、無数に生える機械の腕の内の一本の付け根を斬りつけた。


右の機械「ぬぅっ──!?貴様っ、この姿を目にしても、尚も抗おうと言うのかッ!?」
ドンキー「『貴様』?・・・『貴様等』の間違いじゃないのか?」
左の機械「うぉ・・・おおぉああッ!?」


いつの間にか脇から飛び掛っていたドンキーが、鍛え抜かれた豪腕で巨大な機械を殴りつける。
殴られた部分は大きくへこみ、変形していた。
悲鳴を上げつつも、自在に操られた三本の機械の腕がドンキーの左腕に絡みついた。
舌打ちしながら、力任せに絡みついた腕を引き千切ると、更に機械の中から悲鳴が響いてくる。


左の機械「く、くく・・・。残念だが・・・俺達にそんな細けえ攻撃をいくら喰らわせようが、労力の無駄だぜ。
     俺達は、この機械の身体の傷ついた部分を自己再生させる事が出来るんだ。
     ・・・手袋を被っている時も身体を再生させてはいたが、あの時のお前等の猛攻にはそれも追いつかなかった。
     ・・・・・・だが、今は違う。俺達やミュウツー、ファルコ、ウォッチとの連戦で、もうほとんど戦う事はできないはずだ」
右の機械「・・・故に、お前達が傷ついた身体でどのような攻撃を繰り出そうとも、
     我々の自己再生能力に追いつくほどのダメージを与える事は不可能なのだ」


声を震わせながら言うクレイジーハンドに、マスターハンドが補足する。
しかしその言葉に耳を傾けようとする者は誰一人とて居なかった。
両頬で電撃を弾かせると、襲い来る機械の腕を掻い潜り、ピカチュウが機械の塊へと飛び込んでゆく。


ピカチュウ「まだ良くは分からないけれど・・・とにかく、こいつ等の弱点を見つけ出せば良いんだよね!」
右の機械「ぐッ!!ああああああああッ!!!」


両頬から浴びせかけた電撃に、機械の塊が異様に苦しみ、悲鳴を上げた。
その様子を見ていたピチューが思い出した様に叫ぶ。


ピチュー「あいつ等・・・あいつ等、確か電気に弱いんだよ!
     弱点って、もしかしてこれの事じゃっ・・・!?」
ポポ「・・・いや。彼の口ぶりからしてそれは少し違う。
   確かにあいつ等は電気には弱いようだけど・・・あのピカチュウは、どうやら未来でもあいつ等と戦っていたようなんだ。
   それだと、ピカチュウの一撃でその事にはすぐに気がつくはず。
   だからきっと、僕達は他の・・・あいつ等にとって、本当に致命的となる弱点を探し出さなくちゃいけない」
ピチュー「・・・そっか。それじゃあ」


残念そうに首を振りながら返してきたポポの言葉にほんの少し落胆しつつも、
ピチューは葉を噛み締め、前足を床に着き、前かがみとなって、相手を威嚇する。


ピチュー「やっぱり、やみくもに攻撃するしかない・・・のかな?」
ポポ「・・・そうだね。それしか、僕達に・・・出来る事は無い」
ナナ「だったら、今すぐにでも、私達も・・・・!」
ポポ「うんっ!」


三人が向き合い、頷き合うと、揃って機械の塊へと駆け出した。
見れば、マルスが剣を機械の節目に突き刺して、激しく身体を揺らすマスターハンド達の上から落ちまいとしている。
だが、マルスの様に得物を持たないドンキーとピカチュウはバランスを崩し、機械の腕に殴り飛ばされてしまう。
二人とも受身を取るのに失敗し、身体を強かに床に打ちつける。
しかし、ポポも、ナナも、ピチューの誰もが彼等を振り返らずに走り続ける。
叩きつけられた二人も、己の受けた傷を気にせず立ち上がり、敵を睨みつける。


ポポ「っとりゃあ!!」
ナナ「えぇーいっ!!」
ピチュー「ったぁ!!」
右の機械「く・・・・小賢しい奴等めッ!いい加減消えろぉっ!!」


それぞれの攻撃を仕掛けてくる三人を振り払おうと何本もの機械の腕が虚空を切り裂く。
その行動による効果は現れず、ポポの一太刀が右手の指と指の間にあたる部分だった場所を襲う。
一方で氷を纏ったナナのハンマーによる一打を受けた右手の親指の先だった部分が内側にへこんだ。
ピチューの短い尾が左手の人差し指の第一間接に潜り込み、そこから内部の何本ものコードを引き裂く。


左の機械「はっ・・・ははぁっ!うぜぇ、うぜえんだよてめえ等ッ!
     兄貴、良いよな!?もう十分すぎるくれえに溜まってるんだ、あの力はよぉ!!」
右の機械「良いだろう・・・!この目障りなハエどもを叩き潰せ!!」
マルス「くっ、離れろッ!」


叫ぶクレイジーハンドの、指先だった部分で赤い光が弾ける。
マルスの言葉に全員が終点の中心の鉄の塊から距離を置こうと別々の方向へ走る。
不快に感じる程に金属音を鳴り響かせ、狂った笑い声が響き渡った。
一つ、二つと解き放たれた真っ赤な光がスマッシュブラザーズの居る場所へ飛び込んでゆく。


右の機械「私の力も喰らうが良いっ!」
シーク「くっ・・・!?」
ポポ「うわぁぁ!!」
ルイージ「ぎゃあッ!」


あらゆるものを破壊する光を回避するのに夢中だったメンバー達目掛けて、
右手の掌だった部分に収束した青い光の中から次々に鋭利な刃を持つ物が飛び出してくる。
反応し切れなかったポポの右肩に直線状に飛んできたナイフが突き刺さった。
続いてルイージの左足を銀色の閃光──否、剣が貫く。
二人の悲鳴が轟き、二箇所から噴出した鮮血が交差した。


左の機械「ッははははぁ!ぶっ壊れなッ!!」
ポポ「───!」
ルイージ「ひっ・・・!?」


倒れこんだ二人へ襲い掛かる二つの真紅の光。
ポポの目が極限まで見開かれ、ルイージの顔にはもう諦めの様なものが浮かんでいた。
二人の目の前で、粉々になった木の破片が巻き上がれられる。
次の瞬間、大量の鮮血と共に、既に原形を留めていない桃色の防寒服を着た少女が崩れ落ちた。


左の機械「ひゃはっ、ひひゃはははははぁっ!良い様だぜぇ・・・
     二人一気に潰せなかったのぁ残念だが、どうやら精神的にかなり参っちまったようだなぁ?」
ルイージ「な・・・・・っ、嘘、だろ・・・・!?」
ポポ「あ・・・・あぁ・・・、ナナ・・・、ナナッ!ナナぁ!!!うわああああああッ!!!」


武器であるハンマーを一つ目の光に投げつけ、残るもう一つの破壊の光を身を挺して掻き消したのは、
今まさに肉片と化そうとしていたポポの相棒、ナナであった。
自分達を庇って、一瞬の内に惨い姿に変えられたナナの元へ這う様に移動すると、ポポが悲鳴を上げる。
他のメンバー達も、唖然とした表情でその様を見つめていた。
そんな中で、不意にポポが立ち上がると、肩に刺さったままだったナイフを引き抜き、
涙で濡れた眼差しを機械の塊へと向ける。


ポポ「・・・僕達はみんな、結局はここで死ぬ運命なんだ。
   こうなる事だって分かってたよ。
   でも・・・でも、やっぱり・・・赦せない。赦すわけにはいかない。・・・だから、
   未来の世界に居る違う僕達が、未来の世界に居るお前達を必ず滅ぼす事の出来るように!!
   ほんの少しの時間でも生き延び足掻いて、お前達の弱点を見つけ出してやるッ!!!」


絶叫しながら、ビームソードを構えたポポが駆け出した。
伸びてきた機械の腕を叩き切ると、床を蹴って跳躍し、左手に握り締めたビームソードを振り上げる。


右の機械「ふはははッ!我を失い、相方も失い、正気をも欠いた貴様に何が出来ると言うのだッ!!」
ポポ「ぐぁ・・・!」


マスターハンドの言葉がほとばしると共に、呻きながらポポが床に叩きつけられた。
彼の身体のあちこちには、火傷と裂傷。
敵は、指先に当たる部分から青白い光線を放ち、床の上を走らせ、もう一撃ポポに喰らわせようとする。


ドンキー「させねぇよ!!」
シーク「ハッ!!」
右の機械「ぬおっ!?」


光線を放つ五本の指を、脇から思い切り殴り飛ばして操っていた指の体勢を崩す。
そこをシークが右手の指全てを鉄製の糸で縛り上げ、放ち続けている光線をあらぬ方向へと向けさせた。


マルス「僕達が援護する。主役は任せたよ!」
ポポ「みんな・・・!」
プリン「いっくぞぉ〜!!」


真っ赤な光を放ちだしたクレイジーハンドへ、プリンが高速回転しながら突っ込む。
不意を突いた攻撃に戸惑ったクレイジーハンドの機械の身体と身体の節目が切り裂かれる。
そのせいか指先に揺らめいた赤い光はふうっと暗闇に消えた。
そのまましなやかな剣撃で次々と鋼鉄の身体を斬りつけてゆくマルスに迫る機械の腕に、ピチューがしがみつく。


左の機械「くそっ、邪魔だ!!どきやがれぇッ!!」
ピチュー「絶対に、どくもんかぁ!!!」


叫ぶピチューが、腕にしがみついたままありったけの電気をぶちまける。
それはやはり微弱なものだったが、電気による攻撃に弱い彼等を怯ませるには十分な攻撃だった。
マルスが硬直したクレイジーハンドの二本の指の関節に剣を貫通させ、指の自由を奪う。
マスターハンドの指から飛び移ってきたドンキーが他の指の内の二本にその大柄な身体で圧し掛かる。
最後の指へとピチューが飛び乗ると、彼の身体からすれば大きな指の間接の隙間に入り込み、
限界を超えてまで放電しながら隙間の奥を繋ぐコード等を小さな両手で掴み取る。


右の機械「くそっ・・・小賢しい事をッ!!」
左の機械「てめえ等、ぜってぇにぶち殺してやるッ!!!」


全ての指を封じられても尚、叫び続けるマスターハンドとクレイジーハンド。
しかしそれだけで、彼等は反撃する事が出来ない。
ビームソードを一振りして、ポポが二つの機械の集合体をもう一度睨みつける。
両脇にルイージとピカチュウがそれぞれ攻撃する構えに入った状態で立った。
その時、突如としてポポの左手の甲が金色に光り輝いた。
驚いて手の甲を見ると、茶色の手袋の上におぼろげながらも光り続ける三角形が浮かび上がっていた。


ポポ「これって・・・まさか・・・!」
ルイージ「ポポだったんだよ!リンクの勇気のトライフォースを受け継いだのは!」
ポポ「・・・僕にそんな、勇気とか素質とかがあるかどうかは知らないけれど。
   リンクに託された聖三角の力。無駄にはしないよ・・・っ」
ピカチュウ「・・・それじゃあ、行こうっ!!」


信じられない、という表情だったが、先程とは打って変わって妙にポポは落ち着いていた。
殺された相棒や仲間達の仇を取る為、未来の世界を守る為に。
その為の策を講じる事の出来るよう、興奮する自分を無理矢理に落ち着かせているのか。
走り出したピカチュウとルイージの後を涙を拭って、少し遅れて追いかけた。


右の機械「ほう・・・!貴様か、貴様が・・・我々の探し求めた、勇気のトライフォースの所持者か・・・!」
左の機械「そうと解りゃ話は早ぇ、さっさとこいつ等身体から剥がしてそのトライフォースを頂くとしようじゃねえか!!」


ギギギ、と金属音を鳴り響かせて機械の腕を再度生やすとメンバー達を掴み上げようと試みる。
だが、いくら引っ張られてもドンキーも、マルスも、ピチューも左手の指から離れる事は無かった。
一方でマスターハンドが指を縛る鉄の糸を機械の腕で力ずくに千切るも、
その瞬間飛翔したシークの仕込み針が次々の指の間接部分に突き刺さり、右手の指の動きを狂わせる。


シーク「今だ、やれっ!」
ルイージ「っうおおおおおおおおお!!!」
ピカチュウ「ったあああああああああ!!!」
右の機械「ぐぅっ・・・!?」


ルイージが駆けながら滅茶苦茶にいくつもの緑色の炎を投げつけ、そして自分自身も炎に包まれる。
浴びせかけられた緑の炎に怯む鉄の塊の、右手と左手を繋ぐ部分へルイージロケットが炸裂した。
続いて両頬から直線状に、金色の閃光を放出するピカチュウ。
電撃の行く先は、たった今ルイージが一撃を見舞った場所。
咄嗟に身を翻してルイージが電撃を回避したその瞬間、両手の境目に電撃が命中。
同じ場所から二つの異なる悲鳴が上がる。


ポポ「とりゃぁぁああああああああッ!!!!!」
左の機械「う・・・お・・・っ、」
右の機械「くそっ・・・!?」


ポポが武器を振り上げると同時に、鉄の塊にしがみつくメンバー達が飛び降りる。
その攻撃は、言わば賭けの様なものだった。
渾身の一撃を、先に二人が攻撃を叩き込んだ場所へと打ち付ける。
両手を繋ぐ節目──、予め三人は、そこを弱点だとして、集中的に攻撃すると打ち合わせていた。
そして今まさに、その『弱点』へと、勇気のトライフォースの力を上乗せしたビームソードが斬り込まれ──。


右の機械「・・・・・・バカ、な」
左の機械「嘘、だろ?」


トライフォースの力を流し込まれた為か。突き刺さったビームソードの刃はうっすらと金色に光っている。
何よりも、そのビームソードの突き刺さっている部分から、
少しずつ、少しずつと縦に亀裂が入ってゆくのを、誰もが息を呑んで見つめていた。
互いを繋ぐ部分を破壊され、ゆっくり両脇へ倒れてゆく右手と左手。
がしゃりと金属音が鳴ると、思い出した様に再び互いを繋ぎ合わせようと内部から自己再生を行う。
しかし、彼等が完全に再生する事は無かった。
深くまで突き刺さったままのビームソードが壊れる事無く、再生した両手の境目に持ち手の部分を見せているのだ。


左の機械「・・・・っ、ちくしょうがッ!!!ぶっ壊れやがれ!!!」


憤りを見せたクレイジーハンドが一気に三つの破壊の光を作り出し、
兄の身体と結合している部分に深く刺さったままのビームソードにそれらをぶつける。
俄かには信じがたい事がその瞬間に起こった。
破壊の光が、三つともビームソードを前にして弾き飛ばされたのだ。
驚きながら、再度同じ事を試みようとするクレイジーハンドにマスターハンドが静止の言葉をかける。


右の機械「諦めろ。お前の破壊力が通用しないという事は、
     どう足掻こうがこのビームソードを打ち壊す事は出来ぬ。
     どうやらこのアイテムには、奴の持つトライフォースの力が作用している様だ。
     ・・・それにこれは奴等の最後の抵抗の傷跡、その勇気に敬意を表し、残しておく事にしてやろう」
左の機械「・・・・兄貴がそう言うのなら、仕方ねえな」
ポポ「・・・・ぐっ」
プリン「──ッぁあああ!!?」


息を弾ませていたポポが背後から機械の腕に掴み上げられる。
ぎりぎりと締め上げられながら空中に掲げられてしまった。
それに気を取られたプリンの脳天を青白い光線が貫いた。
目を見開き、怒りに身体を振るわせたドンキーが鉄の塊へ飛び掛ってゆく。
銀色の塊が風を切ると、ドンキーが床に叩き付けられる。


マルス「・・・・。どの道、僕達が全滅する運命からは逃れられない様だね」
右の機械「くく、当然だ・・・!」
マルス「・・・ならば、命尽きるまで足掻くまでだ!!」
左の機械「ッ!?」


叫んだマルスが自身の剣を突き刺したままのクレイジーハンドの元へ向かう。
飛翔した鋼鉄の腕を乗り越えて、突き刺さっていた剣を引き抜くと、振り向きざまに剣を振るう。
すると、マルスに迫っていた二本の鋼鉄の腕がはね飛んだ。
そのままポポを救出しようと鋼鉄の身体の上を疾走するが、突然目の前に真っ青な光が灯る。
声を上げる間もなく、光の中から飛び出した無数の刃物に身体を貫かれ、力なくマルスが機械の上からずり落ちる。


ドンキー「う・・・・おおぉおおおおぉおお!!!」
左の機械「くはっ、はぁははははっ!無駄だぁ!!」


口から滴る血を拭って機械の塊に一撃を加えるドンキー。
鋼鉄の身体が大きくへこませたが、クレイジーハンドの掌に当たる部分が蓋のように開き、
その中から無数に黒い球体が発射されてきた。
全ての爆弾は爆発し、紫色の炎を巻き上げてドンキーの身体を包み込んだ。


右の機械「はっはっは!!形勢逆転のようだなぁ!!?」
ポポ「うああっ!!」
ピチュー「ポポォッ!!」


嘲笑いながら機械の腕に掴まれたポポが床に投げ捨てられ、身体を強かに打ち付ける。
見かねたピチューが駆け出すが、既に彼の小さな身体にマスターハンドの二本の指が狙いを定めていた。


シーク「ピチューッ!シールドをっ・・・!!」
右の機械「もう遅いわぁ!!」
ピチュー「うぁっ──!!?」


三連続で銃声が鳴り響き、六発のミサイルがピチューを中心に爆発を起こす。
吹き上がる紅蓮の炎の中で、わずかにピチューの身体の一部が舞うのをピカチュウは見てしまった。


ピカチュウ「くっそぉぉーーーッ!!!」
ルイージ「ぴ、ピカチュウッ!!はやまっちゃ──」
左の機械「ひゃぁはははははっ!!!バカな奴等め、ついに狂っちまいやがった!
     次々と自分から死にに来てくれやがる!!」


必殺技、ロケットずつきが彼の最後の攻撃となった。
正直に真っ直ぐ突っ込んでいったピカチュウはいとも簡単に鋼鉄の腕に受け止められ、
未だ燃え続ける先程の爆炎へピカチュウを叩きつけ、絶叫するピカチュウを炎の中に押さえ込む。
揺らめく炎に乗ってかすかに聞こえていた悲鳴が途切れると、熱でどろどろに溶けた鉄の腕が炎の中から引き抜かれた。


右の機械「死を超越した痛みと苦しみ、味うが良いっ!」
ポポ「ひっ、ぃぎゃぁっ、ぁあああぁああああああッ!!!」


高熱を帯びて溶け出している鉄の腕がポポの身体にあてがわれる。
耐え切れるはずが無く、絶叫しながらポポは息絶えていった。
今まで何度も絶望を乗り越え、奇跡とも言えるべき事を成し遂げてきた仲間達がこうもあっさり死んでゆくその様。
生き残っていた、シークとルイージが目を見開いてその現実を凝視する。





──変えられない運命。
──それは他でもない、自分達の死・・・。


ルイージ「・・・・・・・・」


──これで良かったのだろうか。
──自分達の死が、本当に未来の生に繋がるというのか。


シーク「・・・・・・・・・」


棒立ちになったまま、二人は無言で俯いた。
辺りは血の海。その傍ら真っ赤な炎が激しく燃え上がる。
酷く、惨すぎる世界の中で、二つの野太い声が嘲笑う。


左の機械「へへへっ、どうしたどうしたぁ!?もうかかってこねぇのかぁ!?」
右の機械「くくく・・・!我々の圧倒的な力に臆したか。
     それも良いだろう・・・。大人しくその命、我々に捧げるのだな!」


青い光と赤い光が暗闇の中に灯る。
青い光の中から大量の爆弾が飛び出し、赤い光はそのまま一直線に向かって来る。
しかし、二人は動かない。


シーク「・・・・・・いつの日か、必ずお前達は滅びる事になる」
ルイージ「別の運命の上に居る、僕達が・・・きっと君達をやっつける」


命の燃え尽きるその瞬間、顔を上げた二人は、
真っ直ぐな眼差しで彼等を見つめながら、そう言い放った。







右の機械「・・・・・・ふん。最後の最後に、意味深な言葉を残していったな」
左の機械「どうせ負け惜しみかなんかだろ。・・・どうしたんだよ、いつもの兄貴はそんな事気にしないはずだぜ?」
右の機械「少々暴れすぎて、疲れてしまったのかもな。まあ良い・・・これで終わったのだ。何もかもな」
左の機械「ああ、そして、これで始まるんだよな?新しい、全てが」
右の機械「その通り」


広大な宇宙を映し出していた終点に、静かに二つの声が響く。
会話が途切れると、しばらく活動を停止していた機械の塊が、再び蠢き始めた。
一本の鉄の腕が、床の上に転がっていた大男の死体を掴み上げ、鉄の塊の前に持ってゆく。


右の機械「ガノンドロフ・・・。くくく。お前も必死だったな。
     わざわざ人の命や魂を奪って、メンバー達を蘇らせていた私達が、
     生命エネルギーを創って、メンバー達を蘇らせる事が出来るなどと。
     ・・・ありえない事なのにお前はそう言い張っていたな」
左の機械「ひゃぁははは。大事なお仲間達の士気を下げない為か、それとも自分自身にそう信じ込ませようとしていたのか」
右の機械「今となってはもうどうでも良い事だがな。・・・・さあ、そろそろ始めるとするか・・・。
     この腐れた世界の破壊を、そして私達の理想の世界の創造をッ!!!」


朗々とした叫び声と共に、一斉に機械の中から機械の腕が何本も伸びてくる。
それらは辺りに散乱したスマッシュブラザーズの死体を、肉片を、血液をもかき集め、自らの中へと取り込んでゆく。
共に取り込んだ勇気のトライフォースが、彼等の手の甲に浮かび上がった。
機械の塊がはめ込まれていた大穴の隙間も、機械の内部から生えてきた機械が埋め尽くしてゆく。
そして全ての準備を終えた機械の塊が同時に笑い声を上げると同時に、世界を真っ赤な光が覆う。


左の機械「ははは・・・っ!!これで、これで俺達は!!」
右の機械「新しい世界の・・・、新しい神だ!!」


狂ったような──、いや、既に狂っているのか──。
喜びに満ちた叫び声が、その空間に響き渡った。
















・・・・・第二部に続く。






















後書き



どうもどうも、作者兼管理人の紙袋ですよ。
やーっとここまで書き終えました。
リメイクに何ヶ月掛かってるんだ。
そしてフォントタグ使いすぎ。
今回も色々試行錯誤して書いてみた結果、
またしてもリメイクする前よりも大幅にボリュームが喪失。
そのまま以前のものを無かった事にしてしまうのもアレだったので、こうなりました。
一つに二つの物語。思いついたのは二十五話を執筆してる辺りだったかな。
それはともかく、ここまで読んでいただきありがとうございました。

続いて第二部の方の話ですが、
そちらはこのリメイクされた第一部ではなく、リメイク前の第一部の続きの話となっています。
その理由は第二部の話が進むにつれ明かしてゆくつもりですが、
既にヒントは第一部の話の中にいくつか存在します。
同時に未だ明かされていない謎も多数ありますので、
第一部と第二部を読み比べ、謎解きをしてみるのも良いでしょう。
などと、埒も無い事を言ってみるテスト。
すいません許してください。
何はともあれ、これでやっと新しい話を考えられるぞー・・・!
それと、第二部は第一部の様に一文一文を長くするんじゃなくて、
ちゃんと句点とかの辺りで改行して書きたいな。

それではこの辺で。
長々と失礼しました。



音楽提供:Blue House




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