二十五話  挑戦者達








ミュウツー「全ては、我が主達の為に・・・」


呟くと、ミュウツーの両手に紫色のエネルギーが収束した。
禍々しい力が黒々とした火花を散らせ続ける両手をかつての仲間達へ向けても、ミュウツーの表情は微動たりともしない。


ロイ「なんて事だ・・・まだ、彼は・・・マスターハンドに感情操作されたままだったのか・・・!?」
ポポ「で、でもそれだと・・・ウォッチは・・・?」
ガノンドロフ「・・・いつまでたっても残りのメンバー達が来ないから、まさか・・・とは考えていたが」


苦虫を噛み潰したような表情で三人が言う。
・・・いや、他のメンバー達も同じような表情をしていた。
信じられない、というよりも、危惧していた事が起こってしまった──という風に。


ルイージ「・・・もしかしたら、兄さん達が向こうへ行った事で、ウォッチが持ち堪えられなくなって・・・」
ゼルダ「・・・しかし、それにしては・・・こちらへやって来たのが、彼だけというのはおかしいかと・・・」
ネス「きっと、みんなを正気に戻す程の余裕がなくなったから、頑張って他のみんなを倒したか気絶させたかしたんだよ。
ナナ「・・・・・だけど、最後に残ったミュウツーに負けちゃって・・・・」
ドンキー「筋は、通ってるが・・・あんま信じたくねえな・・・」
ミュウツー「・・・お喋りは、終わりか?」


不意に呟くと、ミュウツーの構えられた両手から無数のシャドーボールが放たれた。
全て小型のものだったが、不規則な軌道を描いて飛来してくるそれを避けるのは至難の業。
床に触れたシャドーボールは次々に爆発。誰かに命中すればESPの塊が飛散し確実なダメージを与える。
ESP。ミュウツーの操る、超能力の名称だ。ネスの操る超能力、PSIとは違った性質を持つと、以前正気であった彼が言っていた。


ミュウツー「──行くぞ!」
ポポ「うっ・・・!?」
ナナ「わああっ!」


巻き上がる煙。いきなりの強烈な不意打ちは、目くらましだった。
ミュウツーの姿が掻き消えたと思うと、すぐ脇の煙の中から紫の細い腕が伸びてくる。
収束されたESPを突き出された掌低と共に爆発させられ、アイスクライマーの二人が吹き飛ばされてしまう。


ロイ「はあああッ!!」
ミュウツー「その様な闇雲な攻撃が、私に当たると思っているのか・・・・」
ロイ「なッ!?──ぐあああぁっ!!」
ルイージ「ロイッ!」


煙の中のミュウツーへ剣を振り下ろしたロイだったが、その剣先がミュウツーを捉える事はなかった。
勢いあまって封印の剣が床にぶつかり、金属音が鳴り響く。
ロイの背後へテレポートしたと見られるミュウツーは、驚いたロイが振り向くより早くロイの足元へ手先を向ける。
発動したシャドーボムは容赦なくロイの足元を紫の爆発で吹き飛ばし、悲鳴を上げたロイは前のめりに倒れこんだ。


ミュウツー「・・・弱い。これならば時間稼ぎなどせずとも・・・私のみの力でこいつ等全員、片付けられる」
ガノンドロフ「言ってくれるな、ミュウツー?・・・ならば俺一人の力でお前を潰してくれようか」


とどめを刺そうとロイへ再びESPの収束した腕を振り上げようとしたミュウツーが止まる。
瞬間、闇を纏った豪腕が空を切った。ガノンドロフの真上にテレポートしたミュウツーが、
紫の長い尾を振るってガノンドロフの脳天を打ち据えた。・・・はずだったが、そこにはガノンドロフの姿はない。
正確には、視界の隅にガノンドロフが映っている。何が起こったのかを理解すると同時に、
やっと何をされたのか答えを示す唯一のヒント、鋭く鈍い痛みがミュウツーの脇腹に走った。


ミュウツー「私が頭上へ移動したのを予測し、私に背を向けながらも後ろ足蹴りとはな」
ガノンドロフ「これで、お前だけの力で我々を・・・いや、俺だけさえも倒せない事が解ったか?」
ミュウツー「解らんな」


ガノンドロフによって大きく横へ蹴り飛ばされていたミュウツーが視界の隅に居るガノンドロフに呟く様に言うと、
再びテレポートで姿を掻き消す。次に現れた場所はガノンドロフのはるか前方だった。
着地と共にシャドーマシンガン。次々と小型のシャドボールを撃ち出して来るが、全てシールドを張って防ぎ切る。


ミュウツー「そこだ」
ガノンドロフ「・・・・・!」


気づけばミュウツーはシールドを解いた直後のガノンドロフの背後に回りこんでいた。
ふっ、と珍しい笑声とも溜め息とも取れる声を漏らしながらESPを纏った掌低を繰り出すが、
ミュウツーの掌低がガノンドロフに触れる寸前で、ミュウツーの動きが硬直した。


ネス「全く、僕達がただの外野みたいじゃないか」
ルイージ「忘れ去られてるみたいで哀しいよ」
ガノンドロフ「・・・・・・勝手にしろ」
ミュウツー「ふん・・・ならば掛かってくるが良い、私は・・・私は最強を目指し生み出された存在だ。
      貴様等、下等な生物共如きに・・・この私が、敗北するはずがない・・・!!」


腕を押さえつけていたPSIをESPを一気に噴出して無理矢理に剥がすと、その場からテレポートで姿を消す。
次はどこに来るのか、とメンバー達が警戒しながら辺りを見回すと、ピチューの背後にミュウツーの姿が現れた。


ピチュー「うゎ・・・!?」
ミュウツー「手負いの貴様等と、最強の遺伝子を組み込まれた私。
      加えて私は無傷、勝負は・・・見えているようなものだろう?」
ドンキー「はッ・・・どうだかな、やってみないと解らねぇぜ!!」
ミュウツー「むうッ!?」


ピチューに手をかけようとしたミュウツーの首に豪腕が回され、思い切り後ろへ引き寄せられる。
そのまま勢いに任せてドンキーがミュウツーを振り回して、後方へと投げ飛ばした。
投げ飛ばされた先には、手先に魔力を込めて、身構えたゼルダが。


ゼルダ「っはぁあああ!!」
ミュウツー「ぐむぉおおおおおッ!!」


解き放たれた魔力の波に吹き飛ばされて初めてミュウツーが悲鳴を上げた。
床に叩きつけられる直前に着地受身を取ったミュウツーが、起き上がる際の反動で一気に空中へ舞い上がる。


ミュウツー「ぐっ・・・ふっ、ふふふっ。驚いた。流石はマスターハンド様、クレイジーハンド様を退けた者達だ・・・
      ヨッシーやサムス、ピーチ如きなどとは比べ物にならないな・・・?」
ドンキー「・・・てめえ、まさか・・・!?」
ミュウツー「そうだ・・・三人とも、私がそのくだらない一生に幕を下ろしてやった」
ロイ「お前ッ・・・!よくもッ・・・!」


紫色の眼光がメンバー達を見下す。
躊躇せずに仲間を殺す、仲間。誰しもが彼に恐怖を覚えただろう。
しかし一人、ミュウツーの述べた事に不信感を覚えた者が居た。


ネス「・・・じゃあ、その三人はウォッチが正気に戻してたって事?」
ポポ「あ・・・確かにそれはおかしいね・・・ウォッチはマリオ達三人が向こうに行って持ち堪えられなくなっちゃった訳だし・・・」
ネス「いや、それはまだウォッチが善戦してヨッシー達を正気に戻したって事で説明できる。
   問題は、何でその三人が一人もこっちに来ない内にやられたのかって事。
   サムスの判断力、ヨッシーの突破力、ピーチの多彩な能力があれば、
   一人くらいはミュウツーや他のメンバーを掻い潜ってこっちに来る事が出来たはず」


ミュウツーを見据えながらネスが言った。
ふっ、と小さく笑ってミュウツーがネスの事を空中から睨み返す。


ミュウツー「所詮は子供の理論、推測の域を出ていない。その上間違いだらけだ。
      真実も、己の運命をも知らずに、ただ正義ぶって最も正しい事をしている我々と敵対する・・・
      滑稽すぎて笑いがこみ上げてくるな・・・?」
      

そう言ってミュウツーが右腕を掲げ、そして勢い良く振り下ろす。
ネスの足元が突如発生した紫の爆発で打ち砕かれる。煙が晴れるとそこにネスの姿はない。
彼は愛用のバットを片手に、自らをPSIで浮遊させて空中のミュウツーへと向かっていた。


ネス「間違ってたんならもう訂正はしない。だったら君を正気に戻すだけ、少しの間眠ってもらうよっ!」
ミュウツー「愚かな!!」


叫んで、バットを両手で持ち直して大きく振り上げるネス。
両手が上がった事でネスの胴体に隙を見出したミュウツーが素早く掌にESPを収束させ、解き放とうとする。
突然、発生した稲妻がミュウツーを貫いた。──下を見なくても解る。ピチューの援護だ。
不意の攻撃にダメージを喰らい、怯んだミュウツーの脳天にネスがバットを振り下ろした。


ミュウツー「グッ・・・あ、何故・・・・だぁ・・・!!」


頭部に走った重い衝撃に顔をしかめながらミュウツーが床へ叩きつけられた。
ふわりと着地したネスが笑みを浮かべながら、近くで荒い息遣いをするピチューに手を握って親指を上へ突き立てて見せた。
力を制御しきれない電撃を、一度倒れてからも何発も撃ち続けて体力がまたなくなって来てしまったのか。
出血を止める為の応急処置である氷が彼の耳のあった場所に凍傷を負わせてしまっているのか。
それでもピチューはやや辛そうに顔を引きつらせながらも、ネスに笑みを浮かべ返してくれた。


ミュウツー「・・・っく、お遊びは、終わりだッ!!」
ネス「うわあああッ!?」
ピチュー「ぐぅっ!」


気の緩みかけた二人の間でミュウツーが叫ぶと、見えない衝撃が二人を襲い、吹き飛ばされる。
立ち上がったミュウツーが自身をESPで浮かし、床から足を放して低空飛行となる。
そのまま辺りを睨みつけながら見渡し、自分を囲むメンバー達を確認すると、
腰を捻って腰の辺りに腕を落とし、無言で両手の間に黒く、禍々しいESPを集め始めた。


ロイ「あの構え・・・シャドーボールを撃つ気だ」
ルイージ「・・・だったら、完全にシャドーボールが形成される前に、僕が・・・!」


そう言い残すと、真正面からルイージがミュウツーへ突っ込んでいった。
どんどん迫り来るルイージを目の前にしても、ミュウツーはシャドーボールを形成するのを中断しようとはしない。
不意に、ルイージとミュウツーの視線が合った瞬間、ミュウツーの紫の眼光が妖しく輝く。
するとルイージの方が走るのを中断し、その場に立ち尽くして大きな隙を晒し出した。
ミュウツーの技の一つ、かなしばりを受けたのだ。


ミュウツー「消し飛べ・・・・・シャドー・・・ボールッ!」


ついに完成されたその巨大なESPの集合体を、金縛りにかかって動けないルイージ目掛けて撃ち出した。
先のシャドーマシンガンで使用された小型のシャドーボールの比ではない。
喰らえば重傷を負うのは明確。そうなれば金縛りが解けた後も動く事さえままならない。


ゼルダ「早く・・・彼を助けなければ!」
ガノンドロフ「リンクと同じ緑だからといって焦る必要はないだろう。よく見ろ」
ゼルダ「・・・・!?」


魔法を放とうと手を掲げるゼルダをガノンドロフが制止する。
言われた通りルイージとミュウツーを見やると両目が驚きに見開かれた。
彼女の視線に映るミュウツーが口元に笑みを浮かべるが、次の瞬間その表情は憎しみに満ちたそれに戻る事となる。
ルイージとシャドーボールの間に赤毛の剣士が割って入り、自身の身体とは少々不釣合いな剣でシャドーボールを受け流す。
狙いとは全く違う方向へ飛んでゆくシャドーボール。
それだけではなく、受け流した勢いに身を任せてミュウツーを斬りつけた。
一閃の赤い線がミュウツーの腹に引かれ、そこから絶えず血が流れ出してゆく。


ミュウツー「ぐ・・・むう・・・・カウン・・・ター・・・・だと・・・!」
ロイ「僕達二人同士の作戦だったわけさ。彼が威力の高い攻撃を自分に撃たせて君に隙をつくらせるって言ったんだ」
ルイージ「要するに・・・囮作戦って訳だよ」
ミュウツー「小賢しい事を・・・!くだらない・・・小手先で、小さな傷を何度私に負わせようが、無駄な事だ・・・!」


言いながら、ロイの残した傷口に手を添える。
眩い光が輝いたかと思うと、ミュウツーが傷口から手を放すと、完全に傷は塞がっていた。


ミュウツー「元々この身体に備わる自己再生能力だ、貴様等如きに私は引けは取らん」
ロイ「なんだっ・・・て・・・!?」
ミュウツー「理解できたのならば早々に死ぬが良い!!」


殺気を際立たせたミュウツーの尾が、凄まじい速度でロイの肩へ伸びた。
それに気づくよりも早く、マスターハンドに開けられた傷口に紫の尾が捻り込まれる。
強烈な痛みに悲鳴を上げるロイを嘲笑うように、傷口へ侵入した尾が狭まった傷口を突き破って肩を貫通する。
その状態のまま、ミュウツーが己の全身から青白い電気を発生させる。
絶叫し、ミュウツーの攻撃から数秒の内に気を失ったロイの身体をESPで押さえつけ、貫通させた尾を思い切り持ち上げた。
耐え切れずにロイの肩は砕け散り、骨や肉の破片が血しぶきと共にほとばしる。


ミュウツー「大量の出血によってじきに死ぬ。愚か者には丁度良い・・・」


尾を二度三度振るって、纏わりついた鮮血を落としながら放たれたミュウツーの言葉に全員が恐怖する。
ロイの肩を砕くまでに五秒もかかっていない。
感情と言うのは、生き物をここまで変えてしまうものだというのか。
ぐったりと横たわったロイを助けに行く暇さえミュウツーは与えてくれなかった。
近くで目の前の惨劇にただ立ち尽くしていたルイージの頭上へとミュウツーが飛ぶ。


ミュウツー「これで・・・五人目だ!!」
ルイージ「う・・・うわあああああぁぁぁ!!!?」
ネス「ルイージッ!」


真下へ右腕を突き出したミュウツーへ、今度こそはやらせないと言わんばかりにPSIで突き飛ばそうとする。
しかし、それも空しく真横に向けられた左腕からESPの波動が解き放たれ、PSIを相殺した。
それでもミュウツーの攻撃を一瞬でも遅らせる事は出来た。ルイージを包むシールドの表面で紫の炎が弾け飛んだ。


ゼルダ「はぁッ!!」
ミュウツー「ふん・・・!」


空中で再び腕を掲げ直したミュウツー目掛けゼルダの炎魔法が飛んでゆく。
尾を振るって魔法を叩き落すと、ゼルダの背後へテレポートで回り込む。
着地と共にシャドーボムを撃つが、ゼルダもまた、フロルの風を発動してその場から姿を掻き消した。
隙を晒したミュウツーにガノンドロフの蹴りが減り込む。
ミュウツーが蹴り飛ばされた先に移動していたゼルダが稲妻の如く蹴りを繰り出してミュウツーを吹き飛ばした。


ミュウツー「攻撃が激しくなってきたな・・・仲間をやられて感情的になった証拠・・・だ・・・!
      ふっ・・・そうなれば、後はいくらでも付け入る事ができる・・・これこそが、決定的な愚者どもの弱点ッ・・・!」
ドンキー「へっ、付け入る元気もなさ気の様だがな?」
ミュウツー「所詮は愚か者の──、そう、負け犬どもの遠吠えよ・・・・・!!」


眩い、薄い紫色の光がミュウツーの身体を包み込む。
せっかく与えたダメージを癒えてゆく様を見過ごしている程メンバー達は愚かではない。
叫びながら、ルイージが腕を振り回しつつミュウツーへ突っ込んでゆく。
自己再生を一時的に中断してミュウツーがテレポートでそれを回避すると、両脇からアイスクライマーの二人が飛び掛った。


ポポ「テレポートに頼りすぎなんじゃない!?」
ナナ「少しは運動しないと身体に悪いわよ!」
ミュウツー「ぬうっ・・・!!?」


ポポのハンマーによる一打がミュウツーを襲い、体制を崩した所にナナの一撃が決まる。
その場に倒れ伏せたミュウツーに、二人がもう一撃ずつ攻撃を見舞おうとしたがやはりテレポートで姿を消してしまった。
それでも、ミュウツーが別の場所へ姿を現した時にはバットを構えたネスがすぐ目の前へと迫ってきていた。


ネス「二人の忠告通りにテレポートは控えておくんだったね・・・!」
ミュウツー「ぐぅおおおぁあッ!!?」


思い切り顔面を強打され、後方へと吹っ飛んだミュウツーがふわりと空中で一回転して体制を整える。
両手にESPを収束させると、そこから小さな塊を形成して一斉に飛ばしてくる。シャドーマシンガンだ。
だが、そのほとんどはネスのサイマグネットに吸収されていってしまった。
表情をゆがめたミュウツーが、不意に脳裏を掠めた予測に目を見開き、ネスを睨みつけながら口を開いた。


ミュウツー「なるほどな。貴様のPSIで私のテレポートする先を探り、他の者にそれを教え私を迎え撃たせるとは・・・」
ネス「バレちゃった様だね。そうだよ、テレパシー使って皆の心に直接語りかけてたのさ」
ミュウツー「小賢しい事を・・・ならば私も、貴様等の心を読めば良いだけだ・・・!!」
ネス「もっと早く気づくとは思ってたんだけど。感情を操作されてるから、冷静さをいつもより欠いてるみたいだね」
ミュウツー「黙れっ!」


叫ぶと、自身を包み込むESPを押さえつけるような形で展開する。
空中から急降下したミュウツーの頭上をピチューの放った電撃が通り過ぎた。
足をよろめかせながらも、再び狙いを定めて放電するピチュー。だが、それもまた寸での所で回避される。


ピチュー「まだ、まだぁ・・・行くぞぉっ!!」
ミュウツー「・・・・・・・」


闇雲に撒き散らした電撃はミュウツーの身体を掠める事さえも出来なかった。
激しい疲労に身体がついていけない。もう一度、放電しようと試みるが、
ついに力尽きてピチューはその場に倒れこんでしまった。


ミュウツー「・・・六人目ッ!!」
ゼルダ「させません!!」


倒れたピチューに両手を向けたミュウツーの脇腹辺りで小爆発が起こる。
ゼルダの放った魔法だと言う事は容易に予想できた。
攻撃に集中していてゼルダの思考を読む事ができなかった結果である。
横へ吹き飛ばされ、狙いのずれたESPはピチューのすぐ脇で爆発を起こした。


ドンキー「うぅおらぁああああ!!」
ルイージ「はあああああっ!!」
ミュウツー「うぐっ・・・!?」


瞬間、ミュウツーの目に飛び込んできた二人の拳がミュウツーの腹を同時に打ち据える。
一気にステージの端まで吹き飛ばされたミュウツーが、横たわったままのクレイジーハンドに背中を打ちつけた。


ネス「これで最後だッ!!!」
ミュウツー「くっ・・・その様なものっ・・・私には、通用しない!!」


全てを吹き飛ばさんと、ミュウツーに最大の隙を見出したネスは、PSIの塊をミュウツー目掛け解き放った。
負けじとミュウツーも、クレイジーハンドにもたれかかった状態で、ESPの波動を放出する。
対を成すと言われる二つの超能力が、真正面からぶつかり合った。





「マスターハンド様、クレイジーハンド様!」


超能力のぶつかり合った場所は大きく抉り取られた様な跡が残されていた。
煙が巻き起こって、視界に何も映らない。
そんな中、不意に何者かが、この事件の黒幕の名を呼びながら光の柱から姿を現した。


「ミュウツーか?・・・マスターハンド様とクレイジーハンド様は・・・・・・負けた、のか」
ミュウツー「・・・ああ。・・・残りの二匹は片付けたのか?」
「いや、まんまと逃げられた。とりあえずファルコンとカービィに手分けして探させてるが・・・
 お前の言い振りだと、こっちに逃げ込んできてるって事はないようだな」


ミュウツーと会話をしているのであろう、煙に隠れたその姿の影と声。それには、誰もが覚えのあるものだった。
最も近い位置に居たネスが、煙の途切れ目から、ついにその者の姿を目の当たりにしてしまう。


ネス「・・・そんな。嘘だ・・・よね・・・?」
ルイージ「ね・・・ネス。もしかして・・・まさか・・・」
ネス「嘘だッ!君は・・・ファルコは・・・、
   唯一、マスターハンドの支配から逃れた、『生き延びた者達』の中の一人だったはずだろ!!?」


ネスの言葉に全員が硬直した。
煙が徐々に飛散してゆく度に認めたくない現実が目の前で露になってゆく。
ブラスターの銃口をメンバー達に向けながら、ファルコが不敵に笑みを浮かべた。


ファルコ「ミュウツー。さっさとこいつ等ぶっ潰すぞ・・・。そしてマスターハンド様と、クレイジーハンド様に代わって。
     俺達が!トライフォースの所持者を探し出してやる!!」





プリン「急いで!ピカチュウが追われてるんだ!」


嗚咽交じりに声を上げて、桃色の球体は廊下を疾走してゆく。
その後をおぼつかない足取りながらも追いかけてゆく二人の人影の移動する速度が速まった。
片方は青いスーツに身を包んだ、金髪の女性と、もう片方は桃色のドレスを着用した同じ金髪の女性だ。


サムス「・・・礼を言うわ、プリン。ただ死を待つだけだった私達を、助けてくれて・・・」
プリン「どういたしまして・・・って言いたいけど、全部ピカチュウがファルコ達を引き付けてくれたおかげなんだ。
    そうじゃなかったら、アイテムの倉庫まで行って、残ってた最後の回復アイテムを集めてくるなんて出来なかったんだから」
ピーチ「・・・・・・じゃあ、ピカチュウにもお礼を言わないといけないわね」
サムス「早く彼を助けてあげないと、ありがとうの一言も言えなくなってしまうわ・・・!」


サムスとピーチは、ピカチュウとは別の方向へ逃げていったプリンの助けによって一命を取り留めていた。
生死の境を彷徨った直後の二人は到底走れそうにもなかったが、
プリンの必至な姿を見て、仲間を救うべく半壊した競技場を駆け回っていた。


プリン「・・・二人とも、ごめん。体力もほとんど残ってないのに、無理に走らせちゃって・・・」
サムス「いきなり何言い出すのよ。別にパワードスーツは壊されちゃったけど、かえって走りやすいし、大丈夫」
ピーチ「私だって、あれしきの事でへばったりはしないわよ」


二人の言葉を聞いて、プリンの表情に活力が戻ってくる。
勢い良く廊下の角を曲がると、目の前に大量の謎のザコ敵軍団が倒れていた。
その奥には崩れ落ちた壁の破片が散乱していて、マスターハンドに感情を操作されていた時に、
マルス達の仕掛けたモーションセンサー爆弾による被害だと言う事はすぐに解った。
身長のあるサムスとピーチが瓦礫の上によじ登って、その先に進む。その後をプリンが浮遊して追う。
先に二人が瓦礫の上に上り終えた後、突如として瓦礫の向こう側から聞き覚えのある叫び声が上がった。


「何で・・・何で!君達が、ここに居るのさっ!!?」
サムス「なっ・・・!!」
ピーチ「か・・・カービィッ!?」
プリン「えっ!?う、嘘・・・!?」


サムスとピーチの驚きの声。急いでプリンが瓦礫の上へ這い上がると、
確かに瓦礫の反対側にはカービィが立ち尽くして、こちらを驚愕の表情で見上げていた。
彼の目がプリンの姿を捉えると、更に目を見開いてどこか幼い声を荒げた。


カービィ「そっちに行ってたのか、プリン・・・ッ!
     ファルコにサムスとピーチは死んだって聞いてたけど・・・、君だね、その二人を生き返らせたのはッ!!!」
ピーチ「死んだ?生き返る?何言ってるのよ、私達は死んでなんかいない!
    ・・・二人とも、先に行って!私がカービィを足止めするわ!」
プリン「で、でもっ・・・!」
ピーチ「早くッ!!!」


ピーチが睨みつけるような目をしながら叫び声を上げる。
戸惑うプリンを抱え上げて、サムスがカービィを横切ってその場から走り出した。


サムス「後で助けに戻ってくるわ!」
ピーチ「平気よ、戻ってくる頃には私の勝利に終わってる!」


サムスの残していった言葉に強気な返事を返すと、ピーチは改めてカービィの事を見据える。
こちらの事をただ睨みつけているだけで、サムス達を追う様子は特に見られない。


ピーチ「・・・追わないのね?」
カービィ「この先にはファルコンが居る。それにこの中をうろついてる『結成者』に襲われたらその場でGAMEOVERさ」
ピーチ「なら、とっととあんたを倒して助けに行かないとね」
カービィ「へーえ?それじゃあ、やってみなよ!」


直後、カービィの身体が真っ赤に染め上げられる。
燃え盛る炎を身にまとって突進してくる技、バーニングだ。
向かってきた火の玉を軽い足取りで避けると、身体を取り巻く炎が消え行きつつあるカービィ目掛けフライパンを振るう。
フライパンは空しく風を切って床に金属音を響かせただけだった。
転がり回避でピーチの背後に回りこんでいたカービィが、自身の口の中へ手を突っ込んで、
自分の身長の倍以上はあるだろうハンマーを取り出したカービィが高く跳躍した。
直接ピーチにハンマーを振り下ろすのではなく、天井をハンマーで粉々に打ち砕く。
ピーチへ降り注いだ瓦礫が次々と床に落ち、派手な音をたてて砕け散る。


カービィ「ふふっ。早くも終わり・・・・・って、あれっ!?」


降り積もった瓦礫の山を見て、勝利を確信しかけたカービィの表情はすぐに強張った。
瓦礫の山の天辺が崩れ、中からフライパンを頭上に掲げたピーチが現れたからだ。
幾多の瓦礫を受け続け、もはや全く別の形に変形したフライパンをカービィ目掛けて投げつける。
舌打ちしつつ、カービィは脇へ跳んで投げつけられたフライパンを回避した。


カービィ「そう簡単にはいかないか、やっぱり」
ピーチ「当然よ。私はあなたを足止めする為にここに残ったんだもの。・・・・いいえ、勝つ為にここに残ったのよ!」
カービィ「うるさいな・・・!」


常にやわらかい顔をしている彼が、ここまで表情を歪めさせると言うのはピーチにとっても初めて見るものだった。
ハンマーを口の中へしまい込んで、次に取り出した小型の拳銃を小さな手で握り締め、その銃口を向けてくる。


カービィ「勝つのは、僕だ!!」
ピーチ「くっ・・・!」


一発、二発、三発。連続で発射された緑色のエネルギー弾はそれぞれ真っ直ぐな軌道を描いてピーチに向かって来る。
横に並ぶ形で飛来した銃弾を、脇へ転がり、何とか全て回避した。
しかし、それで終わらせてくれる程甘くはない。予めピーチの避ける場所を予想していたのだろうか。
四発目の弾丸は、ピーチのすぐ目の前まで迫っていた。


ピーチ「うッ・・・あああああぁぁ!!!」
カービィ「ははっ・・・あはははっ。これで死んでくれなかったのはちょっとだけ残念だけど・・・
     まあ、もう腕に走る痛みのせいで動く事もままならない様だね?」


カービィの銃弾は、咄嗟に突き出したピーチの左腕の間接を撃ち抜いていた。
悲鳴を上げてピーチが腕を押さえながらその場に崩れ落ちてしまう。
その様を嘲笑いながら、カービィがピーチの脳天に狙いを定める・・・。


カービィ「今度こそ・・・あの世に逝くといいさぁ!!」


倒れ伏せるピーチ目掛け、緑色の銃弾が発射される。
ここまでか、とピーチが最後に受けるであろう痛みと、悔しさを堪える為に、目を閉じ歯を食いしばった。


「姫様は、殺させないッ!!」
カービィ「・・・ッ!?」
ピーチ「え・・・・!?」


突如響いたその声に、ピーチが顔を上げる。カービィはその存在を凝視していた。
二人の間に立っていたのは、キノコのような頭をした、二頭身程の、人の形をした生き物。
ピーチの身代わりに銃弾を喰らったのは、ピーチがカウンター技に用いる彼女の家臣、キノピオだった。


キノピオ「や・・・やっ・・・と・・・正気に戻ってくれて。私は、うれ、しい・・・です、よ・・・姫・・・さ・・・ま・・・・・」
ピーチ「キノピオッ!?何で・・・何でッ!?あ、あなたは・・・さっきのサムス達との戦いで、
    大乱闘じゃないのに私が無理に盾にしたせいで、大怪我を負ってたでしょう!?なのにッ!!どうして!!」
キノピオ「姫を・・・守り・・・・・・・なら・・・・・・もう・・・・い残す・・・・はな・・・・です・・・・・・・よか・・・・った・・・」
ピーチ「キノピオ!!」


自分の護衛として特殊な訓練を受けてきていた、と聞いていた。
だからこそ、サムスのチャージショットでさえも大乱闘外で受けても何とか持っていたのだ。
普通のキノピオでは、そこまでの生命力を持つのは不可能に等しい事だった。
だというのに、自分の護衛をする為だけにそこまでの力を得る程の訓練を受けてきて、最後までついて来てくれた彼を。
自分のせいで、失った。


ピーチ「・・・・・・・・カービィ・・・!!!」
カービィ「・・・・・っ!な、何さ・・・?僕は、僕のするべき事をしただけだ!」


彼女の中に満ちていた悲しみが、全て怒りと憎しみに転化される。
マスターハンドに感情を操られていた時とは違う、怒りと憎しみに──。
ボロボロの遺体をそっと床に横たわらせると、ゆっくりと立ち上がり、カービィを睨みつける。


カービィ「は・・・はははは。嘘だよね?何で君は立てる?
     左手には激痛が走っているのに。家臣が死んで悲しんでいるはずなのに。何で僕に恐怖を感じないのさ!?」
ピーチ「・・・許さない・・・ッ!!!!」
カービィ「そ・・・そっちがその気なら・・・っ!」


残りの弾の少ないレイガンを口の中に放り込み、
新たにカービィは、緑色で縁取られた重量感のあるブロックを取り出した。
更にもう片方の手にはウサギの耳のようなものが生やされたヘアバンド。


カービィ「メタルブロックと、うさぎずきんだよ・・・!これで僕は、もっともっと、強くなる!!」
ピーチ「・・・・・・」


笑いながら、カービィが身体をメタル化させるアイテム、メタルブロックを叩いた。
桃色の小さな身体が重々しい光を放つ、銀色の身体へと変化する。
そして頭に二倍の速度で動き回る事が可能となるうさぎずきんを被って、
口の中から二刀のビームソードを取り出して両手に持ち、ピーチを威嚇する。


ピーチ「・・・・だから?」
カービィ「・・・?」
ピーチ「だからどうしたって言うのよッ!!!」


抜き放ったゴルフクラブがカービィの右手が持っていたビームソードを叩き落す。
驚愕したままのカービィにもう一打を加えようとするも、素早く振るわれた左手のビームソードがそれを防いだ。
お互いの武器が弾き飛ばし合い、距離をとった二人が再び同時に武器を振るった。
ビームソードとゴルフクラブが交差し、火花が散る。


ピーチ「はあああああッ!!」
カービィ「ッ・・・!」


次に仕掛けたのはピーチだった。
思い切り振り下ろしたゴルフクラブが、左手に持ったままのビームソードに受け止められる。
高熱圧の刃と鉄が直に触れ合っている為、ゴルフクラブが徐々に溶け始めて来る。
それでも、ゴルフクラブを押し付ける力をピーチは一切弱めようとはしなかった。


カービィ「アハハハッ。 無駄ナ事ヲスルネ・・・。 ソンナ武器ジャ 僕ニハ勝ツナンテ事ハ 出来ナイヨ・・・!」


余裕だと言わんばかりに重力感ある言葉が発せられた。
左手で持っていたビームソードに右手を添えて、押し付けられるゴルフクラブに押し上げようと力を込める。
ゴルフクラブが溶けて、熱を帯びた溶鉄が滴り落ちる。


ピーチ「ぐっ・・・ううっ・・・・まだ・・・まだぁ!」
カービィ「シツコイナァ・・・ モウソロソロ 諦メタラドウダイ!?」


嘲るようにカービィが言い放つ。
しかし、ピーチの怒り狂った表情は、少しずつ落ち着きを取り戻していた。
そして銀色に光る球体を見据えながら、かすかな笑みを浮かべて、口を開く。


ピーチ「・・・・・・そろそろ。そうよ、もうそろそろね・・・」
カービィ「はァ?何が・・・・・・・・エっ!?・・・アれっ!?め、メタル化が解けッ・・・!!」
ピーチ「っだああああああああああ!!!!」


──メタルブロックの効果切れ。相手の攻撃を押さえつけながらその時までの時間を稼いでいたのだ。
慌てる桃色の球体に隙を見出し、思い切り武器の重なる下から足蹴りを喰らわせる。
後方へ倒れこんだカービィに、かなりの熱を帯びて溶け掛かったゴルフクラブを全力で打ち据えた。


カービィ「ぎゃああぁぁああぁああああぁぁぁああッ!!!!!」


絶叫とともにゴルフクラブは半ばから折れ飛び、カービィの身体には痛々しい火傷が残される。
そのまま大きく吹っ飛んだカービィが転がっていた大き目の瓦礫に身体を打ちつけ、ぐったりとその場に横たわった。


ピーチ「はぁっ・・・はぁっ。仇は・・・取ったわよ、キノピオ・・・。
    それと・・・ごめんね、カービィ。後でマリオに頼んで・・・介護、してあげるから・・・・・」
カービィ「・・・・・・・・」


よろよろと、気を失ったのであろうカービィの脇を通り過ぎて廊下を進んでゆくピーチ。
・・・早く、サムスとプリンに追いつかなくては。
荒い息遣いながらも、気を奮い立たせて歩を早める。


カービィ「・・・・・・・・・・こ・・・んな、所・・・・・で・・・・負け・・・・て、溜まるかぁッ・・・!」
ピーチ「・・・・・・え?!」
カービィ「道連れだぁ!!!」


不意に動き出したカービィは、狂ったように叫び声を上げると、極限まで口を開く。
同時に、いくつもの黒い球体が吐き出される。
無造作に転がった五体のボム兵へと、炎を纏ったカービィが笑いながら突進した。





プリン「今の、音・・・ぴ、ピーチ達の居る方向から聞こえてきたよね・・・!?」
サムス「・・・・・っ・・・・気のせい、よっ・・・は、早く・・・早くピカチュウを見つけましょう・・・・!」
プリン「だ・・・だよね、そんなの・・・有り得ないよねっ・・・」


走り続けていた二人は、不意に後方で轟いた凄まじい轟音に焦っていた。
ピーチに何かあったのではないか──、そう考えるだけで冷静さが失われてゆく。
それでもサムスはすぐさまその可能性を否定する。そうだ、きっとただの空耳だ──。
だが、そんな儚い希望さえも次の瞬間、目の前の曲がり角から姿を現した存在によって、打ち砕かれる事となる。


「お前等は・・・!プリンの方はともかく、何故サムスが・・・!?」
サムス「ファルコン・・・・!?」
ファルコン「・・・成る程な、今の音はカービィの自爆覚悟の道連れだった訳か・・・
      お前等の面子からしてそうとしか思えねえ、サムスがプリンと居るって事は、ピーチもまだ生き残っていた・・・
      大方カービィと出くわして、ピーチの奴がカービィを足止めする為にあっちで戦っていたって所だな?」


ファルコンの言う事は寸分違わず正しかった。
その事を理解してしまったからこそ、サムスとプリンは否定の言葉を上げていた。


サムス「自爆なんて・・・嘘よッ!」
プリン「道連れだって!?そ、そんな事・・・ある訳がないっ!」
ファルコン「・・・カービィは俺とアイテム倉庫を漁っていた。
      その時に、万が一のときの為・・・とか言っていくつかボム兵を吸い込んでいた。
      今この競技場であんな爆音を轟かせられる奴と言ったら、あいつと・・・『結成者』位しか居ねえんだよ」


どこか暗い声で、ファルコンがそう言った。
・・・二人とも、解っていた。あの時のピーチと同じだ。ただ、認めたくないだけなのだ。
無言で拳銃をホルスターから抜いたサムスが、感情も何も篭っていない眼差しでファルコンを見つめながら、口を開いた。


サムス「プリン。・・・・先に行きなさい」
プリン「・・・・・・・・。・・・解った」
ファルコン「・・・・・・・・・・・」


すぐ脇を駆けてゆくプリンには、カービィ同様目もくれない。
無言のまま、ファルコンが懐からビームソードを抜いて、剣先をサムスに向ける。


ファルコン「・・・・はッ!!」
サムス「っく・・・!!」


床を蹴ったファルコンが先手を打ってくる。
思い切り振るわれた剣先から脇へ跳んで逃れると、ファルコンに狙いを定めて銃の引き金を引く。
撃ち出された光線をファルコンが身を翻して回避して、サムス目掛け思い切りビームソードを振り落ろしてきた。


サムス「いぃやッ!!」
ファルコン「むぉ・・・!?」


ファルコンの持っていたビームソードが宙を舞う。
下からビームソードを叩き上げたもの、それはサムスの構える銃から伸びている。
それは、エネルギー体で形成されていて、鞭のような形状をしたものだった。


サムス「初めて見せる事になるわね・・・パワードスーツが無い状態で敵に襲われた時の為の、護身用の銃なんだけど」


武器を失ったファルコンに、サムスは鞭を床に強かに打ち付けながら、歩み寄りつつ言った。


サムス「結構使い勝手が良いからね。スーツが無くたって、むしろ動きやすくて戦いやすいかもしれない」
ファルコン「・・・なかなかの、兵器を隠し持ってたもんじゃねえか。スーツが無くても、武器さえありゃぁ鬼に金棒って所か」
サムス「褒め言葉として受け取っておくわ」


舞い上がったビームソードが床に落ちたと同時にサムスは鞭を構えて走り出した。
瞬時に伸びた鞭の先端が突き出されたファルコンの拳を叩き落す。
隙の出来た腹にサムス渾身の蹴りが決まり、ファルコンは呻きながら仰向けに倒れこんだ。
倒れこんだ彼は、激しく咳き込み、サムスの事を見つめながら苦しそうに口を開く。


ファルコン「く、あ・・・流石・・・だな?お前如きに、こうも・・・簡単に負けるようじゃあ、
      俺一人の力で結成者の野朗に勝つなんて・・・夢のまた・・・・夢、だ・・・へ、へへっ・・・」
サムス「・・・・ファルコン?」
ファルコン「はは・・・まあ、おかしいとは思うよな・・・。たった・・・これだけの攻防でっ、もう・・・戦闘不能なんてよ。
      ・・・さ、サムス・・・気をつけろ、結成者・・・とだけ・・・は、絶対に、戦っちゃいけねえ・・・・」


それだけ言うと、ファルコンは完全に事切れた。
──間違いない。ファルコンは正気に戻っていた。
そして彼は、無謀にもこのスマッシュブラザーズの結成者に戦いを挑んでいたのだ。
恐るべき圧倒的力差を見せ付けられ、ファルコンは戦意喪失して正気へと戻ったのだろうか?
彼も、ピーチや私達と同じ様に自分の犯した過ちを認めたくないだけだったのかもしれない。
戦意は完全に失せているはずなのに、無理に私へ攻撃を仕掛けてきた。
考えてみれば、必殺技のファルコンパンチや、ファルコンキック等も使おうとしてこなかった・・・。


サムス「やっぱり。・・・前からしかファルコンを見てなかったから気がつかなかったけど。
    後頭部や背中に・・・無数の傷がある」


死体を観察し自分の推測が正しい事を知ると、ファルコンの腰に何か筒のような物が提げられているのを発見する。
私の銃と、この武器を併用すればかなりの戦力を誇る事が出来るかもしれない──。
アイテムの一つ、スーパースコープを抜き取り、ファルコンを床に寝かせて立ち上がると、静かに後ろを振り返る。
目の前には、にやりと表情の無い顔で口元だけを吊り上げた、結成者の姿があった。


サムス「悪いわね、ファルコン。あなたの忠告、無視させてもらう事にするわ」





ポポ「ねえ、何で!?どうしてさ、ファルコっ!?」
ファルコ「決まってんだろォ・・・?てめえ等ザコ共にほとほと呆れ果てちまったからよ、
     マスターハンド様達についた方が良いと考えての事だぁ!」


悲痛なポポの訴えに、ファルコは狂った様に叫び、笑いながらブラスターの引き金を何度も引く。
真っ直ぐポポへと向かっていったいくつもの真紅の光線が、ポポの突き出したハンマーによって打ち消された。


ガノンドロフ「落ち着け、奴もまた一度死んだ身。マスターハンドに死体のまま連れ去られ、
       生き返らされた後、そのまま感情操作を受けたと見て間違いない」
ポポ「そんな・・・そんな事って」
ミュウツー「喰らえ・・・!」


絶望の表情でファルコの顔を見た瞬間、
別の方向からミュウツーの放ったシャドーボールが襲い掛かってくる。
迫り来るESPの前にゼルダが躍り出て、自身の周りに魔力の障壁を生み出してシャドーボールを弾き飛ばした。
跳ね返されたシャドーボールを身を宙に浮かして回避すると、空中へ浮かんだミュウツーが両手を構える。
瞬間、無数の小さなシャドーボールが両手から撃ち出されてきた。・・・得意のシャドーマシンガンだ。
空中からのあの攻撃は避け切る事は出来ない。ゼルダのネールの愛の持続時間はあの攻撃の続く時間よりも短い。
僕のPSIも先のミュウツーのESPとの衝突で尽きてしまった。──だったら。


ネス「みんな、シールドで防いで!」
ルイージ「で、でも、それじゃシールドブレイクするかもしれないよ・・・!?」
ミュウツー「ふん、PSIが尽きたか。未熟な者よ、我がESPの残量はまだ半分以上は残っていると言うのに」
ファルコ「ま、心配は無用だ、ブレイクさせんのは俺の役目だからな・・・!」


ネスの言葉に従って全員がシールドを展開するも、
徐々にミュウツーの放つシャドーボールがシールドを削り取ってゆく。
そして床を蹴ってファルコが最もシールドを多く削り取られていたルイージへ蹴りかかる。
だがファルコの足はルイージのシールドに到達する前に、ネスの振るったバットによって受け止められていた。


ファルコ「てめえ、ダメージ覚悟でシールドを解きやがったな・・・!?」
ネス「当然。PSIの使えない僕は戦力外もいい所だからね。最後にみんなに貢献してあげるのさ!」
ファルコ「がッ!」


残る力を振り絞ってファルコをバットで殴り飛ばした。
事態を察したミュウツーがネスに集中してシャドーマシンガンを撃ってくる。
身を翻して先頭のシャドーボールの群れを回避すると、床に身体を打ちつけたファルコの胸倉を掴み上げる。
全力でファルコを、迫り来るシャドーボールの大群目掛けて投げつけた。


ファルコ「ぐぅおぉおおぁああああッ!!?」
ミュウツー「くっ・・・よもやその様な手を使うとは」


次々とシャドーボールがファルコに激突し、紫の炎を吹き上げて炎上する。
苦虫を噛み潰したような顔でミュウツーがESPを放出するのをやめると同時に、背後に鋭い気配を感じた。
しかし反応するよりも早く、その気配は高熱を纏った一閃をミュウツーの背中に残した。
鮮血を空中に残しながら落下してゆく中、ミュウツーが自分の居た場所を凝視する。
そこには誰も居ない。床に身体を打ちつけ、ゆっくりと起き上がりながら辺りを見回した。


ミュウツー「な・・・んだとっ?!何故、貴様が立っている・・・っ!!」
ロイ「は・・・はは、まだ・・・死ぬわけには・・・いかないからね・・・ネスと同じ・・・最後にみんなの役に立ってみせるんだ・・・!」


信じられない光景が目に飛び込んできて、ミュウツーは動揺を隠せなかった。
先程肩を打ち砕いて大量出血し、もはや動く事もままならず、ただ死を待つのみとなった存在が目の前に居るのだから。
ミュウツーを斬りつけた剣を支えに、何とか立っている赤毛の剣士はきっ、とミュウツーを睨みつける。


ロイ「はぁあああああっ!!」
ミュウツー「愚かな・・・!」


迎撃しようと両腕を振り上げるミュウツー。
それでも尚、ロイは臆する事なく剣を構え、ミュウツーを見据えながら迫ってくる。
二人の距離が狭まり、ミュウツーが両手からESPを発しようとした瞬間だった。
ミュウツーの両腕が凍りつき、放とうとしたESPは凍結した掌の中で弱弱しくくすぶった。


ミュウツー「こ、これはッ・・・!?」
ポポ「冷静さを欠いてるから心を読む所か、周りに気を配る事さえ忘れてるよ、ミュウツー!」
ナナ「さあ、ロイ・・・!とどめをっ!!」
ロイ「ありがとう、二人とも・・・!」


床を蹴り、跳躍したロイが勢い良く剣を振り下ろす。
火炎を纏った最後の一撃は、ミュウツーの脳天から胸部まで到達した。


ミュウツー「そ、んな・・・バカ・・・・・なッ・・・・・!!!」


紫の眼の光が途切れ、大量の鮮血と共にミュウツーが崩れ落ちた。
それを見届けると、ロイもまた、その場に崩れ落ちる。
既に彼の顔は青い。無理もない、肩からあれだけの出血をしていたのだから。


ナナ「ロイ!!」
ロイ「あ、後は・・・頼む。必ず、誰もかも、元通りに生き返らせてくれ・・・・・そしたら・・・みんなで・・・・・・・」
ポポ「解ってる・・・解ってるさ、必ずみんな、助けてあげるから・・・待っててね・・・!」


途切れ途切れにそう言い残すと、ロイは笑顔のまま息を引き取った。
腕で目元をこすりながら屈み込んでいたポポが立ち上がると、続いてナナも立ち上がり、ファルコの事を見据える。


ファルコ「クソ共があっ、この俺に、よくも傷をつけやがったなぁ!!?」
ネス「ぐあ・・・!」
ドンキー「がぁああああっ!」
ルイージ「ね、ネスっ、ドンキーッ!!」
ガノンドロフ「くっ、素早い奴め・・・!」


力強く連続で蹴り飛ばされたネスとドンキーが倒れ伏せる。
二人のほかに、ルイージとガノンドロフが戦闘に加わっているが、あまり戦況は良くない。
後方では気を失っているピチューを庇いながら、ゼルダがファルコの隙を窺っている。
二人は無言で頷き合うと、ハンマーを構えて、ファルコの元へと走り出した。


ポポ「たぁーっ!!」
ナナ「えぇいっ!!」
ファルコ「っ!ちくしょうがぁ!!」


背後から振り下ろされたハンマーを脇へ転がり、回避するファルコ。
まさか、この戦闘の中、ハンマーが風を切る音だけで攻撃が来るのを察知したのか──。
驚く二人の内、ポポの方に狙いをつけて、転がりながらファルコがブラスターの銃口から光線を発射する。
咄嗟にハンマーで光線を防ぐも、次の瞬間には二人同時にファルコビジョンによってはね飛ばされていた。


ガノンドロフ「はぁあッ!!!」
ファルコ「うおっとぉ!?あたらねえなぁ〜、そんな鈍い攻撃よぉっ!!」


攻撃をした直後だと言うのに、突き出されたガノンドロフの豪腕をいとも簡単にかわすファルコ。
そのまま大きくステップを踏んでガノンドロフの背後へ回り込むと、素早く回し蹴りを喰らわせる。
今度こそ隙を見出し、背後からドンキーが両手の指を組んで、思い切りファルコの脳天に振り下ろす。


ファルコ「遅ぇ攻撃だなっ!?」
ドンキー「うごッ・・・・!!?」
ルイージ「くっそーー!!」


ドンキーの渾身の攻撃をも回避され、ファルコの鋭い蹴りが腹部に入る。
続いてルイージがファルコへと殴りかかるが、闇雲な一撃はその場で回避されてしまった。
大きな隙を作ってしまったルイージを後方へと蹴り飛ばすと、目の前で立ち上がったばかりのネスを睨みつける。


ファルコ「さっきのお返しだぁ・・・!!ファイヤーーーーッ!!!」
ネス「っ・・・・!!!」


燃え盛る火炎を身に纏い、凄まじい速度でネスに突っ込むファルコ。
対してネスは迫り来る炎の弾丸を睨みつけたまま動かない・・・!


ゼルダ「な・・・、防御もしないで、一体どうするつもりです!?」
ファルコ「ひゃはははぁっ、どうせもう諦めたんだろうが!!?」
ネス「・・・・・・・どうかな?」


ファルコがネスに激突する寸前に、ネスはふっと不敵な笑みを浮かべた。
炎の弾丸はネスの腹に減り込み、頭を密着させたままネスを吹き飛ばす。
炎と勢いが弱まり、二人の様子が窺える状態となった時、メンバー全員が驚愕した。
ネスは、身体中に大火傷を負い、それでもしっかりと両手でファルコの事を受け止めていたのだ。


ネス「今だよ・・・、誰か、僕ごとファルコを撃って!!」
ポポ「なっ、・・・!!?」
ファルコ「ん・・・だ、とぉ・・・!?」


痛みか苦しみか。目元に涙を溜めたネスが、大声を張り上げる。
明らかに戸惑うメンバー達。それは、ファルコも同様で、必至にネスの腕から逃れようともがく。
その度ネスの黒焦げの皮膚がボロボロと崩れ、中から真っ赤な筋肉が露出してゆく。
絶叫に近い声で、ネスがまた叫ぶ。


ネス「早く!!これで・・・これでッ、みんな生き返らせられるかもしれないんだろッ!!!?」
ガノンドロフ「・・・・・、はぁああああぁぁあああ・・・・!!!」
ルイージ「・・・!!」
ファルコ「──ッ!!」


まるで見かねた、と言うかの様に。
ガノンドロフは二人の元へ歩み寄ると、闇を収束させた拳を思い切り引いた。


ネス「ありがとう・・・みんな。また・・・会おう・・・」
ガノンドロフ「魔人拳!!!!!」
ファルコ「うぐぅぁああぁああぁぁあああぁぁああああッ!!!!」


解き放たれたガノンドロフの必殺技は、ネスごとファルコを貫いた。
その衝撃音は、ネスの最後の呟きも、ファルコの悲鳴さえも掻き消した。





ガノンドロフ「・・・・・・・・・」
ゼルダ「・・・・・・・・」
ガノンドロフ「・・・・・・どういう事だ・・・?」


辺りはいつの間にか静寂が包み込んでいた。
・・・肩で息をするガノンドロフの目の前には、無残なネスの死体。
それ以外には何も無い。ファルコは、どうなった。まさか、消し飛んだのか?
いや、そんなはずはない。ならば、どこかへ吹っ飛んだのか。だが、それでは何故ネスはここに倒れている・・・?
ファルコの行方を知るべく、ガノンドロフが一歩、前に踏み出した瞬間──。


「・・・・おっと。そこまでだ」
ドンキー「・・・・なっ・・・!?そ、その声は・・・ファルコ・・・っ!?」
ナナ「ど・・・どこに居るの!?」
ファルコ「くくっ・・・ここに居るぜ。見てみなっ!」
ゼルダ「・・・・え・・・!?」


その声は、ゼルダのすぐ後ろから聞こえてきた。
驚いて振り向くと、信じがたい事に、気を失っていたピチューがぐったりとうな垂れたまま宙に浮かんでいる。
不意に、すうっとピチューが浮かんでいた周りの空間が色彩を持ってゆく。
姿を現したのは、ピチューを片腕で抱え、もう一方の手に持つブラスターをピチューの頭に突きつけている、ファルコだった。


ファルコ「どうだ?ぶっ倒れたと同時に隠し持ってたスパイクロールで姿を消してここまで回り込んだんだ、
     こういう陰密行動は元々フォックスの奴が得意としてるんだが、案外俺でも楽に出来るもんなんだなぁ・・・?!」
ルイージ「ひっ・・・卑怯だぞ、人質なんてっ・・・!マスターハンド達と同じじゃないか!!」
ファルコ「そいつぁ最高の褒め言葉だ、何たってマスターハンド様達は俺が最も尊ぶべき存在であって──」


ボロボロのファルコが嘲笑いながら言葉を続けようとした時だった。
突然、ファルコの真後ろに、光の柱が現れたのだ。


「醜く、見苦しい戦法しか取れない者・・・。私のスマッシュブラザーズにその様な者は、要らない」


光の柱が消えると同時に、血しぶきが上がった。





・・・足が地面を踏みしめる度に、ぴしゃりと泥水がはねる。
どの位走り続けたのだろうか。
頭が痛い。視界が回る。足の感覚がなくなってきた。
それでも、決して足を止める事はしなかった。
荒い息遣いのままふと見上げると、地平線の向こうに見慣れた建物が建っている。


「僕は・・・一体、何をしていたんだ・・・っ!」


己の愚かさを呪いながら呟くと同時に、口から血が流れ出る。
ついにバランスを崩してその場に片膝をついてしまった。
そのまま激しく咳き込むと、地面に赤黒い液体が染み込み始める。


「みんな・・・待っていてくれ。途中で逃げ出した僕には、それ相応の償いをする必要があるんだ・・・」


目元に涙を溜めながら、よろりと立ち上がる。
一呼吸置いて、再び競技場を見据えると、己の血の混ざった泥水を踏みしめ、走り出した。








続く





音楽提供:3104式






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