サムス「っ、・・・・・・」 ガシャリ、と音をたててサムスがその場に倒れ伏せる。 その部屋、実況室は酷い荒れ様だった。計器類は全て破壊され、火を上げている。 壁には所々に穴が開き、散らばった瓦礫の数も半端ではなかった。 パワードスーツもほとんど使い物にならないくらいにまで破壊され、彼女の顔が見えるほど。 しかし、サムスは微動だにしない。 ミュウツー「私は私の役目を果たす・・・永遠に眠れ」 そう言うと、ミュウツーは倒れているサムスとピーチに背を向けて、その場を後にした。 二十四話 最終決戦 ─神になれなかった者達─ マスターハンド「ふっ・・・くくっ・・・・、はぁはははははははッ!!!愚か者どもが・・・粋がった所でぇッ!!」 クレイジーハンド「俺達兄弟に勝てると思うなよ・・・!ふふ、はははッ!ひゃはぁーッはッはッはッ!!!」 不敵に笑い声を上げると、両者とも一気にスマッシュブラザーズへ襲い掛かった。 巨大な二つの握り拳となった彼等が空中から急降下、下に居るメンバー達をえぐる様に突進してくる。 リンク「ここは私達がっ!マルスさん、ロイさん、共に行きましょう!!」 マルス「分かった!」 ロイ「はああああぁぁぁ!!」 それに臆する事なく、リンクを先頭に、マルスとロイがそれぞれの剣を構えて立ち向かう。 両手を三人が他のメンバー達から遠ざけるように誘き寄せ、身を翻して両手の体当たりを回避した。 二つの巨体が豪速でステージに突っ込んだ為に、凄まじい衝撃が全体に行き渡る。 衝撃は反応できなかったメンバーの足を容赦なく襲う。足元をすくわれ転倒しかける者も。 それでも三人の剣士は同時に跳躍し、尚もステージに拳を打ちつけたままの両手へ、勇敢に斬りかかっていく。 マルス「活路は開いた、みんなも攻撃に移ってくれ!!」 ドンキー「よしきたぁ!」 クッパ「ガァァァアアアァッ!!」 マスターハンド「ぐ、・・・・くッ!」 リンクとマルスの双方の剣を打ち据えられ、マスターハンドが呻き声を上げる。 ロイは一人である分、剣の腹から真っ赤な炎を噴出させ、無理矢理にクレイジーハンドをその場に押さえつけていた。 マルスの合図と共に待機していたメンバー達が一斉に両手へ飛び掛ってゆく。 マスターハンドから見て前方から放たれたアイスクライマーの吹雪と、後方からのクッパの火炎に悲鳴を上げる。 そこへ力自慢のガノンドロフとドンキーが飛び込んで行き、身動きの取れないマスターハンドを殴りつける。 クレイジーハンド「俺のッ、力をッ!ナメるんじゃねえぞォッ!!」 ロイ「う・・・ぐぁあああっ!!」 ネス「ロイッ!?──あぐっ!」 一方で、身体中を炎で赤く染め上げ、力ずくでロイを弾き飛ばして宙に浮き上がるクレイジーハンド。 気を取られたネスが、火の粉を撒き散らしながら振るわれた人差し指にはね飛ばされる。 身を激しく震わせて炎を振り払い始めたクレイジーハンドの真上にもはや見慣れた雷雲が現れる。 しかし、雷雲から降り注いだピチューのかみなりがクレイジーハンドを灼く事は無かった。 標的を失った雷が、雷雲を召還した本人と共に床を焼き焦がした。 自分自身の使ってきた電撃の影響で体力も限界に近づいていたピチューが懸命に辺りを見回す。 ブラスターを携えて、隙を窺っていたフォックスがピチューの背後に映った姿に目を見開き、弾かれたように叫んだ。 フォックス「後ろだ!ピチューッ!!」 ピチュー「えっ・・・!!?」 クレイジーハンド「ははぁーはっはっはっはッ!!!」 時、既に遅し。背後からクレイジーハンドに掴みかかられ、もがくピチューが高々と掲げられる。 クレイジーハンド「てめえ等ぁ良く聞けッ!!今すぐ兄貴への攻撃を止めな、 さもなければ、この子ねずみの五体を引き千切ってやらぁ!!」 リンク「なッ・・・・!!」 クッパ「ぬ・・・ぐぅう・・・ッ!卑怯な・・・!」 ピチュー「うッ・・・・ぐぅ・・・」 声高に宣言されたクレイジーハンドの要求に、メンバー達は大人しく応えるしかなかった。 マスターハンドの元から、構えたままのメンバー達が離れる。 自由の身となったマスターハンドが笑い声を上げながら手近なメンバーをはね飛ばし、宙を舞う。 そのままクレイジーハンドの傍まで移動して行き、両手がメンバー達を見下す形となる。 マスターハンド「くくく・・・!流石だ、我が弟よ。人質を取り、あのスマッシュブラザーズを脅迫するとはな」 クレイジーハンド「ひひひ・・・!褒めるのは後にしてくれよ。それより今何するか、だろ? ・・・さあ、どうするよ兄貴?今ならこいつを使って、あいつ等を好き放題やっちまえるぜ」 マスターハンド「そうだな、では・・・」 スマッシュブラザーズを嘲笑いながら、マスターハンドがメンバー達に向き直る。 習ってクレイジーハンドもメンバー達の方向を向いて、兄の言葉を待つ。 数秒間の間隔を空けて、高らかな笑声と共にマスターハンドの言葉が響いた。 マスターハンド「今、『勇気のトライフォース』を宿す者・・・黙って前に出て来るが良い」 リンク「・・・・・!」 ・・・・静寂が訪れる。誰もが歯を食いしばって後ろにさがった。 構わず、マスターハンドは続ける。 マスターハンド「トライフォースを宿している者は、最初、私から逃げ延びた者七人、 ・・・いや、ファルコは脱落したからな・・・。貴様等六人の中の・・・誰かだ。 他の者達は私の配下に加えた時、確認しておいた。・・・結果、力と知恵のトライフォースを手中にした。 残る勇気のトライフォースは、貴様等の中の誰かが宿しているはず・・・。この子ねずみも含めてだ! ・・・さあ、出て来いっ!子ねずみがトライフォースを宿していると言うのならそれを示せ!さあっ!!」 ガノンドロフ「(やはり、既に二つのトライフォースは奴等が宿しているか・・・)」 ゼルダ「・・・・・・・っ」 マスターハンドの言葉の後半はもはや叫びに近かった。 比例するようにピチューを握り締めるクレイジーハンドの力が強まってゆく。 思考するガノンドロフと、言葉を失うゼルダが無言のまま、鋭く右手袋を睨みつけた。 しかし、そんな状況だというのにも関わらず、握られているピチューが口を開いた。 ピチュー「み・・・んな、ダメだよ!教えちゃぁ・・・教えたら・・・世界が・・・壊され、ちゃうんだからっ・・・!」 クレイジーハンド「だァまれッ!!てめえは大人しくしてやがれぇ!!」 マスターハンド「ふん。どちらにせよ奴等も黙ったままだ。ここは一つ見せしめとして、こいつを」 途切れ途切れに言うピチューを怒鳴りつけるクレイジーハンド。 その脇でマスターハンドが何かを含んだ物言いをしながら、握られたままのピチューの片耳を掴む。 マスターハンド「こうしてやれば・・・奴等の気も少しは変わるだろうなぁ!!?」 ピチュー「ッぁああああああああああああああああああああ!!!!!!」 ドンキー「なッ・・・!?やめろぉおおーーっ!!」 ドンキーの制止の言葉もむなしく、力任せにマスターハンドが、掴んだピチューの耳を捻じ切った。 鮮血がほとばしる。ピチューが絶叫する。悲鳴が上がり、怒声もその中に混じって辺りに響き渡った。 大量の返り血を帯びたマスターハンドが笑い声を上げながら、捻じ切ったピチューの片耳を投げ捨てる。 同じくピチューの血を被ったクレイジーハンドが、鮮血を滴らせながら握り締めていたピチューを下に落とした。 力なく倒れこむピチュー。何とか生きてはいる様だが、彼の耳があった場所からは、絶え間なく血が流れ出していた。 ナナ「あっ・・・・あっ・・・・!」 クッパ「グッ・・・・・!!」 リンク「・・・・・・!!」 ロイ「そん・・・な」 震える足取りでリンクが横たわるピチューを助けに向かうが、既に誰もが戦意喪失しかけていた。 その様を見て、両手が不気味に嘲笑う。 クレイジーハンド「さっさと教えないからこうなるんだよ、バーカッ!」 マスターハンド「まあ、良い・・・奴等が教えようとしないのなら元の所持者に訊くとしよう。 リンク。勇気のトライフォースは誰が持っている?一体、誰に託した?」 唐突に、両手がリンクの方向を向いてそう言った。思わず、他のメンバー達もリンクに視線を向けてしまう。 当のリンクは、血塗れのピチューを腕の中に抱いたまま、警戒するような目付きで両手に向き直る。 リンク「・・・・・分かりません。無我夢中で・・・他の方へ、投げ渡すような感じだったので。 ・・・結果、誰がトライフォースを所持しているのか、私も、その本人も分からない状態になってしまいましたが」 マスターハンド「ふん、どこまで本当なのだろうな?・・・まあ良い。そちらから教えないのならば、 私達自身でトライフォースの在り処を暴いてやる。行くぞ、弟よ・・・もう人質など取らなくとも良い。 どの道、トライフォースの所持者は生き延びた者達の何れかなのだ・・・、 他のメンバーは全力で潰し、後でトライフォースの所持者の候補者達をゆっくり調べてゆこうではないか」 クレイジーハンド「オッケー、じゃあ始めようぜ・・・スマッシュブラザーズ狩りの再開だぁ!!」 言いながら、身を振るって返り血を払う両手。ボタボタと音をたてて落ちる真っ赤な液体は、それを見る者達に恐怖を与える。 相手が悠々と隙を晒しているというのに、誰も攻撃を仕掛けるどころか、後ろへと後ずさっていた。 更に後ろの方で、震えながら、アイスクライマーの二人が応急処置としてリンクから頼まれピチューの傷口を凍らせているのが分かる。 クッパの目が恐怖か怒りか、大きく見開かれていて、その傍ら、ドンキーは両手を握り締め、俯いたまま震えている。 力なくその場にへたり込み、尻餅をつくルイージの目は見開かれ、クッパとは違って大粒の涙が溜まっていた。 クレイジーハンド「ヒヒヒッ・・・ははははははッ!!」 ロイ「うぐぁっ!!」 フォックス「がっ・・・!」 笑声を上げながらクレイジーハンドが握り拳となって、ロイとフォックスに突進する。 避けきれず、二人ともがクレイジーハンドの体当たりを喰らって吹き飛ばされた。 床に叩きつけられ、転がる二人。嘲笑いながら、マスターハンドが二本の指先をメンバー達に向ける。 マスターハンド「私達兄弟の『本気』。その身をもって知るが良い・・・!!」 ネス「・・・・くっ!!」 ドンキー「野朗ぉお・・・っ!」 言い放たれた言葉と共に、マスターハンドの指先が火を噴いた。 発射されたいくつもの巨大な弾丸が歯噛みするネスとドンキーに向かってゆく。 二人がそれぞれ両脇へと跳んで一直線に向かってきた弾丸を避けるが、容赦なくマスターハンドは新たな弾丸を撃ち込んできた。 次々と大きな爆音が轟き、熱気と煙が辺りに撒き散らされる。 煙が晴れた場所には、咄嗟にシールドを展開したもののブレイクしてしまい、反動で身動きの取れない二人が横たわっていた。 クレイジーハンド「二人とも潰れちまいなぁッ!!」 リンク「そうはさせられませんね」 ゼルダ「これ以上・・・犠牲は出させません・・・!」 横たわるネスとドンキー目掛けクレイジーハンドが握り拳となって突進する。 そこにリンクとゼルダが割って入り、剣撃と魔法でクレイジーハンドを弾き飛ばす。 宙返りするように舞ったクレイジーハンドが体勢を立て直しながらも構えを取る。 無言でマスターハンドがクレイジーハンドの居るステージの端とは反対方向へと飛んで行く。 丁度、マスターハンドとクレイジーハンドがステージの両脇に位置し、メンバー達を挟み込む形となった。 マスターハンド「・・・くっ、くくくくっ!さあぁ・・・!来るが良い!!」 クレイジーハンド「ひゃははぁーっはっはぁーッ!!行くぜぇ兄貴ィ!!」 言いながら、マスターハンドが自身へ向かって指先を動かす。 その動作は、次の瞬間彼等両手の連携攻撃の合図だと言う事を否が応でもメンバー達は知る事になる。 クレイジーハンドが握り拳となると、自らの位置から直線状の位置に滞空しているマスターハンド目掛けて突進していく。 唐突に行われたその攻撃を避けきる事の出来なかった者は三人。 ・・・気を失いかけているピチューと、彼に応急処置を施していた、アイスクライマーの二人だった。 ポポ「うあああああっ!?」 ナナ「ッ・・・・・!!」 ピチュー「ぅ・・・・ぁ、ぐあああっ・・・!」 吹っ飛ぶ事さえ許されない。拳に打ち付けられ、そのまま身体をクレイジーハンドに密着させた状態で押されてゆく。 彼等の行く先は、手を広げたマスターハンド。あの掌にこの速度で押し付けられれば、──。 ピチュー「く、・・・そ、そんなの・・・嫌だっ!!」 恐怖を一番早く感じ取ったピチューが、朦朧とする意識の中、必死に両頬から放電した。 電撃がクレイジーハンドの身体を蝕み、彼がかすかに呻き声を上げて本の一瞬、動きを止めた。 続いてアイスクライマーが苦しい体勢のまま、掌をクレイジーハンドの身体に押し付ける。 零距離で噴出した冷気の勢いがクレイジーハンドから二人を遠ざける。その際にピチューの手を素早く掴んで共に左手から離れる。 マスターハンド「小賢しい・・・っ!」 クレイジーハンド「くっ・・・、失敗しちまった。兄貴、すまねえ・・・」 マスターハンド「良い、謝るな。・・・ならば、一切小細工の効かない例の力を使えば良い事よ!!」 言いながら、バッと身を翻して手を開いたまま、マスターハンドが身体を床に押し付ける。 それに次いでクレイジーハンドが先程自分自身の滞空していたステージの端へと戻って、怪しげな構えを取る。 何を仕掛けてくるのか解らない。警戒しながらメンバー達がどちらからの攻撃にも対応できるように構える。 しかしそれも無意味な足掻きだという事を知らされる。床と密着したマスターハンドの掌から青い光が漏れ出していた。 その反対側で、構えられた指の一本一本の先端から、真っ赤な光を放っているのはクレイジーハンド。 ゼルダ「まさか──!?」 ガノンドロフ「不味い・・・!!」 マスターハンド「とくと見よ!!我が創造力と、知恵のトライフォースの力ぁっ!!!」 クレイジーハンド「喰らいなっ、俺の破壊力と、力のトライフォースの力をよぉッ!!!」 瞬間、マスターハンドの真っ青な光がステージ全体へ、床を這うように行き渡る。 すると床から放たれる青い光の中から、次々と鋭利な刃物が勢い良く飛び出してきた。 妖しく光る白銀の刃がメンバー達を切り刻む。剣や槍、ナイフ、カッター、包丁。中にはビームソードまでも。 マスターハンド「足掻け苦しめ泣き叫べ!!私達に逆らう愚か者達は、こうなるのだぁ!!」 マスターハンドの高笑いが上がる一方でメンバー達の悲鳴が上がる。あちこちに鮮血がほとばしる。 そしてクレイジーハンドの指先に灯された五つの赤い光が激しく、暴れる様に輝き始めた。 ヴン、と不可思議な音と共に地獄と化すステージ上にいくつもの、赤い円形の光が現れる。 クレイジーハンド「全部、全部ぶっ壊れちまいなぁぁッ!!ひゃはぁーはっはっはっはっはぁっ!!!」 ぐい、とクレイジーハンドが赤く光り続ける指を動かすと、同時にステージ上に現れた光が不規則に辺りを飛び回る。 何より驚愕したのはその光の秘める力。偶然にもその光が床から飛び出したままだった剣に触れると、 たちまち光は剣に触れた部分を打ち砕き、その赤い光は音もなく消えていった。 恐らくこれが、クレイジーハンドの操る力・・・『破壊力』なのだろう。 必死にメンバー達がその光を避けようとするも、 先のマスターハンドの攻撃に体力を削られ、思うように身体を動かせない者が多数。 嘲笑うかの様に破壊の光はメンバー達を徐々に一箇所へと追い込み、周りを旋回しながら完全に退路を防ぐ。 そしてついに、破壊の光が、四方八方から手も足も出す事の出来ないメンバー達へ襲い掛かってくる。 ・・・・・全滅するのは、明確だった。 カービィ「まさか、ね。・・・・こんな事になるなんて、予想もしなかったよ」 ファルコン「そりゃあそうだろうな。マスターハンド様に歯向かう奴がいきなり出てくるんだからなぁ・・・ピカチュウ?」 ピカチュウ「くそっ・・・!」 謎のザコ敵軍団が大量に床に伏せている廊下。 そこでは、壁際に追い込まれたピカチュウと、彼を嘲笑いながら追い詰めているカービィとファルコンの姿が。 そしてもう一人。ミュウツーと共にサムス達を襲撃した存在が、二人の脇へ歩み寄ってくる。 「さて、どうしてくれようかぁ?サムスを見捨ててまで命からがら逃げ延びようとしたんだろうが、それも無駄な足掻きなんだよ」 ピカチュウ「違うっ。僕は、君を引き付ける為にここまで来たんだっ。サムスとプリンとの、作戦だったんだよ・・・!」 カービィ「くだらない作戦だね」 冷たくピカチュウを見下しながら言うその存在を睨みつけながらピカチュウが言う。 その間にもカービィのレイガンが彼の頭に、ファルコンのビームソードが首元に添えられる。 「ま、作戦は失敗したようだけどな。どうせ今頃はサムスの相手を受け持ったミュウツーがサムスの事をぶち殺してるだろうし・・・」 ピカチュウ「さ──サムスが、殺されるはず、ないッ!」 「黙りな。もうお前は仲間でも何でもねぇ。・・・・殺っちまえ、カービィ、ファルコン・・・次はプリンの方を探すぞ」 冷酷な言葉が飛ぶと同時に、ピカチュウの両脇に立っていたカービィとファルコンがにやりと笑みを浮かべる。 ファルコン「ああ・・・、もう一度こいつの首、はね飛ばしてやるよ」 カービィ「あ、待ってファルコン、はね飛ばす前に僕に風穴開けさせて」 ピカチュウ「くっ、──そぉおおおお!!」 「・・・・ッ!?」 恐怖か怒りか悔しさか──。目を見開いたピカチュウが叫びながら電撃を撒き散らす。 怯んだ三人の間を潜り抜け、急いでピカチュウが走り出す。 呆気に取られていた三人も、遅れてピカチュウの後を追うべく走り出した。 ピカチュウ「う・・・・ぁああああ!!ちっくしょぉぉーーっ!!」 ファルコン「うぉお!?」 カービィ「わぁーっ!?」 走りながら狂ったように叫びピカチュウが再び電撃を辺りに巡らせる。 するとどうだろう。突如として、電撃の触れた壁が爆発を起こして崩れ出したのだ。 驚いて立ち止まる追っ手三人。当のピカチュウは驚きこそは見せたが、好機とばかりにその場から全速力で去っていった。 「(・・・あの時マルス達が仕掛けてたモーションセンサー爆弾か、嫌な事思い出させやがって・・・) おい、お前等!止まってないでさっさと追うぞ!見失っちまったら後々面倒だ!」 声を荒げた彼を先頭に、再び三人がピカチュウを追いかけていった。 ───。 静寂が、終点を包む。まるで、時が止まったかの様だった。 あの赤い光はどこにも見当たらない。メンバー達は、全員が倒れ伏せていた。 ただ一人・・・、腕も、尾も、頭も消失したままの状態で、尚も立ち続けている者を除いて。 ポポ「くっ・・・ぱ・・・?」 フォックス「・・・・嘘・・・・だろ・・・・・・?」 クッパ「・・・・・・・・」 静寂の中、静かに消え入りそうな二人の声が上がる。 音もなく、絶え間もなく、大量の血液を流しているクッパだったモノは当然返事を返さない。 不意に、クッパの胴体を支えていた両足が膝をつくように崩れ落ちる。 それに従って、大きなクッパの胴体も同じ運命を辿り、自らの血溜まりの中へ横たわった。 ルイージ「・・・・そんなっ・・・・そんなぁあッ・・・・・!!」 ドンキー「クッパ・・・・お前ッ・・・・!! う、ぉおおおおお・・・・おおおおぉぉぉっ!!」 堪えきれず、メンバー達が悲しみに泣き崩れる。 クレイジーハンドのとどめの一撃がメンバー達に襲いかかった瞬間、 クッパはメンバー達を倒れ伏せさせ、その巨体を広げて、倒れた仲間達の身代わりに、破壊の光を全てその身で受けていた。 そう・・・、クッパはあの時の、ファルコと同じ事をしたのだ。 ガノンドロフ「・・・貴様等ぁッ!いつまで泣いているつもりだ!?早く立ち直れ、そして早急に奴等を止めるぞ! 奴等さえ倒せば、いくらでも死人など蘇らせる事が出来る事を忘れたのか!!」 リンク「・・・・・・っ!」 ロイ「そ、そうだっ・・・・!まだ、諦めるのは早い・・・!あの両手を倒せば・・・!」 ガノンドロフの怒号に完全に戦意喪失していたメンバー達が我にかえる。 目的を改めて思い出し、再び信念を宿した眼差しが両手に向けられた。 マスターハンド「・・・・・ふん、奇跡的に全滅は免れたようだな・・・全く、忌々しい奴等よ。 一瞬、標的である六人の中の一人が死んだと言うのには肝が冷えたが、 我々のトライフォースに特に何の反応もないという事は、どうやら奴は所持者ではなかったらしいな」 クレイジーハンド「悪い、兄貴・・・いつもいつも、足を引っ張っちまってよ。・・・足はねえか、 まあそれはともかく、だ。・・・てめえ等、そう簡単に俺達を倒せると思ってんのか?」 それまで黙っていた両手が、やはり嘲るような口調で言い放った。 そして両手がステージの両端で、それぞれ妖しげな動きと共に構えを取る。 マスターハンド「謝らなくて良い、それよりも一つ聞いておく。・・・後どれくらい、力が使える?」 クレイジーハンド「今の所、光を四つぐらい召還できる。また力を充填すんのは難しいから、 なるべく温存して使うしかなさそうだな・・・。兄貴の方はどうだ?」 マスターハンド「結構創造したからな、現在は先程の規模の三分の一ぐらいの量しか創りだせない。 ・・・しばらくの間は能力の行使を節約するしかなさそうだ」 構えながら両手の交わす会話に、スマッシュブラザーズはついていけない。 だが話の内容から察するに、確実と言うわけではないが、 恐らく彼等の創造力と破壊力は使ったら力を蓄え、その上で再び使う事が出来ると言う仕組みらしい。 マルス「話なんか・・・してる暇、あるのかいっ!?」 マスターハンド「むぅ・・・っ!?」 真っ先にマスターハンドへ飛び込んでいったのはマルス。 素早く、しなやかな剣さばきでいくつもの切り傷をマスターハンドに刻み込んだ。 若干驚きつつも、マスターハンドが身を振るってマルスを払い落とす。 それと同時に、弾かれたようにメンバー達がマスターハンドとクレイジーハンドへと分かれて攻撃を仕掛けていく。 リンク「はああああッ!」 マスターハンド「ぬ・・・う、小賢しいッ!」 ゼルダ「させません・・・・!──フロルの風!」 斬りかかって行ったリンクを殴り飛ばそうとしたマスターハンドを見据え、 ゼルダが魔法の風に包まれてその場から姿を消した。 気づけば、ゼルダが細い腕でリンクの服の裾を掴み、マスターハンドの背後へと移動していた。 リンク「恩に着ます、姫・・・!でやあああぁぁッ!!!」 マスターハンド「ぐぉおおおぉ・・・ッ、よく・・・もぉおぉ!!」 マスターハンドの手の甲にあたる部分に一閃に切り傷が残る。 それに次いでゼルダの火炎魔法がリンクのつくった切り傷目掛けて打ち込んだ。 呻きながら、即座に体勢を立て直したマスターハンドがリンクとゼルダを捕らえ、握り締める。 瞬間、生じた隙を狙ってのネスのPKフラッシュがマスターハンドを灼き焦がし、緩まった手の中から何とか二人が脱出した。 クレイジーハンド「くそっ、能力が使えりゃぁこんな奴等ぁっ!!」 ロイ「命を壊す能力なんて・・・!もう、使わせるわけにはいかないッ!!」 クレイジーハンド「うがぁッ、ごあはァッ!!?ちぃッッッくしょぉおおお!!!」 マスターハンド「く・・・・っ!?」 ロイの持つ剣から生じる炎を爆発させる必殺剣技、エクスプロージョン。 身の危険も考えない爆発と共に振り下ろされた剣は、クレイジーハンドを業火で包み込み、勢い良く吹き飛ばす。 吹き飛んだクレイジーハンドの向かう先は、兄であるマスターハンド。 マスターハンドもまた、ネスの強力なPSIに怯み、動きを硬直させていた。 炎を身体に纏いて、クレイジーハンドがマスターハンドに突っ込み、両手が共に激しく倒れこむ。 クレイジーハンド「が、ぁ・・・ッ! すま・・・・ね・・・ぇ、兄っ・・・、貴・・・・」 マスターハンド「謝らなくても良いと、何度言えば分かるッ・・・・! お前は少し休んでいろ、私が時間を稼いでいる間に力を蓄えておけ・・・!」 クレイジーハンド「あぁ・・・・、・・・分かった・・・」 横たわるクレイジーハンドにそう言うと、ふらふらとマスターハンドが浮き上がった。 ダメージは初めから戦っていたマスターハンドの方が溜まっているはずだが、 殺傷能力の高い力を持つクレイジーハンドに力を蓄えさせている辺り、少しでも早くメンバー達を潰す事を望んでいるようだ。 マスターハンド「・・・・来るが良い、スマッシュブラザーズ・・・ 全員、この私が・・・返り討ちにしてくれる・・・っ!!」 ルイージ「出来るものなら・・・・!」 フォックス「やってみろ!!」 あえて挑発に乗って、ルイージとフォックスがマスターハンドに飛び掛る。 一瞬、ルイージには構えを取るマスターハンドは後ろに居るクレイジーハンドを「いじめ」から守っているかの様に見えた。 弟を思いやり、弟をその身で守り通そうと言う意志──。兄であるマリオがいつも見せてくれていたあの表情を思い出す。 それを思うと、まるで自分達が彼等をここまで豹変させた、いじめを加えていた者達かの様に思えてきてしまう。 いくら相手が凶悪な思想を持つ者達だとしても、元々は人間の子供だったのだから──。 様々な想いがルイージを駆け巡り、結果的に攻撃を躊躇する事となり、そしてそれを悔やむ事となる。 マスターハンド「・・・ふっ、攻撃を躊躇ってもらったおかげでまた一人、邪魔者を消す事が出来た」 ルイージ「・・・ふぉっ・・・フォックス・・・・!!」 尻餅をついていたルイージの目の前で、心臓を貫かれたフォックスが膝から崩れ落ち、横たわる。 攻撃を躊躇ったルイージを狙ってマスターハンドの指先から放たれた光線にいち早く気づき、 ルイージを突き飛ばしてマスターハンドの攻撃の身代わりとなって、散っていったのだ。 ・・・しかし、マスターハンドが、『生き延びた者達』の一人である自分を本気で殺そうとして攻撃をしてくるとは思えない。 まさか、自分が彼等を哀れみ、攻撃を躊躇して、フォックスが自分を庇いに来る事を計算しつくしての行動だったとしたら──? ルイージ「・・・・・・!!」 そこまで考えて、ルイージは恐怖に目を見開いて後ずさっていた。 入れ替わるようにして、両脇をマルスとロイが駆けて行く。 制止の言葉を上げようとするが、口が開かない。 ダメだ、みんな。アイツはやば過ぎる──、本気で殺す、と宣言された、生き延びた者達以外の者が行ったら・・・! マスターハンド「二人一組で来るか、・・・容易いぞ、能力が使えなくとも、本気さえ出せれば貴様等などぉ!!」 マルス「ぐぁ・・・・・!?」 マスターハンドがクレイジーハンドとは真逆の意味を叫んだその瞬間、 豪速で突き出された人差し指がマルスの腹を突く。 響き渡る鈍い衝撃音。吐血したマルスはそのまま後方へと吹き飛ばされていく。 誰もがその瞬間的な出来事に反応できず、吹っ飛んでくるマルスを受け止める事はできなかった。 あっという間に場外となってゆくマルス。それでもメンバー達が我にかえったのは、ロイの悲鳴が轟いた時だった。 マスターハンド「さて・・・次の相手はどいつだ・・・?」 ロイ「あ・・・あぁぁッ・・・、・・・うッ・・・ぐッ・・・」 ネス「・・・・・・な・・・っ!?」 見れば、ロイの右肩には絶えず血を流し続ける穴が開いていた。 穴から覗くのは、血塗れの封印の剣。先にやられたマルスに気を取られたロイは、 そこに隙を見出され、瞬時に剣を奪われて自分自身の肩へと突き刺されてしまっていたのだ。 片膝をついたロイが震える左手で右肩に突き刺さる剣を引き抜いたと同時に、マスターハンドが容赦なくロイを殴り飛ばす。 血を撒き散らしながら吹き飛ばされてきたロイはマルスとは違ってメンバー達の集う場所へと落ちていった。 落ちてきたロイを慌ててドンキーが受け止める。周りのメンバー達が、怒りに満ちた眼差しをマスターハンドに向けた。 ただ一人、マスターハンドにかつてない恐怖を見出してしまったルイージを除いて。 ルイージ「ダメ・・・だっ、みんなっ・・・!」 何とかルイージが搾り出した言葉も、もはや誰の耳にも届いては居ない。 ルイージの忠告も意味を成さず、ついに他のメンバー達が戦闘態勢に入る。 リンク「赦しませんよッ・・・!」 ピチュー「みんなの、仇・・・ッ、取ってやる!!」 ドンキー「うおおおおぉぉぉぉッ!!!」 ネス「ったぁああああっ!!」 怒りに身を任せて、四人が口々に言いながらマスターハンド目掛け走って行く。 斜め上へ構えられたリンクのマスターソードが敵を切り裂くべく振り下ろされた。 大振りの一撃だったそれを、難なくかわして見せるマスターハンド。 隙を晒したリンクにマスターハンドが指先で突きを入れようとするが、そこにピチューの放った電撃が攻撃を阻む。 続いて、ピチューの電撃に怯んだマスターハンドの人差し指にしがみついたのはドンキー。 その有り余る力を生かして、思い切りマスターハンドを持ち上げて、後ろに横たわるクレイジーハンドに叩きつけようとする。 マスターハンド「ぬ・・・うう、ぉおおおおッ!!」 ドンキー「うぉわあああぁッ!!?」 ピチュー「ドンキーッ!!」 負けじと力を込めてマスターハンドがしがみつくドンキーを宙回転しながら振り回して、 後方のクレイジーハンドを越してステージの外へと振り落とす。 何とか両手を伸ばしてステージの端にしがみついてよじ登るドンキー。 だが、目の前には流石に危険を感じたのか、クレイジーハンドが浮遊した状態で待ち構えていた。 既に左手は臨戦態勢。改めて両腕に力を込めるドンキーがクレイジーハンドを睨みつける。 クレイジーハンド「兄貴、まだ回復しきってねえから七個ぐらいしか使えないが、別に大丈夫だよな?!」 マスターハンド「・・・ああ、支障はない!」 ネス「うわあああああっ!!」 ネスの放ったPSIをも突き破ったマスターハンドの体当たりは、術者であるネスまでも撃った。 吹き飛んだネスが反対側のステージの端まで吹っ飛んでゆく。 クレイジーハンドの戦闘の障害にならない為の意味合いも兼ねてか、 リンクとピチューを素通りして、吹き飛ばしたネスを追う様にマスターハンドが前進してくる。 ゼルダ「・・・・どのような理由があったにせよ、あなた達の行いは、決して赦されるものではありません」 ガノンドロフ「覚悟しろ、手袋風情が・・・!」 マスターハンド「貴様等などに分かるものかぁっ!!私達の、苦しみがなァ!!」 手先に魔力を収束させるゼルダとガノンドロフがマスターハンドを睨みつける。 対して、マスターハンドは怒りをあらわにし、怒鳴り散らしながら攻撃の構えを取った。 ポポ「大丈夫?ネス。ルイージと、ロイも・・・」 ナナ「無理はしないで、三人とも少し休んでた方が良いよ」 ルイージ「・・・・うん」 ネス「ごめ、・・・ん・・・」 ロイ「すまない・・・・・・・」 心に深い傷を負ったルイージと、身体に深い傷を負ったネスとロイに安否の言葉をかけるアイスクライマーの二人。 なるべく彼等を守れる位置に立った二人は、ゼルダ達とはやや離れた場所からマスターハンドを見据える。 クレイジーハンド「さぁぁってぇ・・・!もう一度、暴れさせてもらうとするぜぇ・・・!!」 リンク「・・・・お好きにどうぞ・・・!」 ピチュー「僕達が、君を止めるからね・・・!」 ドンキー「ああ、絶対にな・・・!!」 三方向からクレイジーハンドを囲む様な位置に立った三人が、それぞれクレイジーハンドを睨みつけながら言葉を繋げて行く。 一度は破壊された、長い時間をかけて築いてきた信頼関係が、再び彼等の中で取り戻されつつあった。 「・・・終点に居る者達はマスターハンドと戦って勝手に数が減るのを待っていれば良い。 ならばその待っている時間を、この競技場を奔る者達を狩る時間に転じる事にするとしようか」 血生臭い臭いの充満する部屋の中から、その存在が独り言を呟きながら現れた。 ブンッ、と彼が片手に持つ武器を振るうと、床にいくつもの小さな血の斑点が出来る。 「さぁて・・・・、次に私と出会うのは一体、誰でしょうかね・・・? 偽者が紛れるなど・・・こんな汚れた集団など不必要だ、だから消してやりますよ、 スマッシュブラザーズはもちろん、この競技場も、街も、国も、世界も!何もかも・・・何もかもなぁッ!!」 憎しみに満ちた様子で叫びながら、足元に転がる瓦礫を蹴飛ばして、 足早にその存在は廊下の奥へと進んでいった。 「・・・・そんな。・・・どういう事・・・なんだ・・・・?」 絶望的な表情で呟きながら、その部屋の中から現れた男が、 先程部屋を出て行った者が進んでいった方向を恐怖に怯えた眼差しで見つめる。 しばらくその状態が続いた後、不意に男は発狂したのかの様に悲鳴を上げて、出口を目指して駆け出していた。 「くそ・・・くそ、くそっ!どうなっている・・・どうなっているんだッ!!? 何で・・・何で、彼が・・・・どうしてッ!!?嘘だ・・・嘘だ嘘だ嘘だ嘘だッ!!何かの、まちがっ・・・!」 うわ言のように言い続けていた言葉が、金属音と共に途切れた。 広間へ通じる扉を前に、激しく前のめりに倒れこんだ男が、 必死に震える両手を床について身体を支えながら立ち上がろうとする。 気づけば、大量の血液を吐き出していた。 自分の凝視する灰色のタイルが敷き詰められた床が見る間に赤く染まってゆく。 恐怖と苦しみで我を失いかけていた男は、ほぼ本能的に取り落とした武器を握り締め、それを支えによろりと立ち上がる。 力なく扉へ伸びた手が、扉を開く。サビか何かがこびりついているのか、ギギギと耳障りな音を鳴らしながら。 「あ、あああ・・・ああああっ・・・!!」 男の頬を一粒の涙が伝い落ちる。出口付近には何人もの観客達の死体。 そして、彼の足元に転がっている、真っ黒な物体は、おぼろげながら一人のメンバーの姿を形作っていた。 「う・・・・わ、ぁぁあああああああぁぁぁぁぁッ!!!!」 絶叫して、男が一目散に走り出す。 出口へ通じる扉を開くと、彼は競技場を振り返りもせずに走り去っていった。 ゼルダ「たああッ!」 ガノンドロフ「はぁぁぁあああぁ!!」 マスターハンド「う・・・ぐあぁぁっ!くッ・・・そっ、共がぁッ、この私に・・・この私にィッ!!」 ゼルダの手先から発生した魔力の爆発によりマスターハンドが後方へと吹き飛ばされる。 そこに待ち構えていたガノンドロフが必殺技の魔人拳を打ち込み、再びゼルダの目の前へと吹っ飛ばされた。 ほとんどがむしゃらにゼルダを殴り飛ばそうとするが、渾身の一撃は風を切っただけで終わる。 フロルの風で瞬時にゼルダはその場から姿を消し、マスターハンドの真後ろに居た。 ゼルダ「稲妻っ・・・キックッ!」 マスターハンド「あぐぁあッ!!」 電撃を纏ったゼルダの跳び蹴りはまるで稲妻の如く。 身体中に電流を巡らせ、悲鳴を上げたマスターハンドが床に叩きつけられる。 起き上がる暇もなく、アイスクライマーの二人が掌をマスターハンドに向けた。 放たれた冷気がマスターハンドと床に氷を張り巡らせ、相手を這い蹲らせたまま床に固定する。 マスターハンド「小賢しいッ・・・!!」 ゼルダ「諦めなさい、世界を破壊するなど・・・!」 マスターハンドが必死に身体を動かすが、今までの戦闘によって、 大幅に力をすり減らした上で拘束されているのだから、氷を破壊して逃げ出す事ができない。 身動きの取れないマスターハンドの周りにゼルダが、ガノンドロフが、アイスクライマーの二人が歩み寄ってくる。 ガノンドロフ「我々の要求を二つほど呑んでもらうぞ。一つは、この世界を破壊する企てを中止する事。もう一つは・・・」 ポポ「みんなを・・・、みんなを生き返らせてよ!蘇生、出来るんでしょ!?」 マスターハンド「・・・・ふん。良いのか・・・?後悔する事になるぞ」 ナナ「・・・え・・・?どういう・・・事?」 ガノンドロフとポポの言葉に何かを含んだ物言いをするマスターハンド。 それにかすかな不安を覚えたナナが聞き返すと、マスターハンドが不敵に笑い声を上げる。 マスターハンド「私が貴様等、スマッシュブラザーズを蘇生させる事が出来たのは、私が蘇生術を身につけているからではない。 貴様等の死体に、他の生物の生命エネルギーを奪って直接注入したのだ」 ゼルダ「・・・・まさか。あなた・・・・ここに来ていた、観客達を・・・・!?」 マスターハンド「察しが良いなぁ、くくく。流石はスマッシュブラザーズ、一人蘇らせるのに二十人以上は人間が必要だった」 絶句する四人。とんでもない事実が発覚してしまった。 生き延びた者達六人以外のスマッシュブラザーズの命は、 大乱闘を観戦しに来ていた観客達の犠牲の上で成り立っているものだったのだ。 マスターハンド「もう一つ、教えてやろう。ここまで来る途中、ノコノコの率いる軍勢と戦っただろう? 奴等の目的は計画をより円滑に進める為の調整用だったのだが、 スマッシュブラザーズが相手ではあの程度の奴等、まるで歯が立たないに決まっている。 だから、奴等には生きたまま、一体あたり三人分程の生命エネルギーと、記憶を都合良く書き換えた魂を注ぎ込んだ。 ・・・クッパやガノンドロフの部下が、野生の動物達が何故襲い掛かってきたのか。これが、その種明かしだ」 ポポ「そんな・・・・!!?」 マスターハンド「司令官のノコノコには特別に十人分の生命エネルギーを詰め込んでやったのだが、役に立たなかったようだな。 まあ・・・要するに、在庫の観客達は残り少ない。スマッシュブラザーズを蘇らせると言うのは、 何の罪もない、ただの一般人を死に追いやる事と同じ事だ・・・!」 言いながら、マスターハンドが己を縛る氷を力ずくで砕いた。 宙へ再び舞い戻り、身を振るって残った氷の破片を振り落とす。 そんなマスターハンドへ一歩詰め寄り、どこか威厳を漂わせて口を開いたのはガノンドロフだった。 ガノンドロフ「その、観客達は・・・まだ生きているのだろうな?」 マスターハンド「いや、もう既に肉体は生命エネルギーと魂を失って死亡している。 用済みの死体は邪魔になるので、競技場の入り口に転がっているもの以外は全て、 乗組員を我々に潰され、自動操縦となったグレートフォックスの中に詰め込んであるよ。 残りの生命エネルギーと魂を与えれば、半数近くの者が生き返る事になる為死に追いやるという表現を使ったが・・・ ・・・・どちらにせよ、同じだろう?」 彼が人間の姿のままであったら、恐らく口元に笑みを浮かべていただろう。 そんな様子で言い放つマスターハンドを見上げたガノンドロフもまた、 口元に笑みを浮かべて、「そうか」と短く返し──、床を思い切り蹴って、跳躍した。 ガノンドロフ「以前の俺なら、一瞬の迷いもなく生命エネルギーを利用させてもらう、と言っていただろうにな。 ・・・・全く、何故こうも変わってしまったのか・・・自分でも解らんわ」 マスターハンド「な・・・に・・・!?」 ガノンドロフが自分よりも高い位置へと跳躍した事をマスターハンドが理解した時には、 突き出した右足に紫の魔力を集中させて、斜め上から勢い良く突進してきていた。 重い一撃と共に身体中に魔力が巡り、悲鳴を上げてマスターハンドが床に叩きつけられる。 更にガノンドロフは着地するなり、大きくバウンドした右手の身体の真下に素早く潜り込んだ。 振ってきたマスターハンドは手の甲をガノンドロフに晒していた。すかさずガノンドロフは右腕に魔力を収束させて、 それを思い切り相手の身体の下から突き上げる必殺技、地竜拳をマスターハンドに叩き込む。 マスターハンド「うぐぁっ・・・があああああああッ!!?」 ガノンドロフ「俺の出した答えはこうだ、お前達を力で制し、降伏させた上で足りない生命エネルギーや魂を創造させる。 ・・・それほどの創造力ならば、その気になればそのくらいどうと言う事、ないだろう・・・!?」 マスターハンド「が・・・ぁ、何だと・・・ッ」 ガノンドロフ「世界の調整を、管理を行ってきたのだろう?即ち、それは命を創る事にも繋がるッ!!」 驚愕したまま、事の成り行きを見守るだけの三人がガノンドロフの言葉に我にかえる。 マスターハンドもまた驚愕し、抵抗する事すら出来ずまた床へ目掛けて落ちてゆく。 それを見据えたまま、右腕に再び紫の魔力を──、先程とは比べ物にならないほどの魔力を集中させるガノンドロフ。 落ちて来たマスターハンドが彼の眼に映った瞬間、必殺の魔人拳を解き放った。 ガノンドロフ「はあぁああああああああああああッ!!!」 マスターハンド「ぐぅうぉおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!」 マスターハンドが絶叫しながら、紫の炎を纏って激しく床を転がる。 呻きつつも、体勢を立て直そうとするマスターハンドに隙を与えまいと、他の三人のメンバーが攻撃を仕掛けた。 クレイジーハンド「オラオラオラァッ!!さっきまでの威勢はどこに行ったぁ!!? ひゃはぁーっはっはっはっはっはっはっ!!!」 握り拳を作り、手首から炎を噴射して縦横無尽に飛び回るクレイジーハンド。 狙いを定めさせない動きに惑わされる三人から隙を見出した瞬間に体当たりを喰らわせ、再び飛び始める。 攻撃を与えられない状況で、こちらが一方的に攻撃を受け続けていれば負けるのは確実だ。 何とか相手が能力を行使し始めるまでに勝負を決めておきたい所だが・・・。 リンク「策が浮かびませんね。奴の動きを止められれば良いのですが」 ドンキー「何なら、体当たりしてきた瞬間に俺が受け止めてやるぜ?」 両腕を広げながら言うドンキーに、一瞬悩んだ様子を見せたリンクだったが、 力なく首を横に振りながら口を開く。 リンク「奴が誰に攻撃を仕掛けてくるのか、あんな動きをされては解りません。 方法としては、誰が攻撃されるかを直前に知って、素早くその誰かの前へ出て攻撃を受け止める・・・ ですが、いくらドンキーさんでもそこまで機敏な反応はできないでしょう?」 ドンキー「・・・・だな。他に方法は・・・うぐぉッ!!」 ピチュー「は、早くどうにかしないとやばいよ〜・・・!」 背後から殴り飛ばされたドンキーが前のめりに倒れてしまう。 苦虫を噛む様な表情でリンクが飛び去ってゆくクレイジーハンドを見据える。 だが、心配そうな声を上げるピチューにハッとした様子でリンクが振り返ると、かがみ込んでピチューに耳打ちする。 リンク「状況を打開する策が思い浮かびました・・・今から私の言う作戦に、従ってください!」 ピチュー「えっ?・・・う、うん。解った」 クレイジーハンド「おおう?何だコソコソ話なんざ始めやがって。 何か良い作戦でも思いついたのか?だったらやってみろよ、どうせ俺にぁ通用しねえだろうがなぁ!!!」 叫びながら、クレイジーハンドが豪速で突進してくる。 言うまでもなく、狙いはリンクとピチューだ。しかし、それを好機と見たリンクが、笑みを浮かべて合図する。 リンク「今です!!」 ピチュー「了解、行くよッ・・・!喰らえッ!!かみなりィィィッ!!」 クレイジーハンド「うおおおおおッ!!?」 ピチューの真上に現れた雷雲から稲妻が降り注ぐ。 ピチューから直線状の位置を飛んでいたクレイジーハンドの眼前に雷が発生し、驚いたのか動きを止める。 間髪入れずに床を蹴ってリンクが跳躍。力いっぱいに剣を振るって、クレイジーハンドの身体に一閃。 悲鳴を上げたクレイジーハンドが三人の方向を向いたまま後方へと移動してゆく。 ドンキー「・・・何だったんだ、今のは?アイツ、そのまま雷を突き破ってくると思ったんだが」 リンク「いや、それは不可能です。・・・というのも、仮説を立てたんです。奴等は、電気の攻撃に弱い可能性がある、と。 実際、今までの戦闘の中で、マスターハンドもクレイジーハンドも、ピチューさんの雷を受けて異常に苦しんでいました。 そこで心理面での作戦を用いたんです。弱点であり、威力の高い雷が目の前に現れたとしたら、動きを止めるに違いない」 ピチュー「なるほど。そしてすかさずリンクが良いとこ取り、と」 リンク「バレましたか」 ドンキー「手柄の一つや二つ、俺にも譲ってくれよ?」 軽口を叩きつつも感心するピチューとドンキー。 言われてみれば確かに、ピチューの必殺技、かみなりを喰らった後の両手はかなり苦しむ様子を見せていた。 そのまましばらく戦闘不能に陥っていた辺り、やはりリンクの読みは正しかったようだ。 そうしている間にも、体勢を立て直したクレイジーハンドが握り拳を作って突進してくる。 素早く反応した三人は、即座にその場からばらばらに散り、隙の大きかったクレイジーハンドの一撃を避けた。 後方を振り返り、己の飛んで来た道を辿れば完全に攻撃を回避した後の三人。 苛立ったクレイジーハンドが怒りに声を震わせる。 クレイジーハンド「くっそがぁっ、ちょこまかとぉ・・・!!いい加減ぶっ壊れろよォ!!!」 ドンキー「こんな単調な攻撃なら、余裕で受け止められるぜッ!!・・・うおおおおおッ!!」 クレイジーハンド「ぐが・・・・ッ、くぁあっ!?てめぇッ!!よくも!!!」 怒り狂ったクレイジーハンドは、ドンキーの言う通り単調に、ただ正直に真っ直ぐ突進してきていた。 全力でクレイジーハンドを受け止めたドンキーが、勢いに押されて少しずつ後ずさる。 それを見やり、リンクがピチューに再び耳打ちする。やや長いそれを聞いて、ピチューの目が大きく見開かれる。 何かを言いかけながらピチューが振り返った時には、リンクは再度クレイジーハンドに斬りかかっていた。 が、リンクの一太刀がクレイジーハンドを捉える寸前にドンキーが力負けするほどの力で二人を弾き飛ばす。 二人の名を叫びながら、ピチューが床を蹴った。 クレイジーハンド「・・・はっ、はぁはははっ!!こんな簡単に、俺を倒せると思ったら大間違いだぜ・・・・!」 ドンキー「くっそおぉぉ!!」 リンク「ぐっ・・・、ピ・・・チュー、さんっ・・・!」 ピチュー「はぁぁぁああああああああっ!!!」 倒れこんだ二人を嘲笑うクレイジーハンドの真下で、不意にピチューの叫び声が響く。 クレイジーハンドの真上に現れた雷雲から発生した稲妻が降り注ぐ。 咄嗟に当たるまいと身を翻したクレイジーハンドだったが、その巨大な身体では稲妻の速度から逃れきる事は出来なかった。 クレイジーハンド「がっ、ぎッ・・・ぐぎぃゃぁああああぁぁあッ!!! ・・・く、もっ、よくもぉっ!!・・・てやる!!ろして、殺してやる!!!」 クレイジーハンドが身体を震わせながら張り上げた言葉にならない怒鳴り声が、 最後にはおびただしいほどに殺気を纏い、一つの意味を成す、凶悪とさえ思わせられる様な言葉へと豹変した。 突き出された人差し指の先端が真っ赤に、激しく光り輝く。 気づいた時には、リンクの背後に真紅の光が妖しく揺らめいていた。 リンク「しまっ──・・・!」 クレイジーハンド「残念だったな?・・・もう遅ぇよッ!!!」 ドンキー「なっ・・・!!」 舞い散った赤い物体はクレイジーハンドの破壊の光の破片ではない。 肉片に纏いつく鮮血が床に落ちた際に飛び跳ねて、ピチューとドンキーに降りかかる。 役目を終えた破壊の光は音もなく赤色の透明なガラスの様になってリンクの血液の中へと落ちてゆく。 クレイジーハンド「身体がガラス細工になった様で、簡単に砕けるだろ? その赤いガラスは間違いなく、神に逆らおうとする奴等に恐怖を与える為の、みせしめの様な物だ・・・!」 クレイジーハンドが言い放つと同時に、リンクの身体が血溜まりの中へ倒れてゆく。 倒れた衝撃で脆くなっていた付け根の辺りから片腕が丸ごと折れ跳んだ。 怒りと悲しみに絶叫し、ドンキーががむしゃらにクレイジーハンドへと突っ込んでゆく。 ピチューはただその場に立ち尽くし、先程耳打ちされていたリンクの言葉を思い出していた。 ====== リンク「次は私が囮になります。恐らく奴は私とドンキーさんを弾き飛ばして反撃しようと試みるはず。 そこで奴の真下へ潜り込んで、もう一度雷を落としてください。 ・・・それと。嬉しかったです、感情を操られていたとはいえ、今は生き返っているとはいえ、貴方の兄を切り捨て・・・、 私のせいであなたの耳までを失わせてしまって。それなのにこんな、堕ちる所まで堕ちた私に、いつも通りに接してくれた。 今、言わせて貰いますよ。・・・・・・すいません。・・・ありがとう」 ====== ピチュー「リンクッ・・・リンクッ。くそぉッ・・・くそおおおおおおおッ!!!!」 もはや悲鳴に近い怒鳴り声を上げると、思い切り床を蹴って宙に舞う。 ドンキーの一撃を回避して、身を泳がせていたクレイジーハンドにありったけの電撃をぶつけた。 木霊する苦悶の声。電流を身体に巡らせ、滞空したまま痙攣するクレイジーハンドの手の甲へドンキーが飛び乗る。 呻きながらも、クレイジーハンドがドンキーを振り落とそうと動き出したと同時に、足元へ向けてのジャイアントパンチが炸裂した。 クレイジーハンド「ッぐぉおおおおおあぁぁぁあああぁあああ!!!!」 クレイジーハンドがステージへ叩きつけられ、終点全体を大きく揺るがす。 飛び降りたドンキーが遅れてクレイジーハンドの傍に着地。 それで終わりではない。頬を涙で濡らしながら、叫び声をあげるピチュー。 叫びは、同時に放電された電撃に掻き消され、その電撃は身体を痙攣させるクレイジーハンドを貫いた。 悲鳴を上げて弾き跳んだクレイジーハンドの指を両手で掴んだドンキーが吹っ飛ぶクレイジーハンドをその場に留める。 ドンキーも叫び声をあげる。渾身の力でクレイジーハンドを振るって床に激突させると、 成す術なく、大きくバウンドしたクレイジーハンドを鋭い眼差しで睨みつけながら、怒りを煮えたぎらせるドンキーがまた、叫んだ。 ドンキー「絶対にッ、お前は、お前だけは赦さねぇぇええーーーーっ!!!」 クレイジーハンド「うがああああああああッ!!!」 再び打ち込まれたジャイアントパンチに、クレイジーハンドが絶叫し、激しく倒れこむ。 ピチューのすぐ目の前に飛ばされたクレイジーハンドが力なく呻き声を漏らした。 ここまで自分の耳を奪った奴等の片割れを、大切な仲間を奪った奴等の片割れを打ちのめしても、 止まらない。 ──奴等は、電気の攻撃に弱い可能性がある・・・ クレイジーハンド「っぐッぁあアぁあああ!!」 フラッシュバックする、自分の残された片耳に近づけられたリンクの顔。 ほとばしった電撃が容赦なくクレイジーハンドを灼き、悲鳴を上げてクレイジーハンドがのたうつ。 ・・・それでも、止まらない。 ──マスターハンドもクレイジーハンドも、ピチューさんの雷を受けて異常に苦しんでいました・・・ クレイジーハンド「ぐぁはっ!!や、めろッ、ぐる、じ・・・ぃ、がはぁあ!!」 一瞬途切れた電撃が、再度両頬から放たれてクレイジーハンドを痛めつける。 眼はのた打ち回るクレイジーハンドを見据え、口は半開きのまま。無意識の内に電撃を放ち続けていたと言っても良い。 もはやクレイジーハンドは自分とドンキーの度重なる攻撃を受け続け、指先をかすかに震わせる事しか出来ない。 今まで何度も、辛い場面には立ち会ってきた。仲間が次々と死んでゆくのをこの目で見てきた。 心の隅では、密かにもう、その様な事には慣れてきてしまったとさえ、思っていた。 なのに、止まらない。 仇を討ったはずなのに、止まらない。 ・・・溢れ出る大粒の涙は、止まる気配は見せなかった。 クレイジーハンド「お・・・れっ、達の・・・過去・・・を聞いても・・・お前等は・・・・・情けの一つすら、かけやしねえんだな・・・」 ドンキー「違う。情けをかければ、誰かがお前達によって死んでゆく。第一、お前達だって俺達に情け容赦ねぇだろうが。 ・・・それに、俺達全員が死ねば、この世界の命、全てが死ぬ。・・・俺達は、もう犠牲を出したくないんだ・・・・・」 クレイジーハンド「・・・へっ、綺麗・・・事、だな。・・・でも・・・・俺達には・・・、そんな・・・事っ、・・・どう・・・だって・・・・良・・・・・」 気を失ったのだろうか。それとも、絶命したのだろうか。 解らないが、ただ一つ確かなのは、バチリと電流が左手袋の上を走ったかと思うと、彼はピクリとも動かなくなった事だ。 ・・・もう一つ、確かな事実がある。 クレイジーハンドを過ぎて、どこか遠くを見つめたままその場にへたり込んだピチューは、これ以上戦う事はできない。 ドンキーもまた然り。ぐったりとその場に崩れ落ちると、俯いて、両手を床につき、泣き伏せてしまった。 マスターハンド「はぁ・・・はぁ・・・ふ・・・ふふふ。はぁはははは・・・!」 ゼルダ「・・・何が、おかしいのです・・・?」 四人の集中攻撃を受け続けたマスターハンドは、今や身動き一つ出来ずに床に横たわっている。 今まさにとどめ、と言う所で突然マスターハンドが不気味な笑い声を上げ始めたのだ。 気が触れたのか、とマスターハンドを見据える四人。代表してゼルダが、訝しげな表情のまま、一歩前へ出て呟く様にして問う。 マスターハンド「い・・・良い事を、教えて・・・やろう。 我が弟は敗れたようだが、お前達の仲間を一人、殺せた様だぞ。 肉片が散らばっている所を見れば、『破壊力』をもろに受けたと見られるな・・・時の、勇者は」 ゼルダ「・・・・!!」 再び絶句する四人。 マスターハンドの言葉に、過剰な反応を示したゼルダがもう一歩、前へ踏み出す。 ゼルダ「あなた達は、一体いくつの命を奪えば気が済むのですッ・・・!!?」 マスターハンド「私と、弟以外の命、全てだ」 ゼルダ「くっ・・・!命を、何だと思っているのですか!命がどれほど尊いものか、あなた達は解っているのですか!!?」 マスターハンド「ククッ・・・どこの宗教者気取りだ?」 不敵に言い放たれた言葉と同時に、マスターハンドの人差し指がすっと持ち上げられる。 額にマスターハンドの指先が突き付けられた事をゼルダが理解した時には、指先からは青白い光線が発射されていた。 マスターハンド「・・・何故、だ?どういう事だ、これはッ・・・!?」 ゼルダ「・・・・・!?」 思い描いていた展開にならず、驚きの声を上げるマスターハンド。 一番困惑していたのは当のゼルダだったが、その場から慌てて飛び退いた時、やっと気がつくことが出来た。 マスターハンドの人差し指に剣が突き刺さっている。横から投げつけられたのであろうその剣が突き刺さった事によって、 ゼルダの頭から狙いがずれて、誰もいない空間へと光線は発射されたのだ。 マスターハンド「・・・くっ、小賢しい真似を・・・っ」 憎しみを込めて呟きながら、マスターハンドが指を振るうとその剣が抜け落ちた。 驚く事に、それは封印の剣。ロイの剣であった。 ゼルダ「あ・・・ありがとうございます」 ロイ「別にいいって。僕だって、少しは役に立ちたいよ」 ネス「それは僕も同じさ」 マスターハンド「ぬ・・・ぐぅ・・・!?」 唯一振り上げていたマスターハンドの人差し指が床に叩きつけられ、見えない力に押さえつけられる。 ネスのPSIがマスターハンドを床に拘束している事は明白。その隙にロイは転がっている封印の剣を回収した。 PSIを剥がそうとマスターハンドは身体に力を込めるが、今までに受けたダメージのせいか全く身体に力が入らない。 一瞬、マスターハンドの脳裏を既視感(デジャヴ)と言う言葉が掠める。まるで先程の──。 ルイージ「みんな・・・凄いや」 マスターハンドに恐怖を植えつけられ、戦意喪失していたルイージが思いがけず立ち上がっていた。 よろよろと、ロイとネスの元へ歩み寄ってゆくと、二人はにこりと微笑みかけてくれた。 ネス「今まで何も出来なかった分、ここでやろう」 ロイ「俗に言う、おいしい所取りって奴だよ」 口端から少量の血が流れているが、ネスは気にも留めずそう言った。 肩に手を当て、出血を防ぐロイの顔色は悪かったが、それでも元気に振舞っていた。 改めて自分の情けなさをルイージは実感するが、それと共に心の中に新たな勇気が芽生えるのを感じた。 ルイージ「うん・・・やるよ。ほんの少しでも皆に貢献する・・・!」 ぐっ、と握り拳を作ってマスターハンドを見据えるルイージ。 臆したのか、マスターハンドが小さな悲鳴を上げた気がした。 ガノンドロフ「ふん。つい先程、奴に新たな生命エネルギーを創造させると言ったばかりだろう。 だというのに取り乱すとは、ゼルダ、お前よほどリンクを・・・」 ゼルダ「さあ・・・!みなさん、力を、心を一つに!あの者を、討つべく!!」 ガノンドロフを無視してゼルダが浪々と言い放つ。 それを合図に、他のメンバー達がマスターハンドにとどめを刺すべく、身構える。 マスターハンド「くっ・・・貴様・・・等ァッ!!」 ポポ「いっくぞぉおお!!」 ナナ「これで全部、元通りにするのよ・・・っ!」 一斉に、メンバー達がマスターハンドを睨みつける。 武器を、拳を振り上げ、動く事のままならないマスターハンドへその矛先を向ける。 ドンキー「へっ・・・見えるかよ、ピチュー・・・みんな生き返らせるんだ、 その為にあいつ等が、残ったみんなの仇を討ってくれるみたいだぜ・・・」 ピチュー「・・・・・・」 目元をこすりながらドンキーがピチューにそう語りかける。 ピチューは何も返答はしなかったものの、濡れた眼は仲間達の姿をしっかりと捉えていた。 ゼルダ「力の女神よ、私に力を・・・!ディンの炎!!」 ネス「PK・・・フラァァッシュッ!!!」 マスターハンド「ぐはぁッ、があああああああっ!!!」 魔法の炎の爆発と、緑色の光の爆発がマスターハンドの身体を灼いてゆく。 遠距離攻撃による切り込みを入れられ、多大なダメージを負ったマスターハンドへ封印の剣を構えたロイが駆けて行く。 目前まで迫ると同時に、床を蹴って高く跳躍し、また封印の剣も高く掲げ、刃の腹に溢れ出さんばかりの火炎が纏わりつく。 ロイ「焼き尽くせッ!エクスプロージョンッ!!!」 マスターハンド「ぐぉおおおおおおおお!!」 マスターハンドを押さえつけていたPSIが途切れる。 その瞬間、振り下ろされた剣先がマスターハンドの手の甲を切り裂くと同時に大爆発が巻き起こる。 身体中を真紅の炎で赤く染め上げ、吹き飛ぶマスターハンドの前に大柄な男が現れた。 ガノンドロフ「何度でも堕としてくれるわ、裂鬼脚!!!」 マスターハンド「ッか・・・はっ、がぁぁ・・・ッ!何度も・・・何度もォッ、貴様等ぁッ・・・赦、さ──」 ルイージ「だああああああああああああッ!!!」 マスターハンド「っ・・・!?」 闇の炎を纏った蹴りを喰らったマスターハンドが床に叩きつけられる。 少し前と同じ手で床に叩きつけられた事に屈辱を感じたか、マスターハンドが反撃しようとした、その瞬間。 背後から走った強烈な衝撃と熱に驚愕した時には、ルイージが密着した状態でステージの中央辺りまで吹き飛ばされていた。 ルイージ「ルイージロケット・・・暴発しちゃったけど、ちゃんと当たったから良いよね・・・?」 ポポ「もちろんだよっ!」 ナナ「最後は私達が・・・!」 メンバー達の攻撃によって、今や所々から火を上げ、身体を痙攣させている右手袋から飛び退いてゆくルイージ。 そしてその右手袋の前に立ったのは、冷気を収束させた掌を突き出す、アイスクライマーの二人だった。 マスターハンド「(ま・・・不味い。熱を帯びた状態で、奴等の吹雪を喰らったら・・・!)」 アイスクライマー「「ブリザードッ!!!」」 マスターハンド「ぐうっ!・・・ッ・・・ガッ、ギギィッ・・・!」 急激な温度の変化についてゆけないマスターハンドの身体。 手袋の中から、何かの、金属音に似た耳障りな音が鳴り響く。 危険を察したマスターハンドは、残る最後の力を振り絞って、吹雪の中から飛び上がった。 驚愕するスマッシュブラザーズ。しかし、宙に浮いたまま、マスターハンドは身動き一つしない。 マスターハンド「(身体が、動かない・・・。いや、当然か・・・・・。あれ程奴等の電撃を喰らい、炎を喰らってきたんだ。 そうなれば・・・私の・・・手袋の中の身体が膨張し、精密な動きが不可能になってしまう・・・。 その上急激に温度を下げられ、私の身体は崩壊直前・・・ふっ、もはや、逃げる事さえできぬ・・・と・・・・は・・・)」 無言のまま空中に留まっていたマスターハンドの身体がガクリ、と傾いた。 そのまま力なく墜落したマスターハンドの身体から、床に落ちた衝撃のせいか、何かが砕けるような音がした。 ゼルダ「終わった・・・のでしょうか・・・」 ロイ「問題は・・・奴が生きているか否か、だけど」 ガノンドロフ「ふん。尋常ではない生命力を持つあの手袋の事だ、 まだしぶとく生きているに違いない。当分は動けそうになさそうだがな」 横たわるマスターハンドを見つめながら立ち尽くすスマッシュブラザーズ。 だが、まだ安心は出来ない。マスターハンドの生死を確認し、 散っていった仲間達を、罪のない観客達を生き返らせるという使命が残っているのだから。 ゆっくりと、メンバー達がマスターハンドへ歩み寄ってゆく。動く気配は、全くない。 まさか、死んでしまっているのではないだろうか──? 誰もが、そう思った時だった。 「これ以上・・・、お二人方には指一本触れさせん」 ルイージ「ひっ!?」 突如として、マスターハンドの傍らに現れた光の柱。 中から現れた紫色の体色をした異形の生物は、静かに、しかし力強くそう言い放った。 ネス「ミュ・・・ウツー・・・?」 ポポ「・・・何、・・・言ってるんだよ・・・!?」 ナナ「そんなっ・・・まさか・・・・嘘でしょっ・・・!?」 異形の生物──ミュウツーは、冷え切った視線をスマッシュブラザーズに向けると、ゆっくりと口を開く。 ミュウツー「私の役目は時間稼ぎ」 ドンキー「うおっ・・・!?」 ピチュー「っ・・・!」 言いながら、片腕を掲げるとクレイジーハンドの近くに居たドンキーとピチューがミュウツーの発するESPに捕らわれ、宙に浮かぶ。 ミュウツーが掲げた腕を振り下ろすと、二人が同時に他のメンバー達の元へ投げ飛ばされた。 自身の操った念力で投げ飛ばした二人にそれ以上の関心を示す事はせず、紫色の瞳でメンバー達を見据える。 ミュウツー「全ては、我が主達の為に・・・」 呟くと、ミュウツーの両手に紫色のエネルギーが収束した。 禍々しい力が黒々とした火花を散らせ続ける両手をかつての仲間達へ向けても、ミュウツーの表情は微動たりともしない。 この戦いに、終わりが訪れる気配はなかった。 続く 音楽提供:VGMusic 戻る