時は遡る──。


  その時代、最も文明の優れていると呼ばれた街。


  街の名は──忘れた。

  
  おぼろげながらにいくつか覚えている事がある。
  

  その街では、巨大なビルが立ち並び、幾多の自動車が排気ガスを撒き散らしながら通っていた。


  人類が望んだ町、望まなかった街・・・。


  全ての欲望が集まった成れの果て───。


  私達には、そう思えていた。


  欲望の成れの果てと化した街で、私達はひっそりと暮らしていた。


  街には、学校と呼ばれる・・・同い年の子供達が集い、勉学する施設があった。


  私達は、その施設に通っていた。


  否。通い始めていたと言うべきか。


  私達はまるで、絵に描いたような兄弟だと周りから良く言われていた。


  私は、頭が良いと言われていた。


  弟は、力が強いと言われていた。


  私達は双子の兄弟で、知恵と力が合わされば──、二人揃えば敵は無かった。


  そんな私達が悲劇に襲われたのは、先程述べた施設に通い始めてからだった・・・。


  


  二十八話  過去



  

「楽しみだなぁ。ここの学校で、どんな友達が出来るんだろうな、兄貴!」
「ああ、そうだな。楽しみだよ・・・。お互い、頑張ろうな」


私達兄弟は、様々な思いを胸に、その施設に入った。
校門と呼ばれる門をくぐり、施設の中へ進んでゆく。
機械文明に溺れた街の中でも、辺り一面を桃色に染め上げていた桜の木が、また初々しかった。


施設の中にはいくつもの部屋がある。教室と言われていた。
沢山の机や椅子が並び、私達が教室に入った時には既に半数以上の席に見知らぬ子供達が座っていた。
彼等が私達の同級生。これからの生活で、彼らと友人関係を築いてゆくはずだった。


最初は上手くいっていた。
すぐに彼等と私達は打ち解ける事が出来た。
私も。弟も。
そう、最初は。
最初だけは、上手くいっていた。


それが崩れ始めたのは、後に開始された授業中の出来事だった。
文明化の進んだこの街での勉学をする場所だ。
出される問題の難易度も、お前達の解いてきた問題の比ではないはずだろうな。
しかし、事もあろうか私はその問題を全て解いて見せた。
同級生達は、みんな唖然としていた。


次第に、私は恐ろしい事に気がついた。
同級生達が、私の──自分で言うのも何だが、私の頭の良さに嫉妬していたのだ。
気づくまでに、かなりの時間を要した。
全く私への彼等の態度が同じだったから、全く気づかなかった。
私がこの事に感づき始めた頃だっただろうか。・・・私は同級生達に無視され始めた。


私が誰かに話しかけても何も答えようとせずその場から去ってゆく。
私が誰かの近くを歩けば、その誰かは軽蔑するような視線を私に突き刺しながらその場から遠ざかる。
更にそれが、弟までをも巻き込む事になろうとは思いもしなかった。


私がいじめを受けている事を知った弟が、同級生の一人に殴りかかったのだ。
どうやら、その同級生が弟の前で私の悪口を言ったのに激怒して思わずやってしまったらしい。
それがきっかけで、弟までがいじめの対象とされてしまったのだ。
私と弟へ対するいじめは留まる事を知らずどんどんエスカレートしていった。


時に殴られ、時には集団に罵声を浴びせかけられたり。
親が教師達にその事を訴えるも、何の解決にもならない。
私達は揃って学校に行くのをやめてしまおうか、などと考えた。
だが、そんな事をすればどうなる?
私達の為に、学校に行かせてくれている親の苦労を無駄にする事になってしまう。


ただただ怒りと憎しみといった感情が私達の中で渦巻いていたある日、夢を見た。
それはハッキリとしていて、不思議な夢だった。真っ暗な世界、いや・・・星が光る宇宙の様な世界。
そんな世界に、私達兄弟は居た。
そして、私達の前には、妖しく光る二つの光が。
訳も分からず二人でその光を眺めていると、突然片方の──私達から見て、右側の光から何か、言葉が発せられたのだ。


──お前に力を授けよう。
   力とは創造力・・・創造、イメージ!! 
   物をイメージして、現実に作り出す能力・・・
   この力を使役して、世界の神に光臨せよ!


「・・・・なん・・・だ・・・?!」


朝起きると、突如頭の中に何かの言葉がつぎ込まれるような感覚に陥る。
まるで何かの力を手にしたような・・・唐突な出来事だった。
この夢の事を弟に話すと、驚く事に全く同じ夢を弟も見ていたと言うのだ。
その日一日、ずっと夢の事を不思議に思っていた。


それから数日後。
また、同じような夢を見た。星の輝く宇宙の様な世界。
やはり私達兄弟が夢の世界の中に立っていて、目の前にはあの二つの光。
今度は、左側の光から言葉が発せられた。
  

──お前に力を授けよう。
   力とは、破壊力・・・破壊、壊す事!!
   物を破壊する事をイメージし、現実の物を壊す能力・・・
   この力を使役して、世界の神に光臨せよ!


「・・・・兄貴」
「・・・・・ああ」


翌日、弟が私に深刻な顔で尋ねてきた。
私達は話し合った。
本当に、これはただの夢だったのだろうか?
ただの夢なのだとしたら、あまりにもおかしい事がある。
何故兄弟揃って、全く同じ夢を二度も見るのだろうか。
本当に夢だったのかどうかを確認するのは簡単な事だ。
夢で言われた通りの事をすれば良い。
本来ならとてもバカ気ている事だとも思いつつも、試さずには居られなかった。


まず、私は『創造力』を試す事にした。
頭の中でとりあえず、鋭利で、素朴な造りのナイフをイメージしてみる。
するとどうだろう。私の目の前に──、頭の中で考えた通りの物・・・、
鋭利な刃先を持ち、何の飾り気も無い素朴なナイフが青い光と共に現れたのだ。


私達は心底驚いた。
衝動的に、私は頭の中で『破壊力』──、ナイフが破壊される瞬間を考えていた。
が、何も起こらない。身体を震わせながら、恐怖に近い眼差しでナイフを見つめていた弟に破壊力を試してみる様に促す。
弟が目を閉じて念じる。次の瞬間、赤い光がナイフを包み込み、その光ごと粉々に砕け散った。
ナイフが砕け散った後、床の上に薄く、半透明の赤いガラスの破片の様な物が散らばっていた。
 

何もかもが、分からない事ばかりだった。
だが、一つだけ、何となく・・・分かったことがある。
私達はその力を手にした、『特別な人間』だということを。


それが始まりだった。
私達は、私達をいじめていた者達に復讐を企てた。


背後から対象の頭上に、巨大な岩石を創造して落としたり。
血のように真っ赤な光に相手を閉じ込め、粉々に砕いたり。
相手とすれ違う瞬間に握り拳の中に刃物を創造し、相手の心臓を一突き。
標的にした人物の後ろの壁を破壊して、粉々に砕かれた瓦礫で押し潰し。


とにかく、私達は片っ端から復讐をしていった。
たったの一日で十数人の死者を出した学校は、しばらくの間一般人の出入りを禁止された。
それでも私達は外出し、行く先々で学校の関係者どもをしらみつぶしに探し、次々と殺していった。


しかし、まだ、生き延びている奴等は残っていた。
奴等に対する憎悪と憎しみと奴等を殺す快感と嬉しさを、
全てを胸に溜め、私達は眠りについた。
また、不思議な夢を見た。・・・しかし、その夢はあの時の夢とはまた違った。
・・・・宇宙空間に存在するのは二つの光のみ。
その光の妖しい輝きは失われ、代わりに弱弱しい煌きとなって、宇宙空間の星の一つかと錯覚した。

  



──与えられし力をこれ程までに間違った方法に使うとは。・・・こうなれば仕方が無い。


──あの兄弟に裁きを与えなければならぬ。


──しかし、あの兄弟に与えてしまった力を取り戻す事は出来ない・・・。


──・・・よって、彼等は、残る我々の力で。


──我々の力尽きるまで、世界の調整をさせる様に操るしかない。


──だが・・・我々が力尽き、現世から消え去りし時、どうなるのだ?


──・・・・・あの兄弟が自我を取り戻し、何を考え、何を始めるか・・・。それは誰にも、分からない。




二つの光が消え入りそうな声で会話を交わす。
その時私には何の事を話しているのか、全く見当がつかなかった。
視界が白くぼやける。
眠りから覚め、既に夜明けだと言う事が知らされる。
そこであることに気づいた。
急激に私の視点が、高くなっていることに。


「・・・・・・?」


訳が分からず、部屋の隅にある鏡を見てみる。
・・・・絶句した。
同時に、先程の夢の成す意味も薄々感づいてき始めた。
急いで弟の部屋に移動するが、弟は・・・・弟も・・・・。


私達兄弟は、揃って巨大な右手袋と、左手袋と化していたのだ。





















マスターハンド「そして、私達兄弟はその場から姿を消した・・・・
        あの二つの光に操られ、今までずっと、私達は創造と破壊を繰り返し、この世界を調整し続けてきた」
ルイージ「・・・・・・。」


彼が力無く語り終えたその時、スマッシュブラザーズは全員黙り込んでいた。
見計らった様に、クレイジーハンドが言う。


クレイジーハンド「俺達が自我を取り戻したときに芽生えた感情は何だったと思う?
         ──復讐心だ。 だからこそ・・・今を悠々と生きてるあいつ等を、
         この世界ごと消し去って・・・そして新たな世界を創ろうと決心した!
         もう一つ、教えてやるよ。・・・俺達がお前等を狙った理由・・・・、
         スマッシュブラザーズの中に居る、神々の力・・・トライフォースを宿す者をいぶり出し、その力を手に入れる為だ!
         そのトライフォースと俺の破壊力を併用させれば、一瞬でこの世界を消し去る事さえも可能となるッ!」
マルス「・・・・・・」
ロイ「・・・・・・・・」


スマッシュブラザーズを襲撃した理由を語るクレイジーハンド。
誰も反応は返さず、両手の事を睨みつけたまま。
気がつけば、マスターハンドとクレイジーハンドは床を離れ、宙を浮いていた。


マスターハンド「私達の犯した殺人は、あろう事か私達の家族にまで影響が及んだ。
        警察達は私達が殺人を犯したと見破り、私達を手引きして逃がしたのが、
        私達の家族だと言う疑いを持ち、家族全員を逮捕してしまった・・・」
フォックス「・・・いじめられていたお前等が、学生達の殺人事件直後に姿を消せば、疑われない方が変だ・・・そうだろう?」
クレイジーハンド「あぁ・・・・後に気がついたよ。死体も消し去れば良かったと後悔した。
          それで、釈放されたものの、周りから迫害されて苦しむ家族を見て、俺達は家族を殺した」


淡々と語るマスターハンドに、むしろ哀れみの目で彼を見つめながら言ったのはフォックス。
クレイジーハンドが本気でそう悔やみながら言い放った言葉に、拳を握り締めてポポが口を開く。


ポポ「間違ってる・・・間違ってるよっ。いくら辛かったからって・・・みんな、殺して良いはずが無いでしょ!?」
マスターハンド「そうせざるを得なかった。奴等を殺さなければ、私達は自害していただろうな。
         家族も殺さなければ、あれ以上に辛い思いをさせる事になってしまっていた」
ゼルダ「あなた達が殺人に及んだ原因・・・それは、あなた達が強い心を持とうとしなかったからじゃないでしょうか?」
クレイジーハンド「・・・・・・・・・何・・・・・・・?」


訴えるポポの言葉を受け流すマスターハンドに、唐突にゼルダがそう言った。
ぴくりと反応を示したのはクレイジーハンド。そのままゼルダは続ける。


ゼルダ「あなた達がもっと努力して・・・信用を得て・・・、
    どんな事にもめげない、不屈の心を持っていれば・・・そんな、哀しい事をしないで、済んだのでは・・・?」
マスターハンド「今時そのような理屈が通ると思ったか・・・?この世界は腐っている!
        そんな、腐りきった世界で心というものが通用するはずが無い!だからこそ!この世界を破壊し!
        澄み切った心であふれる素晴らしい世界を創るのだ!!」


憤った様子でマスターハンドが叫び、指先をゼルダに向ける。
頬に汗を伝わせ、ゼルダが一歩その場から退く。
代わりにリンクが、彼女の脇から前に出てきて、はるか高くに滞空しているマスターハンドに叫ぶ。

  
リンク「そんな、この世界を犠牲にして創った世界なんて、微塵も素晴らしい世界だと思えませんよッ!!」
クレイジーハンド「黙れ!!お前に何が分かる、何も分からねえだろうなぁ!?俺達の、兄貴の、苦しみや悲しみがッ!!」
マスターハンド「そうだ・・・そうだそうだそうだ!!私達の、心の傷・・・ズタズタに引き裂かれた心が!
        貴様等の節穴の目には何も映るまい!貴様等も、あいつ等も、この世界も!!
        全てを・・・!無に還してやるわぁぁぁあッ!!!」


ついに戦闘態勢に入った両手が怒り狂った様子で叫び声を轟かせる。
メンバー達も、それぞれ構えて、両手の事を見据えた。  
  

ルイージ「絶対にやらせない・・・世界を終わりになんて、させないっ!!」
ネス「・・・・その抑えきれない悲しみと、苦しみと、怒り・・・共に君達を葬ってあげるよ・・・マスターハンド、クレイジーハンドッ!」
ガノンドロフ「トライフォースは・・・返してもらうぞ・・・!」
クッパ「貴様等に勝ち目は無い・・・この愚かな戦争に、今、終止符を打つのだ!」
ドンキー「あぁ、終わりだ・・・この辛い闘いを・・・・終わりにしてやらぁぁあ!!」


メンバー達が口々にものを言う。
強い信念の込められたその眼差しに、一瞬たじろいだ様子を見せた両手だったものの、
すぐさま緩みかけていた構えを取り直して、メンバー達に向き直る。

  
マスターハンド「ふっ・・・くくっ・・・・、はぁはははははははッ!!!愚か者どもが・・・粋がった所でぇッ!!」
クレイジーハンド「俺達兄弟に勝てると思うなよ・・・!ふふ、はははッ!ひゃはぁーッはッはッはッ!!!」

  
不敵に笑い声を上げると、両者とも一気にスマッシュブラザーズへ襲い掛かった。






続く





音楽提供:ONE's


 
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