二十二話 VS 打ち壊す者




マスターハンド「・・・創り出す力──創造力と、打ち壊す力──破壊力。
         それら二つの力をそれぞれ持つ私達が合わされば、どうなるか?」
クレイジーハンド「一瞬でお前等全員、殺しちまえるぜ。
          だが、そうする前に、目的のものを宿す奴をいぶり出してやるよ」


言い放った後、両手が同時に耳が痛くなる程に野太い笑い声を上げた。
ほとんどのメンバーが状況をうまく掴めていない中、容赦なくマスターハンドとクレイジーハンドが、戦闘態勢に入る。
両手は同時に切れた手首から橙の炎を噴出して、闇の中を滅茶苦茶に飛び回りはじめる。
素早すぎる動きに惑わされるメンバー達。内一人、リンクが次の瞬間突っ込んできたクレイジーハンドに吹き飛ばされていた。


クレイジーハンド「くはぁーはははッ!!いいのかぁ、何もしなくてよぉ!?」
マスターハンド「さもなくば今ここで、時の勇者の命を断ち切っても良いのだぞ・・・!!」
ゼルダ「・・・・!」


再び闇の中へ飛び去りながら言い残してゆくクレイジーハンド。
凄まじい衝撃に倒れこんだリンク目掛け飛来するマスターハンドの嘲笑の混ざった言葉。
弾かれたように床を蹴り、倒れるリンクの前に飛び出したのはゼルダだった。
マスターハンドと接触する寸前にゼルダは自身の身体をネールの愛と呼ばれる魔法の防御壁で覆った。
その程度の防御では、ゼルダ本人のダメージを防ぐ事までは不可能だったものの、
魔力を漲らせた防御壁の破片がマスターハンドの身体を切り裂き、動けないリンクをマスターハンドから守り切る事が出来た。


リンク「・・・知恵のトライフォースの、持ち主だったとは・・・言えない様な、行為ですよ・・・私など、守らなくても・・・」
ゼルダ「助けてもらっておいて何を言いますか。・・・良いですか、リンク。
    私達は何としてでもあの両手を止めなくてはなりません。・・・・ですが、私では大した戦力にはならない。
    戦力となるあなたや、他の方達を守り、どんなに些細な威力でも、反撃して彼等の体力を削らなくては・・・・・。
    少しでも、皆さんの助けになりたいのです。・・・どうか、ご理解を。・・・勇者」
リンク「・・・・・・・・」


よろりと立ち上がったリンクが途切れ途切れにゼルダの行為に抗議するも、
真っ直ぐな眼差しでリンクを見据え、ゼルダも立ち上がりながら、リンクにそう言った。
言葉の出てこないリンクに、満足気に微笑むと、ゼルダは両手に魔力を収束させ、再び向かってきた両手に向き直る。


ゼルダ「説教の続きはあの両手を倒してからです。
    ・・・さあリンク、参りましょう」
リンク「・・・続き、あるんですか・・・。分かりましたよ、姫。共に奴等を討ちましょう」
マスターハンド「喰らええええぇえぇッ!!!」


豪速で飛んで来たマスターハンドの姿は、まるで流星の如く。
即座にメンバー達が両脇に避ける。彼等の間を舌打ちと共にマスターハンドが通り抜けてゆく。舌があるのかは定かではないが。
次に飛んできたのはクレイジーハンド。だが、マスターハンドの飛び去った軌道とはやや違う。
クレイジーハンドの体当たりはメンバーの誰かではなく、ステージの中央付近へと向けられた。
ステージ上に散乱していたマスターハンドの創造物がふわりと浮いて、目に見えない衝撃がメンバー達の足を貫く。
誰もが思わず片膝をついたり、崩れ落ちたりする者も出てきた。しかし、そんな状況であっても、ただ一人だけ、
ステージへと拳を打ちつけたクレイジーハンドに向かって駆けてゆく者が居た。


リンク「でやぁあああああっ!!」
クレイジーハンド「なっ・・・ぐおあぁッ!」


リンクの剣はクレイジーハンドを横一線に斬りつけた。
驚愕し、動揺する様子を見せたクレイジーハンドが慌てて宙に浮き上がりリンクから距離を取る。
構えなおすリンク。だが、そこにまたしても、風を切って、凄まじい速度で突っ込んできたのはマスターハンド。


マスターハンド「潰れろぉおッ!!!」
ガノンドロフ「・・・・はぁッ!」
マスターハンド「っが・・・そん、な、バカなぁ!?」


マスターハンドがリンクを押し潰そうとするも、それは叶わなかった。
脇から飛び出してきたガノンドロフの鍛え抜かれた両手がマスターハンドの巨体を受け止めていたのだ。
先の戦いでの、ドンキーから受けた全く同じ驚きと屈辱に、マスターハンドは怒気を帯びた叫び声を張り上げる。


マスターハンド「人形風情がぁああッ!!私をナメるのも大概にしろぉおおおお!!!!」
クレイジーハンド「兄貴、落ち着けッ!!」


クレイジーと名のつく左手よりも先に怒り狂ったのはマスターハンドだった。
ガノンドロフを突き飛ばし、掌を晒して五本指を開くと指先から青白い光線を発射した。
狙いが定まる事は無く、ただがむしゃらに指を動かして光線を操る。
リンクもガノンドロフもそれには怯み、マスターハンドの背後に居た者には全く影響は無いと言う事を伝えようとした
クレイジーハンドさえもが、その光線によって近づくことが出来ない。


ゼルダ「ディンの炎っ」
ネス「PKファイヤーっ!!」
フォックス「ファイァアアアアーーーッ!!!」
マスターハンド「あがぁッ!ぐぅぁああ!!」


そしてやはり、後ろからの攻撃。三人の火炎系攻撃がマスターハンドの身体を焼いた。
手袋の所々が赤く燃え上がり、悲鳴を上げながらマスターハンドが身体を大きく揺らして炎を振り払う。
指先から放たれていた光線が途切れ、そこに隙を見出したピチューが素早くマスターハンドの真下へ潜り込み──。


ピチュー「かみなりっ!!!」
マスターハンド「うがあああああああぁああぁぁぁッ!!!!?」
クレイジーハンド「あッ・・・兄貴ぃいーーーーッ!!!」


真上から落ちてきた金色の閃光がマスターハンドの甲を貫いた。
身体中に電撃を巡り回らせ、絶叫しながら激しくマスターハンドは滞空を解いて床に倒れこんだ。
もちろん、ピチューはマスターハンドの落ちた場所からは避難済みだ。


ルイージ「やったッ・・・マスターハンドを、倒した!」
フォックス「どうした?・・・お前等が二人合わされば、俺達なんか一瞬なんじゃなかったのか・・・?」
クレイジーハンド「くっ、そがぁああ・・・黙れ、黙りやがれぇ!!カスどもがァッ・・・!
          俺が・・・俺がッ!てめえ等全員ぶち殺してやるッ!!粉々に、ぶっ壊してやるッ!!!」


叫び声を上げながらクレイジーハンドがマスターハンド同様に指先から光線を発射。
のみならず、何とその状態のまま、クレイジーハンドが突進してきたのだ。
高熱の光線が床を焼きながら、豪速で迫ってくる巨大な掌。誰もがその行為に驚いた。
対処の遅れたポポとルイージ、ガノンドロフが巻き込まれ、吹き飛ばされる事さえ出来ずに光線に焼かれ、そのまま掌握される。


クレイジーハンド「内臓脳味噌目ン玉、中身全部ぶちまけるんだなぁ!!!」
ガノンドロフ「ぐっ・・・ぉおおッ!!」
ポポ「あっ・・・ぁああああ!!」
ルイージ「うぐぁああああああぁあぁッ!!!」


クレイジーハンドに強く握り締められ、三人が苦痛に叫ぶ。
彼等を助けるべく動き出したメンバー達が一斉にクレイジーハンドに飛び掛る。


フォックス「おらああぁぁっ!!」
ナナ「ってぇええいっ!!」
リンク「やぁああああああッ!!!」


真っ先に飛び出したフォックスに続いて、ナナとリンクがクレイジーハンドに攻撃を仕掛ける。
蹴り飛ばされ、ハンマーと剣を打ち付けられても尚、クレイジーハンドは低く呻いて身体を揺るがすのみで、
決定的なダメージを与える事が出来ない。そこにやって来たのがクッパとドンキー。
力のある二人がそれぞれ拳を振るってやっと、三人を握り締める力が緩んだ。


マルス「はぁああぁああっ!!」
ロイ「だああああぁぁぁッ!!」
クレイジーハンド「く、・・・!!」


力が緩んだ所を休む暇なく繰り出されたマルスとロイの剣撃によってクレイジーハンドの指が開いた。
ぼろぼろと手の中から三人が落ちてゆく。下に居たゼルダとネスが三人を魔力とPSIで受け止め、
悔しがるクレイジーハンドの甲に素早く飛び乗ったピチューが頭上に雷雲を呼び出した。


クレイジーハンド「くそ、いつの間に──!?」
ピチュー「喰らえぇえええええ!!!」


驚愕するクレイジーハンドを、ピチューごと雷が蝕んだ。クレイジーハンドの凄まじい叫び声が辺りに轟く。
マスターハンド同様に床に倒れこんだクレイジーハンドからピチューが転がり落ちてきた。
彼自身、電気の力を上手く扱えない為に、今まで使ってきた電気によってピチューも相当なダメージを受けているはずだ。
ゼルダが彼を助け起こしに駆け寄っていった瞬間、勢い良くクレイジーハンドが飛び上がった。


クレイジーハンド「ぶち壊してやる!!!」
ピチュー「うぁあッ・・・!?」
ゼルダ「くっ・・・・!?」


言いながら、ピチューをはたき飛ばしてゼルダに激突させる。
二人ともメンバー達の集っていた場所へと飛ばされていったのを確認すると、
素早くクレイジーハンドがメンバー達の頭上へ移動し、指が千切れんばかりに手を開いた。


クレイジーハンド「焼け焦げちまえぇええッ!!」
クッパ「ぬぅうっ・・・!?」
ドンキー「マジかよ・・・!?」
ナナ「うわぁああああッ!!」


メンバー達を驚愕させたのはクレイジーハンドの思いのほか素早い動きではない。
クレイジーハンドの掌から、無数の黒い球体──爆弾が降り注いできた事だった。
避ける時間も残されてはいない。次々と着弾した爆弾は爆発し、朱と橙色と、赤紫色の炎を飛び散らせる。
煙が晴れると同時に、クレイジーハンドが憎々し気に舌打ちした。
メンバー全員がシールドを張って、クレイジーハンドの攻撃から身を守っていたのだ。
それでも彼等のシールドはブレイク寸前な程までに磨り減っていて、クレイジーハンドの攻撃がいかに強力かを思い知らされる。


マルス「なんて・・・攻撃力だ、いくらあの数の爆弾でも、先程マスターハンドが降らしてきた
    ボム兵の数よりは遥かに少ないはずなのに、その上この人数で、威力は分散させていたはずなのに・・・」
ロイ「しかもそれでシールドを張っても・・・ここまで、削られるなんて、ね・・・俄かには、信じがたい事だよ」


シールドを解いたメンバー達がクレイジーハンドの元から離れる。
もう一度今の攻撃を喰らったらお終いだ。
しかし、作戦を練る時間はなかった。クレイジーハンドが紫の炎を纏わせた人差し指を突き出して、
勢い良く突いてきたのだ。狙われたのはクッパ。腹部に走る強烈な衝撃にがくりと崩れ落ち、
容赦なくクレイジーハンドはそのクッパに電気を纏った二発目、冷気を纏った三発目を突き込んだ。


クッパ「ガッ、・・・はァァッ・・・!」
ルイージ「く・・・クッパぁッ!!」
クレイジーハンド「次はぁぁッ!てめえだぁルイージィ!!!」
ルイージ「───ッ!!?」


クレイジーハンドは握り拳となって、ルイージを床と挟む形で突進した。
抵抗する間さえ与えられなかったルイージが無残にも押し潰された──かと思われた時、
クレイジーハンドはルイージのすぐ脇へと拳を打ち付けていた。


ネス「ふう・・・間に合って、良かった」
クレイジーハンド「くそっ・・・てめえか、ルイージを引っ張りやがったのはぁ!!?」
ネス「そうだよ、僕がヨーヨーをルイージに巻き付けてこっち側に引き寄せたんだ」


ネスが言いながら、ルイージの腕からヨーヨーを引き戻して手の中に収めた。
唸るクレイジーハンドがネスに向き直ったその瞬間だった、クレイジーハンドの気がそれていたルイージが床を蹴って跳躍する。
腰の辺りに落とした手には、ありったけの炎を込めて。


ルイージ「ファイアジャンプパンチ!!!」
クレイジーハンド「うぐっ!?ぐがぁぁあぁああああぁぁあああッ!!?」


火炎を纏った腕に真下から打ち付けられたクレイジーハンドが悲鳴を上げる。
ルイージによって晒した隙を、スマッシュブラザーズが見逃すはずが無い。
ネスのPKフラッシュによる光の爆発がクレイジーハンドの身体を灼き裂き、
フォックスのブラスター、ゼルダのディンの炎が悶え苦しむクレイジーハンドに更なる追撃をかける。


クレイジーハンド「くそぉ!くそぉおぉおおお!!!」
マルス「みんな、行くぞ!」
ロイ「喰らえぇええ!!」
アイスクライマー「「はぁあああああッ!!」」
ドンキー「ウオオオオオオォッ!!!」


マルスとロイの飛翔した剣がクレイジーハンドを切り刻む。
アイスクライマーの冷気を纏わせたハンマーによる打撃と、ドンキーの反対側からのヘッドバッド。
最後に、リンクとガノンドロフが剣と拳を構えて、クレイジーハンドと同じ高さまで跳躍した。


リンク「最後です・・・!回転斬り!!!」  
ガノンドロフ「終わりだ・・・!魔人拳!!!」
クレイジーハンド「クッ・・・・!」


それぞれの一撃がクレイジーハンドに叩き込まれる。
退魔の剣に切り裂かれ、魔の力そのものに打ち据えられ、クレイジーハンドが絶叫する。


クレイジーハンド「うぐ・・・がぁあああああああああああああッ!!!!」


クレイジーハンドが滞空し切れずにマスターハンド同様、床に伏せる。
彼は、身体を痙攣させながら、恨めしげに何かを繰り返し呟き始めた。


クレイジーハンド「くそ・・・俺達の・・・野望がぁ・・・こんな・・・奴等如きに・・・くそ・・・くそぉぉ・・・」
ピチュー「終わった、の・・・?」
クッパ「その・・・様だ、な・・・ぐぅっ・・・」


よろよろとピチューとクッパがおぼつかない足取りで歩み寄ってくる。
フォックスが前に出て、クッパの肩を持ち、ピチューをもう片方の腕で抱えてやると、
クレイジーハンドの方に向き直り、鋭い視線を投げかけながら口を開く。


フォックス「・・・教えてもらうぞ。お前達は俺達を殺し、操り、何をしようとしていたんだ?」
クレイジーハンド「・・・・・・、・・・・・・それ・・・・は・・・」
マスターハンド「私が、言おう」


口ごもるクレイジーハンドの後方から、気がついたらしいマスターハンドが横たわりながらそう言った。
全員の視線が彼に集まる。そんな中、マスターハンドは静かに話し始めた。
彼等の目的を。作戦を。そして、それらの事に及んだ動機を──・・・。




続く



音楽提供:VGMusic


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