「はっ・・・。はぁッ、はぁッ、はぁッ・・・!
 な・・・・何なんだよ・・・っ!一体さぁ・・・!?」
「あの野朗ッ・・・いきなり暴れ出しやがって、ぐッ・・・くそっ。
 他の奴等は・・・無事、なのかッ・・・!?」


暗く、狭い室内で荒い息遣いをする者達が、
何者かに対して悪態をつきながら、二人とも震える手で部屋の中を探る。
その手が何かにあたり、ゴトリと鈍い音が響き、二人同時に何かに怯えるかのように辺りを見回す。
しかしこの部屋は暗く、狭い室内。二人の他に誰も居るはずが無い。
・・・居るはずが無いというのに、すぐ傍にでもその何者かが居る様な気がしてならない。
怯えながらも、二人は手の触れた物体を掴み取る。物体は箱状で、中に何かがいくつも詰め込んである。
先程まで彼等の顔に浮かんでいた怯えが消えた。代わりに、気が狂ったかのように笑い声を張り上げた。






 二十一話 混乱と恐怖、発展する戦い






「ほほほほっ。皮肉なものねぇ、サムス、プリン!せっかくあなた達は正気に戻してもらったのに、
 元に戻っていない私達と同じ部屋に逃げ込んで、こうして出くわしてしまうなんて!」
サムス「・・・そのセリフ。あなた達が、自分で自分を正気じゃない事を肯定するようなものだと思うけど」


場所は変わって、実況室。彼女等の発言からして既に正気に戻っているらしいサムスとプリンの二人が、
桃色のドレスを着込んだ女性と、黄色い体毛を生やしたねずみポケモンと対峙していた。
女性の方がどこか気品を漂わせながら嫌味らしくサムスとプリンに言い放つのに対して、
サムスが彼女の言葉の揚げ足を取るような言葉を口にする。


「そりゃあね。やっぱり現実的には考えられないんだよ。ついさっきまで僕達と同じ思想を持っていた仲間達が、
 ウォッチが何かをした途端にマスターハンド様を裏切って、こうして僕達と敵対する。
 もしかしたらこれが本当の洗脳の類なのかもしれない、とも思ったけど違う。明らかにウォッチはそんな力、持っていなかった」
プリン「・・・だったら、どうして」


サムスの言葉に、女性ではなくねずみの方が真剣な眼差しで答えた。
堪えられない、といった雰囲気でプリンが反論しようとするが、サムスが片腕でそれを制する。


サムス「ピーチ、ピカチュウ。今から、私達があなた達を正気に戻してあげるわ。
    ・・・・・ウォッチに、やってもらった様に・・・・あなた、達をッ・・・!」
ピーチ「・・・・・あんな、あんな奴なんかと。同じ道を進むと言うのかしら・・・っ!?」
ピカチュウ「・・・・・・・」
プリン「・・・・・・・・」


そう言ったサムスの表情はスーツ越しにも分かるほどに曇っていた。
両手を握り、震わせながら言い返してきたピーチの表情は、怒りと悔しさの入り混じった様なものだった。
ピカチュウとプリンが、そのやり取りを聞きながら静かに俯く。
・・・ほんの少しの、静寂が辺りを包み込んだ。
静寂を破り、不意にサムスがガンポッドから直進ミサイルを発射した。
歯軋りし、ピーチがその場から脇へと跳ぶ。小回りの聞くピカチュウは、
サムス達の元へと駆けながら、飛来するミサイルを回避すると同時に床を蹴ってサムスに飛び掛る。


ピカチュウ「喰らえッ!」
サムス「くっ・・・!」


空中を舞いながらピカチュウがサムス目掛け電撃を放つ。
サムスは素早く飛び退いて、電撃を避ける。標的を失った電撃が床を黒く焦がした。
立て続けに、黒光りするフライパンを構えたピーチが突進してくる。


ピーチ「っやぁあああああ!!!」
プリン「っ、・・・させないッ!」


飛び退き、僅かに隙を晒してしまったサムスの脳天に、
フライパンを振り下ろそうとしたピーチの腹部にプリンが渾身の体当たりを喰らわせる。
悲鳴を上げたピーチがフライパンを取り落とし、後方へと吹っ飛んでゆく。
少し遅れて、ガランと甲高い金属音を上げて、ピーチのフライパンが落下した。





子供リンク「が、はッ・・・!」
「・・・・・・・・・・」


力なく吐血し、床へ倒れこんだのは子供リンクだった。
くらり、と不気味な雰囲気さえも漂らせ、振り向いた顔は表情が無かった。
目の前で起こっているかつて無い恐怖に縛られた身体は、いくら動かそうとしても動かない。言う事を聞かない。
メインコンピューターを覆う、誰もが傷一つ付けられなかった保護ケースには、三本もの亀裂が入っている。
この部屋に居るのは二人だけ。ただ恐怖し、その場から動く事のかなわない、
赤い帽子を被った男──マリオと、たった今、マリオの目の前で子供リンクを殺害した存在のみ。


マリオ「く、来るな・・・!来るなッ!ぁ・・・あああああ、誰か、誰か助けてくれよっ!!
    やめろ、嫌だ、近寄るなあっ!!僕・・・いや、俺はマリオだよ!お・・・お前の仲間だろ!?そうなんだろッ!?」
「・・・・・・お前は・・・マリオではない。私の目を欺き・・・偽の存在が、マリオとしてマスターハンドに肩入れしていたなど。
 到底、赦せる事ではないッ・・・赦せる事では、ないんだッ!!」
マリオ「ひぃッ・・・・う、うわあああああぁぁああああああああああッ!!!!?」


室内に凄まじい打撃音と、何かが潰れる様な音が響く。
赤黒い鮮血が、床や壁、天井までにも飛び散った。
もはや原型を留めていないマリオを踏みつけ、その存在は憎しみに満ちた声を張り上げる。


「偽者など消えろッ!!私がつくりたかったスマッシュブラザーズは、
 こんな腐りきった集団などではないッ!!誰が偽者かも分からないこのような集団ッ・・・!
 スマッシュブラザーズの結成者であるこの私が、直に消してやるッ!!!」





「くっ、一体何が起こってるというんですか・・・!?」


焦った様子で廊下を駆け抜けてゆく者が一人。
度々何かに怯える様に、追われているかの様に後ろを振り返って誰も居ない事を確認する。
敬語口調に緑色の体色をした恐竜は、息を切らせながら競技場の入り口の広間──、
もとい出口への扉のある部屋へと繋がる大きな扉を開いて転がる様に部屋の中へ入り込む。
しかし、室内を見回した瞬間、彼の両目が見開かれる。


「・・・・ヨッシーか」
ヨッシー「・・・ミュウツー・・・さん・・・・・ですか」
ミュウツー「ここに、何の用だ」
ヨッシー「きっ、決まってるじゃないですか・・・『奴』から逃げる為に、ここに来たんですよ」


広間の中心に居たのは、紫色の体色をした異形の存在、遺伝子ポケモン、ミュウツーだった。
唐突で、脈絡の無い彼の問いに、びくりとかすかに震えたヨッシーが、裏返った声でそう答えた。
ヨッシーの答えに、ミュウツーは表情を変えずに、目だけを細めてヨッシーの事を見つめる。


ミュウツー「・・・『奴』の様子がおかしくなったのは、お前達三人が終点から戻ってきてからだった」
ヨッシー「!・・・そ、そうですね。い・・・一体、どうしたんでしょうね、あの方」
ミュウツー「奴は怒り狂っていた。『お前はマリオじゃない』『偽者め』・・・などと、言っていた」
ヨッシー「・・・・それが・・・どうしたん、です・・・・?私には、関係ない事だと思うのですが・・・」


言葉を詰まらせるヨッシーに、彼の事を見つめていたミュウツーが片腕をゆっくりと向ける。
向けられた腕の掌に、紫の念動力が徐々に収束されていく。
それを見たヨッシーがひっと小さな悲鳴を上げて後ろに一歩、二歩とさがった。


ヨッシー「何のつもりです・・・!?」
ミュウツー「原因をつくったのはお前達だ。そして本物のマリオ達の気配がどこからも感じられない。
      ・・・・マリオ達を、どこにやった?」
ヨッシー「なっ・・・!?し、知ってるわけないじゃないですか、マリオ達の事なん・・・ッ!」
ミュウツー「呼び捨て、か。・・・ボロを出したな、偽ヨッシー。わざわざ心を覗くまでも無い」
ヨッシー?「く、──くそっ!!」


言い放ったミュウツーの掌からいくつもの小型のシャドーボールが次々に発射される。
悔しそうに吐き捨てた偽ヨッシーが床を蹴ってその場から飛び退き、シャドーマシンガンを回避する。
偽ヨッシーの立っていた場所を通過した無数のシャドーボールが後方の壁に激突し爆発を起こす。
自らの放った技の末を見守る事もせず、無言でミュウツーが勢い良く尾を横一線に振るう。
背後へ回り込み、後ろから蹴りかかろうとした偽ヨッシーの悲鳴が上がり、そのまま仰向けに倒れこむ。


ミュウツー「諦めろ、貴様如きに私は倒せない」
ヨッシー?「なッ・・・なめるなぁ!!」


ふらりと立ち上がった偽ヨッシーが緑色の水玉模様をしたタマゴをミュウツー目掛け投げつける。
投げつけられたタマゴがミュウツーに直撃したかと思いきや、
タマゴはミュウツーに触れる寸前でねんりきによって止められていた。
ぐるりと回転し、軌道を真逆にされたタマゴが偽ヨッシーに向かって飛んで行く。
舌打ちした偽ヨッシーがそのタマゴを飛び越えて、更に空中ジャンプ。ミュウツーの頭上までへと跳んだ。


ヨッシー?「潰れろぉッ!!」
ミュウツー「・・・・・」


偽ヨッシーがヒップドロップでミュウツーの事を踏み潰そうと試みる。
が、その試みは失敗に終わる。緊急回避で攻撃を難なく回避されたのだ。
結果として、偽ヨッシーの渾身の一撃は床に尻餅落下という形に終わり、隙を晒した所をミュウツーの尾に殴り飛ばされる。
強く吹き飛び、壁に全身を強打した偽ヨッシーはずるりと壁にもたれかかる様に倒れこむ。
壁に片手をつけて、身体を震わせながら何とか立ち上がろうとする偽ヨッシーをミュウツーが一睨みする。
おもむろにミュウツーが両手の間に黒と紫の念動力を収束させる。それは徐々に大きな球体状に形作られていく。


ミュウツー「最期だ・・・。シャドーボール」
ヨッシー?「ッ・・・・・くそッ・・・・・!!」


呟き、ミュウツーが両手の間に造り出された念動力の塊を解き放つ。
迫り来るシャドーボールに恐れをなしたのか偽ヨッシーは歯をかみ合わせ、目を見開いた。
避ける間もなく、シャドーボールは標的に命中し爆発する。紫の炎が飛散した。


「・・・・・・・・・・・・・・」


その戦いを、ヨッシーが開いた為に半開きになっていた扉の隙間から覗き見る者が居た。
しばらくそのままミュウツーとヨッシーの事を睨みつける様に見つめていたが、
彼等の戦いに決着がついたのを見届けると、その存在はにやりと笑みを浮かべ、扉を完全に開いて部屋の中へ入り込む。
もちろん、彼の存在にミュウツーが気づかない訳が無い。ミュウツーが彼の事を見つめながら口を開く。


ミュウツー「・・・お前か。・・・偽者ではないようだな?」
「当たり前だ。俺が偽者の訳ねえだろう。そして俺はマスターハンド様の忠実な部下。
 お前もだろう、ミュウツー?行こうぜ、反逆者どもを狩りに・・・・!」
ミュウツー「・・・・・だが、競技場内には『奴』が居るはずだが?」


どこか躊躇いがちなミュウツーの言葉に、彼は不安の色一つさえ見せずに。


「あんな奴、恐れるに足らねえさ。俺達には、マスターハンド様がついてるんだからよぉ・・・!」
ミュウツー「・・・・・あぁ・・・。・・・そうだな・・・・・」





ピカチュウ「たあああああッ!!」
プリン「プリィッ!?」


ピカチュウの繰り出した電気ショックに身を灼かれたプリンが悲鳴を上げて弾き飛ばされる。
立て続けにでんこうせっかを駆使してサムスの周りを駆け回り、錯乱させる。
あまりの素早さについていけずに、狙いを定め切れないサムスへとピーチが飛び掛ってゆく。
咄嗟にミサイルを迫り来るピーチに撃ち、隙の出来たサムスへピカチュウが駆け回りながら電撃を浴びせかける。
モロに喰らったサムスが片膝を床につき、直進してゆくミサイルを軽々とピーチが避けて見せた。


ピーチ「・・・弱いわね。そんな半端な攻撃じゃ、私達を正気に戻す事なんてできないわよ」
サムス「・・・・・くっ」


そのままピーチがサムスに蹴りを入れる。
倒れこんだサムスが、苦しい姿勢ながらもガンポッドの銃口をピーチに合わせる。


サムス「こうして接近する時を狙っていたのよ・・・!」
ピーチ「───ッ!!」
ピカチュウ「な、・・・!!」


発射されたのは既にチャージの完了した、サムス必殺のチャージショット。
乱闘ステージ外で、メンバーとも言えど生身の人間が喰らえばただでは済まされない。
焦りつつもピーチが即座に両手で何かを目の前に突き出して、ショットを受け切ろうとする。
しかし、咄嗟のキノピオガードでは、完全に防御するには至らなかった。
盾として使われたピーチの家臣、キノピオが緑色の毒を含んだ胞子を噴出しながら、
ピーチ本人と共に壁際へと吹っ飛んでゆく。


ピカチュウ「へーぇ・・・僕達を正気に戻すとか言っておきながら、君達は初めから僕達を殺すつもりでいたのかな?」
サムス「いいえ、違うわ。あれは彼女がああやって致命傷は逃れるだろうと推測しての攻撃よ。
    ・・・・そうでもしないと、あなた達を救う事はおろか、互角に渡り合う事さえも出来ない」
ピカチュウ「言い訳は聞きたくないねッ!」


言い放ったピカチュウが、弾ける様に床を蹴り、わずかに放電しながらサムスへ頭から突っ込んでゆく。
それをグラップリングビームで捕らえ、サムスがピカチュウを大きく振り回してピーチの居る壁へと投げつける。
壁にピカチュウを叩き付けた、と思いきや、壁にぶつかる瞬間に受身をとって、その体勢のまま壁を蹴って再び突っ込んできた。


ピカチュウ「でんげきスクリュー!!」
サムス「ッ・・・!」


電気を纏い、回転しながら体当たりを仕掛けてきたピカチュウをサムスがガンポッドで弾き飛ばす。
空中で一回転し、床に着地したピカチュウが天井付近に雷雲を呼び出した。
雷雲から金色の閃光がほとばしったその瞬間、勢い良く転がってきたプリンがピカチュウに突撃し、吹き飛ばした。


サムス「ありがとう、プリン」
プリン「どういたしまして。・・・でも、まだやる気みたいだよ」
ピーチ「当然、でしょ・・・!?」
ピカチュウ「僕達は・・・僕達はッ!マスターハンド様の為に、戦い続ける・・・っ!」


ゆらりと立ち上がったピーチとピカチュウが、憎しみをぶつけるかのように襲い掛かってくる。





一方で、競技場の入り口からは遠く離れた無音の廊下を二つの足音が通り過ぎていった。
レーサー服を着用し、赤いヘルメットを被った長身の男と、その足元に小さな桃色の球体。
不敵な笑みを浮かべた彼等の手には何かが握られている。


「これだけアイテムがあれば、いくらあいつでも僕達にかなうはずが無いね。だよね、ファルコン?」
ファルコン「そうだな・・・へへっ、さっきまでビビってた俺達がまるで嘘のようだぜ。なあカービィ」
カービィ「ふふふッ・・・!そうだね、僕達はこれでもう怖いもの無しだ!さあどこからでもかかってきなよ、結成者とやらぁ!」


会話を交わす二人の後方には、半開きになったアイテムの倉庫の扉が。
そこから持ち出してきたのであろう、ファルコンが両手に握るビームソードを試し振りする。
その傍ら、レイガンを短い手の上で弄んでいたカービィが突然足を止めた。


ファルコン「・・・・どうした、カービィ」
カービィ「・・・どうやらさっそく来たようだよ。結成者の方じゃないらしいけどね」


言いながら、カービィがレイガンの銃口を近くの扉に向ける。・・・観客席へと続く扉だ。
次の瞬間、その扉が勢いよく蹴破られ、その中から、
目が痛くなる程に身体をピンク色にぎらつかせた大群がなだれ込んで来た。
やや遅れてワイヤーフレームで構成された人間型の戦闘機械までもが姿を現し、
ファルコンとカービィは、あっという間に謎のザコ敵軍団に取り囲まれる。
最後に、観客席へと続く扉の奥から、一体の赤い甲羅を背負ったノコノコが現れ、歩み寄ってくる。


司令塔ノコノコ「我々は・・・・・不滅・・・。お前達を・・・・抹殺する・・・」
ファルコン「・・・おいおい、何事かと思ったらザコ軍団の司令官さんかよ。
      勘違いもいい所だぜ。お前等!俺達はマスターハンド様に仕える者だ、退け!」
司令塔ノコノコ「我々の、役目は・・・・スマッシュブラザーズを、潰す事・・・。
        マスターハンド様に、歯向かう者に、死を・・・」
カービィ「・・・・ねえファルコン。あいつ、凄く深い傷負ってるみたいだよ。ほらあれ、・・・血塗れだ」


軍団の間から垣間見える司令官は、確かにボロボロだった。
片目から血が流れ出ている。更に左腕が引き千切られているのが確認できた。
甲羅は後ろに背負っている為良くは見えないが、真っ赤な色の甲羅に緑色の部分が小島のように残っている。
・・・・赤い甲羅などではない。あれは血を被った、緑色の甲羅だ。
彼はクッパのスピニングシェル≠喰らっても尚、奇跡的に瀕死の状態で生存していたのだ。
しかし既に正気は失っているようで、敵味方の区別さえつかなくなっている。
ただ、軍団の司令官という使命のみを、本能に刻み込んだまま。


ファルコン「反逆者どもとの戦いの末に、アレか。・・・よくまあ、出血多量で死ななかったもんだ?」
カービィ「そういえばマスターハンド様が言ってた様な気がするなぁ。
     司令官の役目を任せるから、生命力を飛躍的に伸ばしておいた、って」
ファルコン「早く言ってくれよ、それ」
司令塔ノコノコ「任務を遂行する・・・・・潰せ。殺れ、奴等を、殺せ・・・!」





プリン「プリィイッ!」
ピカチュウ「あぐぁッ!!」


掛け声と共に繰り出されたプリンの飛び蹴りがピカチュウに決まる。
悲鳴を上げて後方へ転がったピカチュウが、両頬の電気袋からパチリと電気を弾けさせる。
即座に体勢を立て直し、でんこうせっかでプリンの目の前へとピカチュウが移動する。
直後、両頬から短くほとばしった電撃がプリンを灼き、吹っ飛ばす。彼のスマッシュ技、ショートでんげきだ。


プリン「ぐぅっ・・・!」
サムス「プリンッ!・・・しばらくそこで休んでて、ここは私が」
ピーチ「どうしようっていうのかしらねぇ!?」


皮膚を黒く焦がしたプリンが転がってきたのを見やり、
焦りつつもサムスがそう言葉を投げかけ、ガンポッドを構えたその瞬間、前方からピーチが特攻してくる。
それも、両手に抱えたキノピオを、盾のように前に押し出す形で。
攻撃すれば毒の胞子が撒き散らされる。パワードスーツを着用しているとは言え、
元々そのスーツは生物と似たような仕組みだ。喰らい続ければスーツの内部からの損傷をもたらす事となり、
更に乱闘ステージ外のこの場所では尚更、そうなれば粉々にパワードスーツは打ち砕かれてしまうだろう。
一度ここは退いて、距離をとってから遠距離攻撃で──。その結論に至ったサムスがさがろうとした瞬間。


ピカチュウ「残念だったね?」
サムス「!!(──後ろからも!?)」


背後に回りこんでいたピカチュウが両頬から放電しながら、顔だけ振り向いたサムスに微笑みかける。
手負いのプリンはいつでも倒せる。だから今動けるサムスを先に片付ける、という算段だ。
あの電撃が効いたのか、既にプリンは気を失っていた。プリンからの助けは期待できそうに無い。
かといって、脇に避ければ背後からの素早い電撃で撃たれる。
動かなければキノピオを押し付けられて毒の胞子をまともに浴びる事となる。
ならば、跳べばどうだろう?これもダメだ、空中で動けない所をピカチュウに狙い撃ちされる。
ピカチュウを攻撃したら?・・・距離的に遠距離攻撃で撃つしかない。それでは、電撃を撃たれて相殺されてしまう。
・・・まさに八方塞。これ以上の対処法が、焦って頭の回転がきかないサムスには思いつかなかった。


ピーチ「ふふ、あはははっ。せいぜい無駄に足掻いて、痛みに苦しみに見舞われるが良いわぁ・・・!」
サムス「・・・・・・そうよ、そうだっ!こうすればっ・・・!」
ピカチュウ「なっ──・・・!?」


不意に振り向いたサムスがミサイルを背後に居たピカチュウ目掛けて発射した。
まさか攻撃が来るとは思っていなかったのか、驚きながらもピカチュウがミサイルを電撃で撃ち落す。
ミサイルが電撃に撃たれて爆発し、煙があがる。次の瞬間、ピーチとピカチュウが全く予想し得なかった事が起きた。
煙にまぎれて、サムスのグラップリングビームがピカチュウへ伸びてきたのだ。反応しきれずにピカチュウが再度、ビームに捕らわれる。
そのまま遠心力をつけて、ピカチュウを捕らえたままのビームをピーチ目掛け思い切り振るった。


ピーチ「いっ・・・ぁああああ!!」
ピカチュウ「うぐッ・・・がッ、・・・・はぁっ!」


ピーチに激突する寸前にピカチュウがビームから放され、素早くグラップリングビームはガンポッドの中へ収納された。
一方でぶつかり合ったピーチとピカチュウは互いに別の方向へと吹っ飛び、転がってゆく。
ピカチュウに至っては、ピーチのキノピオとも衝突し、噴射された毒の胞子を浴び、横たわりながら激しく咳き込んでいた。
そのピカチュウの倒れている場所へと向かって、サムスが歩み寄ってゆく。


ピカチュウ「グッ・・・かはぁっ、うぅぅッ・・・し、い、苦しいっ・・・!」
サムス「・・・・苦しいのなら、今すぐ・・・楽にしてあげるわ」
ピカチュウ「──!?・・・や、やめろォッ・・・く、はぁッ・・・がッ」


冷たく言い放ちながら、サムスが銃口をピカチュウに向ける。
目を見開き、ピカチュウが苦しみながらも、床を這ってその場から逃れようとする。


サムス「逃げても無駄。これで・・・終わりよ・・・・ッ!!」
ピカチュウ「ひッ・・・・!や、嫌だっ、僕は、っつ、まだッ・・・まだ死にたく、ぐッ!かはっ・・・
      やめろ、やめろやめろぉッ!・・・ッい・・・痛い、苦しいッ・・・くそ、くそぉおっ・・・!」
ピーチ「・・・・!?(サムス・・・まさか、本当にやる気・・・なの!?)」


荒い息遣いをするピカチュウに銃口を近づけたまま、
サムスがチャージショットを撃つべくエネルギーを溜め始める。
胸の辺りを両手で押さえながら叫ぶピカチュウは、既に戦意喪失した様だった。
その様子を見やり、サムスがふぅ、と息をついて、ガンポッドを下げる。


ピカチュウ「・・・・・・・・え?・・・あれっ・・・・?げほっ、ごほッ・・・」
サムス「・・・正気に戻ったようね、ピカチュウ。
    大丈夫よ、吸った毒は致死量じゃないから、回復アイテムさえ使えばすぐに治るわ」
ピーチ「・・・・・・・・・・くっ」


ウォッチの言っていた、マスターハンドの感情操作による支配から逃れる為の方法。
それが、『戦意喪失』する事だった。
元々戦う為の感情を詰め込まれてここまで豹変させられたのだから、
目的である『戦う事』を諦めさせる事で、抱いていた怒りや憎しみと言った、戦う事に繋がる感情が薄れてくるのだ。
サムスはピカチュウに多大な恐怖を与える事で戦意を喪失させる事に成功した訳である。


サムス「まだ私が正気じゃない時に聞いた報告だけど、ピカチュウは、戦いによって得た傷による痛みと、心の中の苦しみで、
    一度戦意喪失して正気に戻りかけた事があった。だからこの手を使った方が早いと思って。・・・ごめんね、ピカチュウ?」
ピカチュウ「けほっ、げほっ。・・・うん、大丈夫さ。むしろ、僕はお礼を言うべきだよ。・・・ありがとう。・・・・げほっ!」
ピーチ「何、私を無視して話を進めてるのよ・・・?・・・ッ・・・許さないわよ、サムス・・・・
    マスターハンド様の部下が、また一人減ってしまった・・・こうなったら私が、あなた達全員を・・・!」


脇腹を押さえながら、ピーチが立ち上がり、おぼつかない足取りで歩み寄ってくる。
思わずサムスが身構えたその時、彼女の背後から声が聞こえた。


プリン「殺せるわけがないよ。・・・ピーチ姫だってさ、本当は優しい人じゃない」
ピーチ「!・・・・つっ・・・次から次へとっ・・・・!」


気がついたらしいプリンがよろよろとサムス達の脇へと歩いてきて、迫り来るピーチに言い放つ。
その言葉に一瞬ピーチの足が止まるも、すぐに彼女の中で取り戻しつつあった心を否定するように、憤った様子で呟く。


ピカチュウ「ピーチ、もう止めようよ。あんな、あんな奴の仲間なんかになったって・・・」
ピーチ「う、うるさいわねっ!私は・・・私は!マスターハンド様の、忠実な──・・・・ぶ、か・・・」
サムス「ピーチ。本当はもう、あなたも正気に戻ってるんでしょう?・・・認めたくないだけ。
    短い間とは言え、マスターハンドの手先になってしまっていた事を悔いてるんでしょ・・・?」


サムスの言葉に、力を失ったかのようにピーチが静かに俯いた。


ピーチ「・・・・・・・・認めたくなかった。・・・ただ、認めたくないだけだった。
    何でこんな事してるんだろうって。何でみんなにこんな酷い事してるんだろうって・・・」


言いながら、ピーチが泣き崩れた。
サムスが崩れ落ちたピーチに近寄り、かがみ込んで彼女をなだめる。


サムス「あなたは悪くない。みんなマスターハンドのせいで、こんな事になってしまっていた。
    だから、みんな悪くない。だから、あなたも悪くない・・・悪い事なんか、してない」
ピーチ「うっ・・・ぅ、ありがとう・・・ごめんなさい・・・サムス・・・・みんな・・・・・!」


完全に彼女は正気に戻っているようだった。
一部始終を見ていたピカチュウとプリンは、少し離れた所で二人してほっと胸をなでおろした。
その時だった。


「反逆者には、死・・・あるのみ」
ピーチ「・・・え? ・・・・・・・か、はっ・・・!」


何者かの低い声の呟きと共に、鮮血がほとばしった。
ピーチががくりとサムスにもたれかかる。
数秒間、そこに居た全員が、何が起こったのか理解できなかった。


サムス「・・・・・・・・嘘・・・でしょ・・・・?」


飛び散った鮮血に塗れて、真っ赤に染まったスーツを着用するサムスが呆然と呟いた。
ピーチの背中に、長く太い、モニターの縁部分の破片が深く突き刺さっている。
しかし心臓の位置を捉えているかどうかはまだ解らない。彼女の意識はまだあるか。
サムスが倒れこんだピーチを抱えて確認しようとする。


「ははははははッ!!やるじゃねえか、ミュウツー!一瞬で一人再起不能にしちまいやがった!」
サムス「っ!」
プリン「・・・!?」
ピカチュウ「な・・・・!?」


突然、何者かの笑い声があがる。驚愕する三人がその方向を振り向くと、
二人のスマッシュブラザーズのメンバーがそこに立っていた。


プリン「そんな。・・・どうしてさ・・・・どうして、どうして君達がッ!?」
ミュウツー「・・・・マスターハンド様に歯向かう者を。マスターハンド様を欺こうとする者も。
      皆、平等に死を与える・・・・。それが、私に課せられた使命・・・・」
「その通りだ・・・俺達はマスターハンド様の忠実なる手足だ!てめえ等全員・・・俺とミュウツーでぶっ殺してやる・・・!」





ファルコン「カービィ、さっき向こうの方で何か音がしなかったか?」
カービィ「さあ?というか、敵が多すぎてそんなの全然聞こえないよ。ファルコン耳良いね」
司令塔ノコノコ「殺せ・・・殺せ・・・・抹殺・・・だぁぁ・・・・!」


地の底から響くような、不気味な声を上げて指示を出す司令官。
いや、指示と言うには程遠い、単調な言葉の繰り返しとも言うべきか。
それでも司令官の言葉に従って、戦闘用機械達はカービィとファルコンに襲い掛かる。
唸り声を上げて殴りかかってきた男性型戦闘員をファルコンがビームソードで胴体を真っ二つに仕上げる。
立て続けに背後から蹴りかかって来た擬似ドンキーの脳天にもう一方のビームソードを突き刺して、
そのまま擬似ドンキーが突き刺さったままのビームソードを振り回して手近な敵を一掃する。


カービィ「危ないなぁ、僕の身長がもっと高かったら僕まで巻き添え食ってたよ、それは」
ファルコン「お前の身長が低いからやったんだろ、これは」


ビームソードに突き刺さったままの擬似ドンキーを床に叩きつけてビームソードを脳天から引き抜く。
そんなファルコンの傍ら、軽く会話を交わしてカービィがレイガンで片っ端から敵を射撃してゆく。
弾切れを起こしたらおもむろに口の中へ手を突っ込んで新たなレイガンを取り出し、構える。
一体どんな身体の構造をしているのだろうか、とファルコンが他愛の無い事を考えた時だった。


司令塔ノコノコ「役立たずどもがァ・・・俺が直々に・・・奴等を殺ってやる・・・!」


二人に傷一つ残せずに散ってゆく戦闘員達に苛立ちを見せた司令官がそう言いながら、丸く、黒い物体を取り出した。
足がついていて、導火線の伸びる真っ黒なその球体は──ボム兵。
まさか、とカービィとファルコンが思った矢先に司令官はボム兵を抱えたまま軍団の間を通り抜け、二人の元へ走ってくる。


ファルコン「くそ、あいつ、そこまで狂っちまってるってぇのか!?」
カービィ「ど、どうしよう・・・!?」
ファルコン「に──逃げるに決まってるんだろ!!」
司令官ノコノコ「巻き添えにしてやるっ・・・俺はぁッ・・・マスターハンド様の命令をぉっ!忠実に実行する者だぁ!!」


襲い掛かってくる司令官を見据えた二人が踵を返してその場から走り去る。
それを追う司令官の足取りはおぼつかない。
ついによろよろと倒れこんだ司令官の手からボム兵が転がり落ちた。
その衝撃でボム兵は爆発を起こす。近くに倒れていた司令官はもちろん、
通路を埋め尽くすかの様な爆風に謎のザコ敵軍団までもが吹き飛ばされる。
廊下に煙が充満し、その中からカービィとファルコンが息を切らせながら姿を現した。


ファルコン「危ねえ危ねえ・・・まあ、結果オーライだな。自爆してくれたわけだしな」
カービィ「全くイカれるのも程々にして欲しいね。急に思い立って爆弾抱えて突撃なんてありえない」
ファルコン「・・・・だが、まだあいつ等の方はやる気のようだぞ」


立ち込める煙の方向を向いてファルコンがそう言った。
カービィが振り返ると、煙の中から次々と爆発から生き残った軍団が歩み寄ってくる。


カービィ「・・・無駄に時間はかけられないしね。さっさと片付けちゃおーか」
ファルコン「そうだな・・・。最低でも三分って所かぁ?」


およそ五十体の軍勢が二人に殺到する。
不敵に二人が微笑むと、それぞれ武器を構えて迫り来る軍勢に飛び込んでいった。





続く



音楽提供:タクミドットネット





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