兄貴は、昔から寂しがり屋だった。
孤独が、嫌いな存在だった。
・・・いや
孤独に耐えられなくなったんだと思う。
別に俺は平気だったけどな・・・・・。
頭が良い兄貴は、周りから妬まれ、拒絶されていた。
俺は、力が強すぎて周りから恐れられ、拒絶されていた。
年も違わない、双子の学生だった。
ある日、突然兄貴は奇妙な力を持った。
それが、創造力。
物を──創る、力。
ある日、突然俺も奇妙な力を持った。
それが、破壊力。
物を──壊す、力。
力を持った理由は分からない。
でも、俺達は喜んだ。
「自分達は特別な人間なんだ」
だが、その喜びもつかの間。
お互いの姿を見合った俺達は呆然とした。
それから、俺達は新たな名前を名乗り、
そして家族や知り合いから身を潜めることにした。
──それは自分達の意思ではなかった事に気がついたのは、もっと後の事だ。
それからしばらくたった時、
あいつが創り出した住処で、あいつは、決断した。
全てを捨て、全てを創るということを───。
十八話 全滅危機
一行は観客席を抜け、廊下へと移動していた。壁に複数の扉があるが、ほとんど瓦礫の被害にあっていて開ける事が出来ない。
先程の戦いを終えた後、魔物の大群を指揮していた司令官を死体から回復アイテム、ハートの器が発見された。
ルイージとドンキーが重傷だったので、リンクとピカチュウと戦って入手したハートの器も使って、二人の傷を癒す事になった。
また、先程襲ってきたザコ敵達・・・クリボーやノコノコ、リーデッド等のモンスターは既に記した通り、クッパやガノンドロフの配下。
しかし、どういう事だろうか、クッパ達が連れてきたのではなく、配下達が謎の反乱を起こしたのだ。
アイシクルマウンテンに生息するトッピーやホワイトベア等の動物達も同様。反乱、というより動物達は謎の凶暴化を遂げたのだ。
その理由を聞きだす機会を先程の戦いでクッパが見出したのだが、司令官であったノコノコはクッパの配下だった覚えなどは無いとの一点張り。
謎のザコ敵軍団は元々は競技場に使われていた者達だが、
恐らくはあの手袋が何らかの細工をして自分の手駒とし、けしかけてきたものだろう。
ドンキー「で、どうする?引き続き観客達の探索か?」
クッパ「ぬぅ・・・我輩としてはもうそれは諦めた方が良いと思うのだ。
可能性のありそうな場所は全て探した、生き残った観客達は既に競技場から脱出したと考えるのが妥当なのだ」
ポポ「それじゃあ・・・あの、白い手袋を見つけ出す事にする?」
ポポの言葉に全員が頷く。頷いた直後の彼等の表情は曇っていたが、
怒りや憎しみなども、十分にその表情からは窺う事が出来た。
ピチュー「・・・でも、あの手袋・・・どこに居るんだろう?
あいつに洗脳されたみんながここに居るって事は、競技場のどこかには居ると思うんだけど」
クッパ「恐らく、ステージの一つ・・・終点に居るのだろう。
実況室で終点の様子を見ようとした瞬間にマルス達がモニターを破壊してきたのは不自然だ」
ナナ「なるほど・・・って事は、今から転移装置の部屋に行くって事?」
ルイージ「そうなるね」
転移装置。それは、メンバー達が大乱闘を置こうなう際、乱闘ステージに一瞬で移動する事の出来る装置である。
それぞれのステージへ行く為の転移装置がステージの数だけナナの言う部屋にあって、そこから戦場へ移動し、大乱闘を行うのだ。
ドンキー「転移装置の部屋といやあ、あの辺の扉からいけたはずだが・・・」
ドンキーが指差した通路は、瓦礫に埋もれてしまっていてどこに扉があったのかさえ確認できない状態だった。
その様子に一行の表情に不安の色が見え始める。
ルイージ「あ、でもメインコンピュータ室からもあの部屋に行けなかったっけ?
スマッシュブラザーズの結成者さんがコンピュータの管理をしに来た時、何か異常を発見した場合にすぐに行けるようにって」
クッパ「ナイスだ、ルイージ。メインコンピュータ室の入り口なら辛うじて無事のようなのだ」
ピチュー「・・・でも、僕達の結成者って一体誰なんだろうね。誰も見た事がないけど確かに存在はしてる、謎の存在だったっけ?」
ポポ「実は僕達スマッシュブラザーズの中の一人だとかいう噂を聞いた事あるけど、本当かな?」
ナナ「ええ、それはないでしょ・・・」
何とか転移装置の部屋まで行ける事が判明し、内心安堵して余裕が出来たのか、思わず雑談へと発展してしまった。
それでも、誰も忘れては居ない。これから、この事件を起こした元凶と、激しい戦いを始める事になるかもしれないという事を。
メインコンピュータ室の扉は半開きになっており、「関係者以外立ち入り禁止」という表札が扉に掛けられていた。
このような扉は競技場のあちこちで見られる。そういえば実況室に入る時もそのような札が床に落ちていたような気もする。
代表してドンキーがドアノブに手を掛けると、きしんだ音とともにあっけなく扉は開いた。
ドンキー「・・・改めて見ると、結構広いんだな、この部屋」
ドンキーの言う通り、メインコンピュータ室は割と広めの場所であった。部屋の奥には、壁に埋めらたかのような巨大なコンピュータが一台。
ダメージ%変換システムやアイテムスイッチの切り替えによる特定のアイテムの出現、
ステージ等の情報を高性能な事に自動で整理しているのがこのコンピュータである。
・・・関係者とは全てスマッシュブラザーズのメンバー。乱闘を盛り上げるための役者などは居ても、
従業員などは一切居ない。実況はメンバーの誰かがくじ引きなどでやっている。この設備は、彼等が何者かにここへ招待されたときからあった物。
誰が彼等を招待し、このような設備を施したのかは今だに謎に包まれている。先程の話に出た「結成者」と呼ばれる者が居ると言われているが。
そして、その巨大なメインコンピューターは壊れていなかった。メインコンピューターは半透明の緑色をしたかなり頑丈な保護ケースで覆われていて、
例えそれがメンバーだろうと敵だろうと触れる事さえ叶わない。
クッパ「とにかく目的の部屋に行くぞ、あの扉なのだ」
ドンキー「おうよ、あのクソ手袋野朗に一発ぶちかましてやる・・・!」
ピチュー「みんなを、生き返らせて、元通りにするんだッ・・・!」
一行が部屋の右奥に位置していた扉に向かって歩き出した瞬間だった。
突然、その扉が開き、転移装置のある部屋から数人のスマシュブラザーズが現れた。
・・・そう、スマッシュブラザーズの、メンバー達が。
ルイージ「えっ・・・なっ・・・・!?」
ポポ「そ、そんな・・・!?」
ナナ「嘘・・・でしょ?」
一行はただ驚愕する事しか出来なかった。
今までのように、操られていたメンバー達が現れただけなのだったら、これ程驚きはしない。
では、何故か。それは、ありえない事が起こったから、としか言いようがない。
マルス「やあ、まだ生きていたんだね。元スマッシュブラザーズの諸君」
フォックス「再会したばかりだが、お前等にはここで死んでもらう」
リンク「まだまだ・・・足りない。私は・・・あなた達の血を、欲す・・・」
口の端を吊り上げ、嘲るように言い放つマルスに厳しい目付きで一行を睨みつけ、銃口を彼等に向けるフォックス。
狂気に染まった表情でマスターソードを二度三度振るいながら呟きながらリンクが歩み寄ってくる。
・・・紛れもなく、彼等は一行との戦いで、死んでいった者達だった。
クッパ「・・・我輩達に敗北し、見限られたのではなかったのではないか?」
マルス「まあね。確かに僕達は見限られた。でも、もう一度だけ・・・、
あのお方はチャンスを僕達にお与えくださった。・・・生き返らせてくれたのさ」
ネス「本当に、心の広い方だよ。こんな僕達でも使い道があるって言ってくれたんだ・・・君達を消したい、って事でね」
カービィ「って事だから、あのお方の為にも君達には死んでもらいたいんだぁ♪」
クッパの問いに次々と目の前のかつての仲間達が答えてくる。
そして、言葉を言い終えるごとにかつての仲間達はそれぞれ武器を構え、一行を恐怖させる。
数が多すぎる──。ここは一旦、退くべきか・・・?
手汗を握りながらクッパがちらりと後ろの、自分達の入ってきた扉を盗み見た。
次の瞬間、クッパは現実を疑った。おもむろに背後を振り返り、その扉を睨みつける。
完全に開ききった扉の前には、他のスマッシュブラザーズのメンバー達が不敵に笑いながら立ちはだかっていたのだ。
ピカチュウ「もう・・・逃がさないよ・・・」
ロイ「そうだ・・・君達に逃げ場はない。覚悟するんだね」
「ピィーッ・・・ピピッ。コンバンハ、皆サン」
ピチュー「っ・・・・兄ちゃ・・・・・くっ・・・」
扉の前に立ったまま残ったロイとピカチュウが冷たく言い放つ。
二人の傍らには場違いにも丁寧に挨拶をする真っ黒な平面の身体を持つ、Mr,ゲーム&ウォッチ。
そして、彼等後ろに控えていたメンバー達はそのまま部屋の中へ入ってきて、一行を取り囲むかのように位置についていく。
──勝てるわけがない。 六人の表情が、絶望に塗り潰される。
「おーっほっほっほ。楽しみだわぁ、今からあの六人を思う存分にいたぶれるかと思うと・・・!」
「同じく。こりゃあ今年最大のビッグイベントだ・・・血湧き肉踊るぜぇ!」
「二人とも、暴れたいのは分かるけど、あのお方の任務通り、例のもの≠宿す者だけは瀕死状態に留まらせておくようにね」
気品漂う笑い声を上げつつも、表情は狂気に染まりきった桃色のドレスを着込んだ女性、ピーチが黒光りするフライパンを素振りする。
その隣で両手を合わせ骨を鳴らす、レーサー服で赤いヘルメットを被った、
異様なほどの筋肉を持つ男・・・、ファルコンがにやりと笑みを見せながらピーチの言葉に同意し、
鎧のようなスーツを着用した女性は左手にガンポットを打ち付けながら二人に注意を促すが、
彼女、サムス自身がその任務を破ってしまいそうな程の好戦的な眼が外からも窺える。
・・・任務の内容の意味までは理解する事は出来なかったが、それだけでも一行の表情が十分に強張る。
「フン・・・一気に畳むぞ」
「虫けらどもめが・・・圧倒的な力の差を見せ付けてくれるわ」
「ほらほら、二人とも〜。怖い事言わないで。獲物は皆で平等に分けようよ?」
「そうです。独り占めはいけない事ですよ?」
薄い紫色の体色を持つ遺伝子ポケモン、ミュウツーが力を全身から湧き出させながら一行を睨みつける。
その傍ら、両腕を唸らせながら構えを取る大柄の男、ガノンドロフもミュウツー同様に一行に殺気立った視線を向ける。
いかにも場違いな桃色の球体、風船ポケモン、プリンが二人をなだめるような事を言いつつも言葉の意味は一行を殺す事に変わりなく、
神聖な雰囲気を漂わせる美しい姫君、ゼルダもプリン同様の意味合いの言葉を吐きながら、両手に魔力を集中させた。
ヨッシー「さあ、皆さん。・・・やってしまいなさい」
転移装置の部屋の扉の前に最後まで残っていた緑色の体色を持つ恐竜、ヨッシーが冷たく言い放つ。
言い放たれたその言葉を合図と受け取ったのか、一行を取り囲むメンバー達が一斉に攻撃を開始した!
ドンキー「クソッ!みんなっ、迎え撃つぞ!」
クッパ「先程戦ったザコ敵軍団の攻撃とは訳が違うぞ、防ぎ切れるのか・・・!?」
サムス「会話なんかしていられるのも今の内よ?反逆者達ッ!」
ミュウツー「・・・シャドーマシンガン・・・!」
にやり、とスーツの下で不敵な笑いをこぼしたサムスが何発ものミサイルを発射してきた。
避けようと脇に跳んだ所にミュウツーの放った小型のシャドーボールの群れが飛び込んでくる。
回避された幾多の直進ミサイルはそのままミュウツーの元へと向かうが、
彼のねんりき≠ノよって全てのミサイルの軌道を真逆にされ、再び六人へと襲い掛かる。
弾けたミサイルとシャドーボールは次々と爆発し、その爆発は幾重にも重なって、
防御するのに必死な一行を飲み込み、ものの数秒で六人全員に手痛いダメージを与える事となる。
ルイージ「ぐ、ぁあ・・・っ」
リンク「ははは、もうダウン気味じゃないですか?」
ロイ「ふ、ふふ・・・もう、諦めるんだね。はあぁぁッ!」
ポポ「ッ──!」
すかさずリンクとロイが巻き上がる煙の中、斬りこんで来る。
それぞれの刃が、ルイージとポポの胴を捉えた次の瞬間、突如としてリンクが悲鳴を上げて吹っ飛ばされた。
吹き飛んだリンクに一瞬気を取られたロイの動きが硬直する。
ただ煙の中垣間見えた相手を狙って攻撃を仕掛けていったのだから、ロイにはもうもうと立ち込める煙の中の様子が分からない。
何が起こったかのか分からず、表情に焦りの色を見せたロイもリンクと同じ運命を辿る。
瞬時に、何かに強打されて煙の外へと吹っ飛ばされていったのだ。煙の外でメンバー達が驚きの声をあげるのが分かる。警戒しているのだろうか、
それ以降は敵が煙の中へと攻撃を仕掛けてくる事はなかった。ただ呆然とポポが立ち尽くしていると、突然目の前に黒い人型の物体が現れた。
彼がゲーム&ウォッチである事を理解するのに数秒掛かった。
ウォッチ「間一髪、デシタネ」
ポポ「な・・・・!?」
ナナ「身構えないで、ポポ。ウォッチは味方よ」
ポポ「えっ・・・ど、どういう事?」
ウォッチ「話ハ後デス、私ニ続イテクダサイ!」
一方的に言い放つと、ウォッチは煙の中から飛び出していった。
半ば混乱しながら言われた通りにナナと共にポポがウォッチの跡に続く。
見れば、他の仲間達も同様にウォッチを追うように煙の中から飛び出してゆく。
異変に気づいたメンバー達が攻撃を仕掛けてくるが、クッパが炎を吐き出して牽制し、相手の動きを止める。
おもむろにウォッチが真っ黒なマッチ棒を取り出し、それを振り回すと驚く事に、
マッチ棒にぶつかったメンバー達が通常では考えられない程の威力に吹っ飛ばされてゆく。
一気にメンバー達の壁を突破するとすぐそこに目的地へ続く扉があった。
扉の前に立ちふさがるヨッシーは、小さく舌打ちし、何かを呟くと踵を返して扉の奥へと姿を消した。
転移装置の並ぶ部屋の中へ一行が入ったのを確認すると、ウォッチが一人、扉の前へと振り返ってマッチ棒を構える。
ウォッチ「皆サンハ先ヘ。敵ハ終点デス、コノ場ハ私ガ受ケ持チマス」
ドンキー「大丈夫なのか!?」
ウォッチ「ゴ安心ヲ。コレデモ奴ノ感情操作ヲ打チ破ッタ私デス、
彼等ト同ジ事ヲサレタ私ナラ彼等ヲ元ニ戻ス方法モ手ニ取ルヨウニ分カリマス」
クッパ「よし、信じよう・・・ここは任せたのだ、ウォッチ!!」
クッパの言葉に無言で頷くと、電子音を鳴らしながらウォッチは部屋の外へと駆けていった。
全く状況の整理のつかないポポが、終点へ転移する転移装置へ向かって走りながら相棒のナナに尋ねる。
彼女によると、リンクとロイがルイージとポポに斬りかかって来た時、
突如としてウォッチが煙の中へ飛び込んできて二人を吹っ飛ばしてポポ達を救ったのだそうだ。
その後、ウォッチは短く早くこう言った。「私ハアノ手袋ニ操ラレテイナイ唯一ノ存在デス。ダカラ、皆サンニ協力シマス」、と。
あの数のメンバーを相手にしては勝ち目はほぼ皆無だった為、
一か八か彼の言う事を信じてみる事にしたらしい。呆気に取られていたので全く彼の言葉が耳に入らなかった。
今度からはちゃんと周りの様子に気が配れるようにしよう、と決意するポポをよそに、
同じ状況に立たされていたルイージがポポと同じ質問をドンキーにしていた。
クッパ「みんな、早くこの装置の中に入るのだッ・・・六人は少しキツいか?」
ピチュー「す、少しじゃなくて、かなり・・・だと思う・・・」
柱の様な装置の中は筒状になっており、その中に六人が互いを押し合いながら入り込む。
元々最高四人までしか入る事は出来ない設計になっているので、かなり窮屈な状態となっている。
そんな中、クッパが怒鳴るように叫び声をあげる。
クッパ「この際我慢するのだ、今はそれよりあの手袋を倒すのが大切なのだーっ!!!」
「「「おおおおぉーーーっ!!」」」
クッパのその言葉に全員が同意の叫びを上げた。
そして、彼等の詰め込まれた柱の中から眩い光が溢れ出す・・・!
ファルコン「くっそ・・・ウォッチ、てめえ裏切りやがったな・・・!?」
マルス「まさか、君に裏切られるとは思いもしなかったよ・・・!」
ガノンドロフ「赦さんぞ・・・貴様ァ!生きて帰れると思うな・・・!?」
一方で、転移装置の扉を守るように立つウォッチの目の前にはマスターハンドの術中のメンバー達。
全員が殺気をむき出しにし、ウォッチを睨みつけていた。それでもウォッチは臆する事もせずに言い放つ。
ウォッチ「・・・何トデモ言ウト良イデスヨ。私ハ必ズヤ貴方達ヲ元ニ戻シマス。
何故ナラ、私ハ奴ノ汚イ策ヲ破ッタ者デスカラ。ソシテ、モウ一ツ理由ガアリマス。
ソウ、私ハ・・・・!」
続く
音楽提供:般若'sMIDIの里
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