三つに別れしトライフォース。


  一つ一つ、意味を成す。


  勇気と知恵、そして力。


  そのトライフォースが打ち砕かれし時、


  それぞれの力が飛散する。


  一つは奴に抗う彼に、


  一つは皆の命を奪っていった奴に。


  そして、最後の一つは──。


  私達が命を奪われた時点でトライフォースは個々に宿ってしまった。


  この事件の発端も、それだけは予測できなかった。


  そのトライフォースが・・・再び一つになろうとしている。


  しかし、彼等は必ず対立しあう。


  彼等が戦う運命にあることは、


  もう・・・・逃れられないこと・・・・・。











  十四話  悲しみ、そして新たな企て









ファルコを抱えるドンキーを囲んで、全員が嗚咽を漏らす。
静まり返った廊下には、ただ誰かの鳴き声のみが響いていた。
そんな中、一人、クッパが涙でくしゃくしゃになった顔を持ち上げた。その表情は、何かを志すようなもので。


クッパ「・・・ッ・・・思い出すのだ・・・みんな・・・
    ファルコが・・・解き明かしてくれていったではないか・・・。我輩達へ、希望と言う光を残していってくれたではないか。  
    ・・・・あの手袋を捕らえれば、フォックスや、ピカチュウ達、みんなを・・・ファルコだって生き返らせることが出来る!
    だから・・・進むのだ。あの手袋を必ずや探し出し、我輩達の手で、取り押さえてやるのだ・・・!」


クッパの震えながら、しかし強い口調で放たれた言葉に、他のメンバー達が次々に顔を上げる。
それぞれの眼に宿るのは、たった一つの信念。


ドンキー「行こうぜ、みんな・・・クッパの言う通りだ。
     俺達はファルコの死を無駄にしちゃいけねえ・・・」


ドンキーが優しくファルコを壁にもたれかけさせ、全員の顔を見回しながらそう言い放つ。


ポポ「・・・そう、だよね・・・こんな、酷い仕打ちをするような奴を・・・」
ナナ「命を弄ぶような奴を・・・このまま野放しにしてちゃ・・・いけないし」


ポポとナナがハンマーを握り締め、それぞれの言葉を繋げながら、ドンキーの言葉に頷いた。


ルイージ「いつまでも震えてちゃ・・・・怖がってばかりじゃ、あんなにも勇敢なファルコに申し訳が立たない、から」
ピチュー「・・・あいつを倒しに。みんなを助けに。・・・行こう」


最後に二人がポポとナナの言葉を引き継いで完成させると、二人とも片腕を高々と掲げた。
他の四人も円を組んで片腕を高く掲げる。掲げた腕を他の腕と交わし、それを誓った。


     ──この事件の元凶を捕らえ、全てを元通りにする──。


六本の掲げられた腕の内の一本。
一瞬だったが、彼等の思いを表すかのように眩く、それでいて優しい光が一瞬だけ辺りを照らした。
その辺の壊れた蛍光灯が辺りを照らしたのだろうか。誰も、この事については全く関心を示さなかった。










「マルスにネス、カービィ・・・奴等も全く使えぬまま死んだか。・・・いや・・・・・・一人だけ、道連れにする事が出来たようだな・・・
 ファルコ・ランバルディ・・・か。まあ、良い。どの道捨て駒程度にしか使えぬとは思っていた者どもよ、
 これだけでも十分な賞賛だ・・・他の邪魔な駒も一気に進めてしまうとするか?」
「いえ、恐れながら、それは・・・なりません。『マスターハンド』様」


そこは暗い、そして星が飛び交う宇宙のような空間。巨大な足場のような場所に、その手袋達は居た。
手袋の事をマスターハンドと呼んだ赤い帽子を被った男の表情は、やや不安げに曇っていた。


マスターハンド「・・・・ほう。何故だ?お前ほどの理解者が、そんな事を言い出すとは思わなかったぞ」
「誠に・・・申し訳ございません。しかし・・・我々にはわかるのです。奴等・・・
 我々に歯向かう者達は、我々と同様の実力者達の塊・・・・。
 残った者達を何の作戦も無く突撃させたとしても、体制を整えきれず、弱点を攻められて返り討ちに遭い、こちら側が多大な損害を被る可能性の方が、高い・・・!」
マスターハンド「ならば・・・なんだ?私の案以上に、あちらとこちらの邪魔者を一気に排除する方法があるというのか?」


マスターハンドの言葉に、赤い帽子の男が顔を上げて口を開く。


「それは、あなたの蘇生術をもって・・・一度、戦死したメンバー達を蘇らせる事です」
マスターハンド「・・・ふざけているのか?せっかく、排除できた邪魔者どもをもう一度この舞台に出演させると言うのか?」
「いえ、違うのです。スマッシュブラザーズ総員を奴等にあて、確実に打ち倒す・・・。
 そうすればほぼ相打ちとなり、壊滅状態の奴等から、目的のものを奪い・・・その上で、奴等全員を排除するのです」
マスターハンド「奴等六人が、十数人のメンバーと戦い、相打ちにまで持ち込む事が出来るのか?」
「奴等はこちら側からけしかけたメンバー達と戦い、徐々にこちらの弱点を知りつつあります。
 計算した所、次の戦いの中でその弱点を完全に知り、こちらのメンバーを簡単に倒せるようにまでなります。
 しかし、その戦いをメンバー全員との戦いにしてしまえば、弱点に気がつくのも、ほぼ全滅寸前の時点のはず」


赤帽子の男が満足げにそう言ってのけると、マスターハンドは感心したように唸った。


マスターハンド「なるほど、相打ちに持ち込む事が出来るわけだ。
         この作戦なら・・・私が直に殺さなければ、奪う事の出来ない、目的のもの≠手に入れられる。
         あの時は一人ずつ、着実に潰していったからこそ、こうしてスマッシュブラザーズを一度全滅させる事が出来たが・・・
         今の状況では、奴等六人にさえ私は勝てないかもしれない。目的のもの≠ェ手に入れば、話は別だが・・・
         ・・・話がそれたな。私の忠実なる部下の一人、マリオよ・・・感謝する、良い提案をしてくれたものだ」
マリオ「ありがたき・・・幸せ」


闇にまぎれたマリオの表情が、辺り一面にちりばめられた星の輝きに照らされる。
大きな鼻、立派なヒゲ、真っ直ぐな眼差し・・・全く、以前の彼と何も変わっていない。
今まで『生き延びた者達』が戦ってきた元スマッシュブラザーズのメンバーは、少なくとも鋭い目付きや言動等から狂気が感じ取れた。
しかし、マリオにはそれが──狂気や瘴気が感じられない。不気味なほどに以前のマリオと全く変わっていないのだ。
更に、その不自然な現象は彼だけに起きたものではなかった。


「ただいま、偵察から戻りました」
「あいつ等は、マルス達との交戦場所から離れて観客席に向かったみたい。
 ・・・多分、この競技場から居なくなった観客達でも探してるんじゃないかな?」


突如としてその空間に現れた、白い光を放つ二つの台。
台が絶えず放ち続ける光の中から、喋りながらそれぞれ、緑の衣服に身を纏った少年と、緑色の皮膚を持つ恐竜が現れた。
彼等からも。狂気と思えるものが何も感じられない。表情も言動も、以前のまま。


マスターハンド「ご苦労だったな。ヨッシー、リンク」
リンク「おっと、僕の事は子供リンク、略してコリン。それか、ヤングリンク・・・ヤンリンって呼んでって最初に言ったでしょ?」
マリオ「バカ、口を慎め・・・!」


他の二人のマスターハンドに対する態度とはうって変わって死んだはずのリンクという名で呼ばれた緑色の衣服をまとう少年──、
子供リンクがマスターハンドを不敵な笑みを浮かべたまま言って見せると、マリオが厳しい表情で子供リンクを小声で叱咤する。


マスターハンド「・・・まあ良い、これでも私に忠実な、大切な部下だ。許してやる」
子供リンク「おおっ、心が広いねえ!ありがたき、幸せ〜♪ だよね、マリオ?」
マリオ「・・・・・・・・」


どこまでも調子に乗る子供リンクに、深いため息をついてマリオはそのまま黙ってしまった。
そんな二人をよそに、黙っていた緑色の恐竜・・・・ヨッシーが前に出て、マスターハンドの前に立つ。


ヨッシー「それで、どうしましょう?・・・次の作戦は確か、広めの場所に奴等を追い込み、戦闘員を全て一気にけしかけるものでしたが・・・・」
マスターハンド「ああ、予定通りに実行する。奴等の居る場所も丁度観客席だ。
         ・・・だが、作戦を実行した後に、戦死したメンバーを全て回収しろ」
ヨッシー「・・・?それは何故です?」
マスターハンド「マリオからの提案だ。私の駒となった者達の持つ特有の弱点を敵は知りつつある。
         それに気づき始めるであろう次のメンバーとの戦いにこちらの駒全てをけしかけ、相打ちを狙う。
         その為に戦闘員どもで奴等の体力を削ぎ、相打ちの為の微調整を行うのだ」
ヨッシー「・・・分かりました。早急に作戦を実行します。皆さん、行きましょう」


マスターハンドの答えに納得したらしいヨッシーは、他の二人に声をかけ、足場から飛び降りてゆく。
慌てて二人がマスターハンドに礼をすると、ヨッシーの後を追って宇宙空間を包む闇の中へ消えていった。
宇宙空間にただ一つ、取り残されたマスターハンドは、表情こそはないが、恐らく強い意志に燃える眼差しを星空に向けながら、呟いた。


マスターハンド「必ず、私は・・・・・我が兄弟と、私に真の忠誠を誓うあの三人と共に、新たな世界を築き上げてやる・・・。
        矛盾の無い・・・悲しみの無い・・・世界を・・・・・。何もかも矛盾していて、悲しみだらけの世界・・・この出来損ないの世界を壊し!!
        私達の、理想の世界を築き上げるのだ・・・!」







ドンキー「・・・おいおい、何だよこいつ等は・・・」
ポポ「謎のザコ敵軍団・・・クリボーや、オクタロックとかの魔物まで居る・・・」


あの謎の手袋との戦いは恐らく、競技場のあちらこちらが崩れ落ちるような凄まじい激戦になるのだろう。
それならば先に逃げ遅れた観客達を見つけ、この競技場から脱出させなければならない。
そう考えて、一行は観客達を探すべく観客席に入り、手分けして誰か居ないかと探していた。
しかし、彼等の探索は中断せざるを得なくなった。突如、奇声を上げながら室内になだれ込んできた無数の魔物達、
それらに加えてワイヤーを身体中に張り巡らせ、皮膚が透き通っていて身体の内部が曝け出されている、
男性型女性型の両方の種類が存在する人型の戦闘用機械。競技に使用される事のある、『謎のザコ敵軍団』と呼ばれる者達である。


ノコノコ「陣形・A!総員、かかれ!」
クリボー「了解、皆殺しにしてやるぜッ!」
クッパ「ヌゥ、あいつ等・・・・!」
ピチュー「来たよッ!」


軍団の奥に立っていた一匹のノコノコ──、
ノコノコとは、二足歩行の可能な、大きな亀の様な(というか亀)、クッパ率いる軍団の兵士だ。
そのクッパの味方であるはずのノコノコが声を張り上げると、
同じくクッパ軍団の兵士、キノコに顔と足の生えたような風貌のクリボーと呼ばれる生物が飛び跳ねる。
どうやら声を上げたノコノコは敵の司令塔らしい、ノコノコの言う陣形とやらを軍団が取り始める。
敵達は部屋の隅から隅まで横に並び、一行から逃げ場を奪った。
横に何列も並んだ軍団は、逃げ場を失った六人を見やり、それぞれが下品な笑い声や殺気立った雄叫びを上げる。
そしてその直後、敵の軍団は一行目掛けて襲い掛かってくる・・・!





続く



音楽提供:般若'sMIDIの里





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