飽きつつある毎日に現れた手袋。 それは私の退屈を晴らしてくれるに違いない存在だった。 毎日のように行っている大乱闘とはまた違う戦いが出来ると思ったから。 でも、それは叶わなかった。 あの手袋は強すぎた。 そして、私達が悲しみに塗れた、正視できない戦いを強いられる事になるなんて。 その時は、思いもしなかった。 あいつ等に操られてみんなと殺し合うなんて。 微塵も認めるわけにはいかない。 認めるわけには、いかないのに。 十三話 逆らえない事実 扉の先に広がるのは、ほとんどの部屋に繋がる扉の並ぶ、長い廊下だった。 しかし、今までメンバー達が何度も行き来していたその廊下は、今や見るに耐えない、ボロボロの場所となってしまっている。 壁や床、天井の所々にひび割れやえぐられた後、何かで焼かれたかのような焦げ跡があり、 確認できるだけでも十数枚の扉が壁から外れ床に転がっていた。 ドンキー「待ちやがれッ!」 マルス「嫌だね!そら、もっと早く追ってきてみなよ!?あははははっ!」 その廊下を疾走するマルスとネス、それを追う『生き延びた者達』。 挑発しながらマルスが床に転がっていた残骸を大きく飛び越え、同じようにネスが残骸を高く跳躍して避ける。 互いに手負いの状態で、先にマルスとネスの二人が逃げ出した為に一行と彼等の距離はやや広めに開いてしまっている。 ファルコ「くそ、当たれっ!」 ネス「ッと」 走りながらほぼがむしゃらにファルコがブラスターを連射する。 無茶苦茶に通路の先を突き進む幾多の光線がマルス達に向かうが、 走りながらであまり狙いも定まらない事もあり、全く命中する事は無かった。 また一発、発射された光線がやや斜め下の方向へ・・・先程、マルス達が飛び越えて行った残骸の陰へと飛んだ。 これでは確実に相手には当たらない、ファルコが悔しげに舌打ちをしたその瞬間であった。バゴォオオオオオオオオオオオンッ!!!!
ファルコ「──なっ!!?」 ピチュー「爆発した・・・!?」 ファルコの撃った光線が残骸の陰に直撃した瞬間、凄まじい爆音と共にその残骸が消し飛んだ。 驚いた一行は足を止め、マルス達もその音を聞いてか、にやりと笑みを浮かべながら振り返ったまま立ち止まる。 マルス「はははッ、予め設置しておいたのさ!『モーションセンサー爆弾』を、この廊下の至る所にね・・・!」 ネス「今の爆弾は、残骸の陰に三つ並べて設置しておいたんだ。 ステージ上じゃないのに、今、そんな爆発なんかに巻き込まれたら簡単に身体がばらばらになっちゃうね? 良かったね、偶然にも銃弾が君達より早く罠に当たって!・・・僕達にとっては、とっても残念な事なんだけど」 ファルコ「これじゃ、下手に動き回れねえな・・・くそっ」 『モーションセンサー爆弾』。これも、大乱闘に用いるアイテムの一つ。 床や壁、天井などに設置させる事ができ、何らかの衝撃を感知すると爆発する、いわゆる地雷のようなもの。 一行が苦虫を噛み潰したような表情を浮かべたのを確認すると、二人は笑い声を上げながら走り去っていった。 慌てて一行がファルコを先頭にして走り出す、ファルコは再びあちらこちらに銃弾を放ち、 どこかに罠が隠されていないか確認しながら先を進んでゆく。 ネス「ふふふッ・・・あははははっ!強行突破してくるつもりかい!? だったら、こうだ!PKサンダぁーっ!」 クッパ「・・・・ッ!?」 嘲笑するネスが放ったのは、青白い電気の塊だった。放たれた電気の塊は一行より少し先の壁に向かってゆく。 そして塊が壁に触れた瞬間、派手な爆音と共に壁が大量の砂煙と瓦礫を撒き散らしながら崩れ落ちた。 思わぬ事態に一行が再び足を止める。どうやら、ネスの放った電撃が、壁に取り付けられていた爆弾に命中したらしい。 瓦礫は一行の前に塞がり、ポポやナナくらいの背丈ならばよじ登らなくてはいけないほどの高さとなっていた。 最も、その二人は跳躍力があるためよじ登る必要はないのだが。 ファルコ「ちくしょうが、こんな小細工仕掛けやがってっ!」 マルス「そう、小細工だよ・・・君達は七人、僕達は二人。小細工もなしに勝てるとは思えないからねッ!」 言いながらマルスが足元に転がっていた床の破片を一行の真上・・・天井へ投げつけた。 直後、またしても破片が当たった箇所が爆発と共に砕け散り、大量の瓦礫が一行に降り注ぐ! ポポ「──!?」 ピチュー「うっ──・・・うわあああああ!!」 ネス「まだまだ、終わりじゃないよ。その近くには、なんと五つ並べて爆弾が仕掛けてあるんだ♪」 ネスの言葉に一気に絶望のどん底へ突き落とされた一行に凄まじい爆風が襲い掛かる。 両脇の壁が崩れ、真上の天井も崩れ落ち、吹き上がる炎を纏った瓦礫の嵐が一行を飲み込んだ。 マルス「カービィの気持ち・・・存分に味わうといい・・・。 あのお方が蘇生術を扱えるとはいえ・・・君達ごときに殺されて、彼は・・・彼等は、見限られただろうから。 もう、彼等が生き返ることはないんだ・・・だから・・・君達には償ってもらわなければならない・・・・」 ファルコ「・・・・・!」 ・・・・そういうことか。 何で、あいつ等はあの手袋が蘇生術を使えるのに、他の奴等が死んだ事に対して、 あそこまで憎しみを抱いていたのか疑問に思っていたが・・・ あの手袋め・・・・なんて奴だ。絶対に・・・許さねえ。・・・・・こんな、命を弄ぶような真似しやがって・・・・! ファルコ「マルス、ネス・・・・絶対に、あの手袋をとっちめて、他の奴等を生き返らせて・・・お前等の洗脳も解かしてやるからな・・・・・・・・」 ネス「・・・・・・・・・・・・え・・・・・・?」 マルス「・・・・どういうことだい・・・?」 ポポ「え?・・・え?・・・あれ?・・・・・・ファル、・・・コ?」 マルスとネスの二人だけではなく、爆発に飲まれたはずの一行もただ唖然としたまま巻き起こる黒い煙を見つめていた。 腹部に痛みを感じたと思ったら、いつの間にか全員が爆発の起きた範囲から後方へと吹っ飛ばされていたのだ。 ・・・ただ一人、ファルコを除いて。 ファルコ「うぉおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!」 マルス「───がッ!!?」 ネス「なッ・・・!?」 次の瞬間、舞い上がる煙の中から凄まじい速度でファルコがマルスに突進してきた・・・! 反応できずに、腹部にファルコの捨て身の一撃を喰らったマルスが勢い良く仰向けに倒れこむ。 慌ててバットを振りかざして襲い掛かってきたネスの腹部に、ファルコの素早い蹴りがねじ込まれ、ネスは成すすべなく通路の奥へと吹っ飛んで行く。 焦りの色を見せながらも立ち上がったマルスだったが、間髪居れずにファルコビジョンによる体当たりで吹っ飛ばされ、ネスと同じ方向へと吹っ飛んだ。 ──直後、二人が吹っ飛んでいった通路で大爆発が巻き起こった。自らが仕掛けた地雷にかかり、二人とも爆発の餌食となったのだ。 ドンキー「な・・・・」 ルイージ「す、すごい・・・・」 一方的に勝負を決めてしまったファルコに、ただただ呆然と立ち尽くす一行。 しかし、ここでようやくあることに気がつく。恐らく咄嗟に回し蹴りか何かで自分達を吹っ飛ばして爆発から守ったのであろうファルコは、 その凄まじい爆発を一身で受けていたはずだ。最低でもモーションセンサー爆弾七発分の爆発と、 降り注ぐ瓦礫の雨を耐え凌いで、あそこまでの力を使ったのだ。と、なると、相当ファルコの体力は削られてしまっているはず──。 だが、その考えに達するまでが遅すぎた。彼等の目の前で、ファルコが力なく床に崩れ落ちたのだ。 ピチュー「ふぁ、ファルコ!?」 ナナ「大丈夫っ!?」 慌てて全員がファルコの元へ駆け寄ってゆく。 ファルコはただ、かすかに呼吸を繰り返しながら横たわるのみ・・・ 心配そうな表情でドンキーが彼を抱え起こすと、ファルコがゆっくりと口を開く。 ファルコ「・・・ぉ・・・・ま、・・・ら・・・に・・・・たく・・・す・・・・ スマッ・・・・シュ・・・・・ザぁ・・・・・ズ・・・・を・・・・・」 見れば、ファルコ自身、もはやズタボロだった。虚ろに開いた目、頭から滴る血、ひび割れた嘴・・・ 制服はあちこちが裂け、右腕・・・右翼は、真っ黒に焦げ、裂けた焦げ目から垣間見える赤い肉の中から骨が露出してしまっていた。 意識も朦朧としていたのだろう。途切れ途切れに彼の口からひねり出された苦しげな言葉は・・・・、 ・・・・・その言葉が、彼の、最後の言葉となった。 クッパ「・・・・ファルコ?」 ポポ「ファルコッ・・・・!」 ルイージ「そ・・・んな・・・・」 ドンキー「くッ・・・何でだよ・・・嘘だ・・・嘘だろ・・・・嘘、だよな・・・・?嘘だッ・・・ 嘘だって言ってくれよ!!!ファルコォオオッ!!!」 焼け焦げた通路に、六人の悲痛な叫び声が響き渡る・・・。 続く 音楽提供:タクミドットネット 続く 戻る